軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二話~冒険者ギルドに行ったらボコられました~

クロスロードの街中に入って最初に思ったことは、道が広いということだ。

馬車が行き来しているから、そのためだろうか?

石畳の広い道、左右に建つ建物は全て重厚な石造り。

行き交う人々は皆欧米人風の容姿で、服装もテレビやネットで見たヨーロッパの民族衣装みたいな感じだ。

「おいっ、突っ立ってんじゃねーよ」

「ああ、すまん」

通りのど真ん中でボーっとしてても通行の邪魔なので、道の端まで移動して行き交う人々や辺りを観察する。

行き交う人々は様々だが、殆どの人が腰に何かしらの武器を提げているようだ。

本当に小さい子供はともかく、12~3歳くらいの子供もナイフのようなものを提げている。

武器を装備していない人は黒い革の首輪をつけている人達くらいだ。奴隷だろうか?

見る限り町並みは清潔で、異臭なども特に感じられない。上下水道がきちんと整備されているんだろう。

「あ、すみません。冒険者ギルドってどこですかね?」

「ああ、それならすぐそこだよ。ほら、あの木造の建物さ」

買い物帰りらしい人の良さそうなおばちゃんを捕まえて聞いてみると、すぐに教えてくれた。

おばちゃんの指差す場所には確かに木造の結構立派な建物が鎮座していた。

「ありがとうお姉さん」

「あっはっは! あんたいい冒険者になるよ! 頑張んな!」

俺の世辞に満足したのか、おばちゃんは笑いながら手を振って去っていった。

よし、早速向かうとしよう。

冒険者ギルド。

ファンタジー物には欠かせない存在だ。

冒険者達は依頼を請け、情報を集め、そして冒険に旅立つ。

そのための拠点となる重要な存在、冒険者ギルド。

この世界の冒険者ギルドもご多分に漏れず、俺の思ったような存在であるようだ。

建物内には様々な武具を身につけた荒くれ者たちが集い、掲示板に張られてる依頼書を眺めたり併設された酒場で管を巻いたりしている。

「ようこそ、冒険者ギルドへ。新顔だな、依頼か?」

「いや、登録だ」

俺がそう言うと、受付カウンターのオッサン(スキンヘッドの強面)は爪先から頭のてっぺんまで俺のことをジロジロと見始めた。

オッサンに見られても嬉しくねぇ、こっち見んな。

「まぁ体格は悪くないが…そんな装備で大丈夫か?」

大丈夫だ、問題ない。

と言いたいのをグっと堪える。

このネタを言っても通じないだろうしな。

「剣と格闘と風魔法はそこそこやれる。回復魔法も少しだけ使えるぞ。装備はこれから整えようと思ってたんだが、最低限の防具を揃えるのにいくらくらいかかるもんなんだ?」

「ほう、見かけによらず多才だな。革製の防具を揃えるなら銀貨八枚くらいだろうな」

残金は金貨が一枚、大銀貨が二枚、銀貨が八枚、大銅貨が十三枚、銅貨が二十枚。

それなりに高いものだというのはわかるが、まだピンと来ないな。

「予算はある、オススメの防具屋を教えてくれ」

「ああ、ウチと提携してる武具店を後で教えてやるよ。先に登録だな、身分証を出してくれ」

「これで良いか?」

先ほど街門で発行してもらった仮身分証を出すと、オッサンはそれを見て頷いた。

