軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第121話 滅殺の火

夜中に飛竜に乗ってバンコクに向かった。移動に10時間ぐらい掛かったので、着いた頃にはすでに夜が明け始めている。

俺は他のメンバーに指示を出し、旋回して予定していた地点を目指す。

眼下に広がるタイは以前とは、まったく違う姿をしている。青黒い大地が隆起し、既存の建物は破壊され無残な光景が広がっていた。

「酷いな……」

カルロが言うように少し前のタイとは似ても似つかない。

俺たちは黒騎士と戦った国連施設前の大通りからは 大分(だいぶ) 離れたビルに降り立ち、身を 潜(ひそ) めることにした。

「ここで日が沈むのを待とう。カルロとフレイヤは周辺の状況を探ってくれ」

フレイヤは飛竜に乗って偵察に行き、カルロは何体かの魔物を召喚し、情報収集のため空に放つ。

「さて……これからどうする? レオ」

カルロが少し疲れたような声で質問してきた。

「作戦はフレイヤが帰ってきてから立てるが、戦力の配置はある程度考えてある。みんな集まってくれ」

全員が俺の周りに集まってくる。

「この戦いでは俺とエリアスで黒騎士を押さえる。残りのみんなには“統率者”を頼みたい」

俺がそう言うとノアが手を挙げてきた。

「どうした?」

「戦力の配置なんですが“統率者”は僕たちだけでなんとかなると思います。黒騎士には他の方、全員であたった方が効率的かと……」

「ずいぶん“ 一丁前(いっちょまえ) ”なこと言うね~」

カルロが少し 呆(あき) れたように言った。

「頼もしいが、さすがに君たちだけでは厳しいじゃないか?」

「エミリーがいます。エミリーの強さはレオさんと同じか、それ以上だと僕は確信していますから!」

ノアは自信を持っているようだ。確かにこの子なら……。

「グレス、鑑定してくれ」

「分かったぜ旦那!」

グレスが鑑定を発動した。

「……ステータスではレオの旦那に劣るものの、闇魔法のレベルが半端じゃないし、固有スキルも持ってる。口先だけじゃないようだ」

固有スキルを持っているなら黒騎士とは相性が悪いな。だが“統率者”となら………この子たちに任せてみるか。

「分かった。君たちとカルロに“統率者”は任せる。残りの人間は俺と共に黒騎士にあたるぞ」

全員が強い眼差しで俺を見る。

「この戦いは黒騎士や“統率者”を倒すのが目的じゃない。あくまでも黒い宝石を破壊することが目標だ」

「破壊する役割は誰がするの?」

カルロが聞いてきたが、俺の中で役割は決まっていた。

「フレイヤに頼もうと思ってる。竜に騎乗して空中から攻撃させる予定だ。ルカは援護を、ノアもスキがあれば頼む」

「分かった」

「僕も、全力を尽くします」

しばらくしてフレイヤが戻り、細かい戦略を決めて日没を待った。

「それにしても凄い武器だね」

カルロが子供たちの持つ武器を見て感心している。確かに彼らが使う武器はサルマンの武器によく似ているように見えた。

「双子のラファエルとガブリエルの“生成”の力と、僕の“魔道図書”、それに材料さえあればかなり高度な武器や防具を作ることができますから」

「その双子は、イギリスにいるのか?」

「ええ、今は安全なシェルターにみんなで避難してるはずです」

俺の問いにノアが答えてくれる。もしかしたら、その双子がいれば失ったサルマンの武器や防具の穴を埋めてくれるんじゃないか……?

