軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話  邂逅

大型の化物が俺にとどめを刺そうと襲い掛かってくる。

恐怖は無い‥‥‥‥覚悟はできている。

しかし、いくら待っても化物は来なかった‥‥‥目を開けて、見上げると――

「なんだコレ‥‥‥!?」

化物の体の上から下まで氷の 杭(くい) のようなもので貫かれている。化物は痙攣して、すぐに動かなくなった。

何が起きたのか分からない。

化物ごしに、空に何かいることに気付いた。人が浮いている‥‥‥‥‥?

雲一つない空から何発もの落雷が化物に降り注ぐ! 化物は火に包まれ、断末魔の叫び声を上げながら絶命していく。

この時、俺は理解した‥‥‥。

あれが俺の探していた男‥‥‥‥坂木が、自衛隊員が唯一の希望だと言っていた男だと!

◇◇◇◇◇◇◇◇

数は30体ほどだろうか、怪我人も出ているようだし一気に決着を付けよう。

右手を天高くかかげ、周囲に巨大な炎を展開させる。炎はゆらゆら揺れながら少しずつ形を変えていく、それは巨大な竜のような形になり上空から流れ落ちるように化物の集団に襲い掛かった。

逃げる時間も無かった化物共は炎に巻かれ、後には灰と骨しか残っていない。

◇◇◇◇◇◇◇◇

俺は言葉を失っていた‥‥‥見つめる先にいた男は左手をかかげる。すると周囲からパキパキと何かの音がした。

よく見ると地面や空中に氷の結晶ができている。結晶はやがて一つの大きな塊へと収束していき、どんどん形を変え今度は氷の竜のような形になった。こちらにやってこようとした化物共に向かって、すごい速度で襲い掛かかる。

氷の竜に触れた化物は一瞬で凍り付き動かなくなった。さらに上空まで舞い上がった竜は自分の体の鱗を化物に飛ばしていく。鱗は空中で形を変え氷の槍のようになり、化物に突き刺さった。

男は上空で炎と氷の竜を従えながら、ゆっくりと降りてくる。

想像以上だ……ここまですごい魔法使いだったとは思っていなかった。坂木は長野に化物の被害が少ないのは複数の魔法使いがいるためではないかと考えている。

しかし違う! この男が1人いれば充分可能だ。この男を連れていくことができれば大きな戦力になるのは間違いない!!

坂木の希望を、願いを、叶えることができる‥‥‥‥。右足を失ったが、後悔はない!

数体残った化物も炎と氷の竜が、いとも簡単に蹴散らしてしまった。

男が近づいてきた‥‥‥化物を倒すことがまるで日常のように平然とした顔をしている。

「出血がひどいな‥‥‥大丈夫か?」

「ああ‥‥‥俺のことはいいんだ‥‥‥それより、あんたに頼みがある!」

「頼み?」

「あんたのことをずっと探してた」

「探してた? 俺を?」

「ああ、あんたに‥‥‥」

「待った、待った。その前に‥‥‥」

◇◇◇◇◇◇◇◇

傷だらけの体を治そうと手をかざし“回復魔法”を発動する。手から暖かい光が溢れ男の体を包んでいく血は止まり傷口は急速に閉じていく、だが今の回復術のランクでは欠損部までは元に戻すことはできなかった。

「すまない‥‥‥傷は治せるが、足までは元通りにできない」

俺が申し訳なさそうに言うと、怪我をしていた男は笑いながら明るく答えた。

「何言ってんだ! 傷を治してもらっただけでも充分だ。それにしても、アンタすげーな傷まで治せるなんて」

もっと回復術のレベルを上げておけば治せたかもしれない……そう考えると職業の選択を間違えたんじゃないのか? どうしてもそう思ってしまう。

「俺の名前は 清水統志郎(しみずとうしろう) 、元自衛隊員だ。あんたの名前を聞いてもいいか?」

「 五条将門(ごじょうまさかど) だ」

「五条さんは、いつも人を助けて回ってるのか?」

「自分が助けられる範囲でだけどね‥‥‥‥」

◇◇◇◇◇◇◇◇

この人なら助けに来てくれるかもしれない‥‥‥そう思った俺は意を決して頼むことにした!

「俺は岐阜から来たんだ。五条さんに助けてもらいたい! 俺と一緒に岐阜の自衛隊基地に来てくれないか?」

「岐阜?」

「東京が壊滅したことは知ってるか? 五条さん」

「それは聞いてるけど……」

「その後、政府の中枢機関や関東の人間が大阪に避難したんだけど関東にいた化物どもも関西を目指して大量に向かってきてるんだ」

「化物たちも?」

「それを迎え撃つため岐阜と愛知の自衛隊で防衛線を作ってるんだが、とても持ちそうにない」

◇◇◇◇◇◇◇◇

そんなことになってたのか‥‥‥‥。今の日本の状況なんて、ほとんど知らなかったしな。自衛隊や避難民はある程度情報を知ってるだろうけど、俺は魔物を狩りまくってたんで気にしてなかったからな。

「俺は岐阜基地の自衛隊員から頼まれてここに来た。数万から数十万の化物を相手にすれば数日ももたないと聞いている。そんな時、あんたの……五条さんの噂を聞いたんだ」

「噂になってんの?」

「ああ‥‥‥すごい魔法使いってな」

SNSが普通に使えるのなら噂が広まるのも早いだろうが‥‥‥こんな状況になっても噂なんて広がるもんなのか、ちょっと不思議な感じもする。

「分かった、助けに行こう! 俺で役に立つなら力を貸すよ」

「本当か!? ありがとう。助かるよ」

「そうと決まったら、さっそく行こう! 近くに俺の車が止まってるんだ。まあ足は一本無くしたが運転には支障ない。すまないが、肩を貸してくれないか」

「いやっ。その必要はないよ」

「え?」

◇◇◇◇◇◇◇◇

五条さんは俺の手を取った。

「このまま行こう! 岐阜なら時間はかからないから」

そう言うと俺と一緒にフワリと浮き上がる。まるで体重が無くなったようだ。テレビで見たことのある無重力空間での浮遊のような、そんな感覚になった。

「うわああああああーーーっ!!!!」

ものすごいスピードで空を駆け抜ける。俺の不安も焦りも全て置き去りにするかのように――