その後細々とした質問や規則についての説明を別室で受ける。

細々とした規則と言っても、一般常識のようなものだ。

街中で武器や魔法を使った騒ぎを起こすなとか、ギルド員同士は極力助け合うとか、ギルド員同士の殺し合いは原則禁止だとか。

「こんなところか、最後に適性テストを行なう」

「適性テスト?」

約三十分にも渡る説明の後、オッサンがそんなことを言い出した。

テストがあるなんて聞いてないぞ、オイ。

筆記試験とかあったらアウトなんだが。

「ああ、こっちに来い」

そうして連れて来られたのはだだっ広い訓練場のような場所だった。

弓や剣の修練をしたり身体を動かしたりするためのスペースがあり、冒険者達が思い思いに過ごしている。

オッサンに連れられている俺に視線が集まる。こっち見んな。

「よし、ここで適当な奴と戦ってもらうが…ふむ」

オッサンは辺りを見回した。

興味津々でこちらの様子を窺っている冒険者は多い、ってか増えてる。

おい、ギルドの建物の方からゾロゾロ入ってくんな馬鹿やめろ。やめてください。

「よし、来いイーサン」

オッサンに指名された冒険者が歩いてくる。

使い古した革鎧を身に着けた、若い男の冒険者だ。

「武器はこいつでいいか?」

イーサンと呼ばれた冒険者は二本持ってきた木剣のうち一本を放ってきた。殊勝なヤツだな。

それをキャッチし、振ってみる。悪くない。

「これ、頼むよ」

近くに居た冒険者にショートソードを鞘ごと渡し、屈伸運動をする。

こうなりゃやれるだけやってやる。

「魔法の使用はアリか?」

「あまり殺傷能力の高いのはやめとけ」

つまり死なない程度なら何でもアリってことか。

イーサンの方は既に用意が終わっているのか、木剣を手に泰然として構えていた。

周りでは既にどちらが勝つかという賭けが始まっている。

「では適正テストを始める、両者構え」

イーサンが木剣を構えて腰を落とす。

俺も同様にいつでも動けるよう腰を落とした。

一瞬の沈黙。

「始め!」

おっさんの掛け声と共にイーサンは弾かれたように間合いを詰めてきた。

こっちも同様に間合いを詰める。

格好から俺がずぶの素人だと思っていたのか、イーサンが一瞬驚いたような顔をした。

「はぁっ!」

先手は俺。

右腕を狙った薙ぎ払いはイーサンの木剣によって打ち払われ、イーサンが放ってきた上段からの振り下ろしは半歩後ろに下がってやり過ごす。

振り下ろし、薙ぎ払い、払い上げ、袈裟掛け、しばらくイーサンと切り結ぶ。

大丈夫だ、反応できる。勝てる相手だ。

焦れたのかイーサンが大上段に構え、渾身の振り下ろしを仕掛けてきた。

好機、とばかりに俺はその振り下ろしを両手で支えた剣の腹で受け、強烈な前蹴りをイーサンのがら空きの胴体に見舞ってやる。

ドスッ、という確かな感触。

「ぐほっ!?」

イーサンが後ろへと後退さったところに左手の指先を突きつける。

発射数三倍拡大、魔力を収束。

三発の空気弾をイメージして魔法を放つ。

「ウィンドショット!」

三連発で放たれた空気弾が体勢を立て直していないイーサンを打ち据え、吹き飛ばした。

ザワッ

一瞬ザワつき、静まり返る訓練場。

イーサンに指先を突きつけたまま動けない俺。

えちょ、やりすぎたか?

なにこの沈黙。

「やるじゃねぇか」

ニヤリ、と笑うおっさん。

ぶっ倒れたイーサンは見物していた冒険者に隅っこに引きずられていった。

「次はどいつが行く?」

スッ、と木製の武器を手に前に出てくる冒険者達。

おい、なんかいっぱい居るぞ。

「イキの良いのが入ってきたな」

「これは味見をせざるを得んな」

「やらないか」

やめてください死んでしまいます。

「大人気だったじゃねぇか」

ガッハッハと笑うおっさんに殺意を覚える。

このおっさんが面白がってくれやがったせいであの後3人も相手をさせられた。

結果? 3人目の木剣が頭に綺麗に決まって気絶したよ。

魔力さえ切れてなければもう少し違ったかもしれんけど。

「で? 合格なのか」

「おう、文句なしに合格だ。普通ならFランクからなんだが、お前はEランクからだな」

そう言っておっさんが差し出してきた金属製のカードには俺の名前と顔、そして冒険者ランクを示す『E』の文字が刻印されていた。

レベルとかは特に記述が無い。

あまりレベルの概念は浸透してないのかもしれんな。

「ランク上がったらなんかいいことあんのか?」

少し魔力が回復したので痛む頭部にヒールをかける。

俺のおっさんに対する態度は既に礼儀の欠片も無くなっている。

防具も着けてない俺に何人も冒険者をけしかけてくるとか非道にも程があるよな。

「そうだなぁ、Bランクくらいになれば一目置かれるようになってくる。Aランクなら大概の人間は尊敬の眼差しを向けてくるし、Sランクにもなれば英雄扱いだな」

「遠い道のりだな」

「そりゃそうだ、頑張れ。そうそう、さっき言ってたオススメの武具店だがな」

「ついでにオススメの宿も教えてくれよ、ロハで」

これくらいは許されるだろう。

「いらっしゃーい」

ギルドのおっさんに紹介された武具店に足を運んでみると、結構繁盛しているようで数人の冒険者が装備を眺めていた。

声をかけてきたのはカウンターに居る女性だ。中々の美人。

鉄と革の匂いだろうか。店内はあまり嗅いだことのない独特の匂いに満ちていた。

革鎧を展示しているコーナーを見てみる。

鋲で補強されてるのとか各所を板金で補強したのもあるが…流石に高いな。

「初めての防具選びは大切だよ、手伝おうか?」

後ろから声をかけられたので振り向いてみると、カウンターに居た美人さんが満面の笑顔で立っていた。

ん? よく見ると耳が尖ってるな。エルフか何かだろうか。

「ああ、私はルイス。

ここの店員よ、どうぞご贔屓に」

「タイシだ。革鎧を買おうと思ってるんだけど」

「ふーん、どれどれ」

ルイスは俺の身体に手を這わせたかと思うと、いきなり抱きついてきた。

少し緑がかった銀髪を見下ろすような格好になる。

あ、なんか良い香りが――いかんいかん。衆人環視の中でこれはなんとなくインモラルな感じがするぞ。

というかルイス目当ての客もいるんじゃないだろうか、ここ。

視線が、視線が痛い。

「んー、お兄さんの体格だとこれかな、篭手とか膝当てとかはどんなデザインが好み?」

「ええと…剣だけじゃなく格闘もやるからそれに合った物がいいな。

予算は合わせて銀貨九枚以内で」

「それなら拳と膝、肘部分を鋲で強化したのが良いかな。ブーツも足先を強化したのがいいけど、少し予算オーバーになるね」

「多少なら構わない」

そんなやり取りをしながら防具を選ぶ。

カウンターを見ると猫がいた。

いや、普通の猫ではない。

すらっとした細身の、人間の子供くらいの大きさの猫だ。獣人の類だろうか。

煙管らしきものを猫の手で器用に弄っている。なんか貫禄あるな。あっちが店主でこっちのルイスが接客担当なんだろうか。

選んでもらった防具を試着、調整、試着、調整と何度か繰り返す。

予算と相談した結果、胴に着る鎧以外は打撃に使う部分を鋲で強化された革鎧一式を買うことにした。

しめて銀貨9枚と大銅貨6枚。

「はい、毎度あり。武器は良いの?」

「うーん、正直言えば欲しいが予算がな。もう少し刃渡りの長い剣が欲しいとこだけど、まぁ俺は風魔法も使えるし」

「そうだねぇ、お兄さんの体格だともう少し長い剣でも良さそうだね。でも魔法? お兄さん発動体は?」

「発動体?」

俺は聞き慣れない言葉に首を傾げる。

ルイスは信じられないという顔をして苦笑いしていた。

「お兄さん本当に魔法使い? 発動体無しで魔法行使だなんて、効率が悪いなんてもんじゃないって聞いたけど」

そう言ってルイスが店の奥の方から木の棒を持ってきた。

あれだ、ドラムスティックみたいだな。

「ウチにある一番安い発動体がこれ。詳しい原理とかは良く知らないけど、発動体があるとなしとじゃ随分勝手が違うみたいだよ」

ルイスから発動体とやらを借りて風弾を発動させてみる。

何と言うのだろうか。

感覚的なものだから表現しにくいが、発動体を通した方が魔力を『掴める』感じがする。

発動体無しだと勝手に拡散していってしまう魔力がこう、空間に固着されるというか。

「確かに楽だな、これ。武器と一体化してるのとかないのか?」

流石にドラムスティックみたいな木の棒で戦うのは無理だろう。

剣と打ち合ったら一撃で斬られるぞ。

「いくつかあるけど、発動体の剣は高いよ? 安いのだと、これかなぁ」

そう言ってルイスが持ってきたのは俺の背丈より少し長いくらいの木の棒だった。

あれだな、中国武術とかで使う棍みたいな。

「発動体処理済みのクォータースタッフだよ。これなら銀貨6枚」

「鎧一式買ったんだからセット価格でもう少しまからないか。銀貨4枚くらいで」

「うーん…」

俺の値段交渉にルイスはカウンターの猫へと視線を向ける。

猫が何かブロックサインのようなものを出した。

あの肉球の手でどうやって出したのかわからないが、出した。

「じゃあ鎧一式と合わせてってことで金貨1枚と銀貨4枚でどう?」

ということは残金が大銀貨が2枚、銀貨が4枚、大銅貨が13枚、銅貨が20枚か。

うーん…よし。