完全に日が暮れてから移動を開始する――

黒い宝石が確認できる場所にきて、辺りを見回すと……。

「やっぱり居るな」

黒騎士と“統率者”は宝石の真下に陣取っていた。

「あれを守るのが仕事のようだね」

カルロが言う通りだ。そういう役割を与えられてるんだろう…………問題なのは“統率者”だな。

どんな能力を持っているのか、まったく分かっていない。

グレスが鑑定できた情報は「ラーヴァナ、羅刹種、Lv4356」たったこれだけだ。あとは雷撃を操るってことぐらいだが……。

「とにかく黒騎士と“統率者”を引き離そう。そうしないとエミリーの固有スキルが使えないからな」

俺たちは二手に分かれ、それぞれの敵に向かった。その間にフレイヤと待機しているルカの二人で黒い宝石を破壊してくれるはずだ。

俺とエリアス、アンナで黒騎士に対峙し、カルロと子供たちで“統率者”に向き合っている。相手の気を引くことができればそれでいい。

◇◇◇◇◇◇◇◇

建物の屋上にリントと共にいた。

戦いが始まれば猛スピードで黒い宝石を破壊しにいく。 傍(かたわ) らにいるドラゴンは私の不安をよそに、いつものように顔を近づけなついてくる。

私はリントの頭を撫でて勇気をもらう。

その時、空に雷鳴が轟く。

「始まった……」

激しい爆発が起こり、剣撃の音が鳴り響く。私はリントに騎乗した。

別の建物には弓で狙いをつけているルカがいる。何も恐れることはない。みんなに背中を押されるようにリントと共に戦場へと滑空した。

◇◇◇◇◇◇◇◇

黒騎士と切り 結(むす) ぶ、やはり地力の差が大きいな。アンナと二人で切り掛かるが簡単に 捌(さば) かれ強力な斬撃で弾き飛ばされる。

エリアスが“結界術”で俺たちの守りを固め、相手の行動を阻害していたが……。

『次元斬』

俺たちの周りにある光の結界は、黒騎士の一撃で破壊される。やはり集中して展開してない結界では奴の攻撃を防ぎきれない。

次の瞬間――

空に一筋の光が走った。ルカの魔法の矢だ。

矢は真っ直ぐに黒い宝石に向かい、ド真ん中に当たって爆発した。……だが、煙が収まると黒い宝石は傷一つ付かずに空中に浮かんでいる。

「やはり、魔法障壁か……」

守るべき宝石が攻撃されたのに黒騎士は慌てる様子が無い。俺たちの攻撃では破壊できないと 高(たか) を 括(くく) っているようだ。

だが、それは予想の範囲内、本命は――

飛竜に乗ったフレイヤがもの凄い速さで空を駆ける。フレイヤの光の魔法剣なら魔法障壁ごと黒い宝石を切れるはずだ。

空から稲妻が降り注ぐ“統率者”の攻撃か! やはり子供たちが抑え込むのは難しいようだ……稲妻を避けながらフレイヤが黒い宝石に近づく。

あと少しと思った時、宝石の周囲に稲妻が荒れ狂う竜巻が巻き起こり、フレイヤを飲み込んだ。

「キャアアアーーーーーー!」

◇◇◇◇◇◇◇◇

「くそっ!」

レオさんに任せてほしいと言ったのに、“統率者”を抑え込むのに苦戦していた。一番の理由は黒騎士との距離が近いせいでエミリーが固有スキル“黒陽”を使えないことだ。

それに……。

十数本の腕が空中に浮かんでいる。あの“統率者”の腕だが、それぞれが違う魔法を使い攻撃してくる。

僕に向かってくるのは強化魔法で防御力が跳ね上がった腕で、銃弾を何発撃ち込んでもまったく効かない。僕が押されていると――

「 暗黒の拘束(ダークバインド) !」

エミリーの闇魔法で腕を拘束した。そのまま闇の中へ飲み込もうとするが……別の腕が雷魔法を使いながらエミリーに向かって飛んでくる。

僕は銃を乱射し腕を打ち落とそうとするが、強化魔法を使っていなくても防御力が高すぎて簡単には落ちない。

その間にエミリーの近くに落雷があり、吹き飛ばされたエミリーはダークバインドを解いてしまう。

一緒に戦っている仲間も苦戦していた。

火魔法を操る腕や、土魔法を操る腕にサラやルイスが相手をしているが腕一つを押さえ込むのがやっとのようだ。

アーサーとビクターは二人がかりで一つの腕と戦っていた。

その分、カルロさんの負担が大きい。

“統率者”と直接向かい合い、複数の腕と本体を相手にしている。カルロさんが召喚したアモンで、なんとか攻撃を防いでいたが……。

“統率者”は自身が持つ三日月型の剣を全力で振り下ろす。

アモンは真っ二つに切り裂かれ、黒い煙となって消えていった。“統率者”が左手に持つ金色の武器を振り、辺りに強力な稲妻が走り誰も近づけない。

格が違う! このままじゃ全滅だ。

僕は自分が持つ二丁の拳銃を連結させ、一つのライフルのような形にする。上空にある黒い宝石に狙いを定め、魔力を集約させた。

「落ちろ!!」

放たれた弾丸は吸い込まれるように目標に向かう。通常の弾丸の五倍以上の威力があるが、魔力消費は激しい。これで決まってくれ!

着弾した弾丸は爆発し、地上には火の粉が飛び散る。

祈るように見上げたが、頭上の宝石は何事も無かったかのように浮かんでいた。ダメか……もう打つ手が無い。

あの魔法障壁を突破できるのはエミリーの“黒陽”しかないが、あの距離までは届かないし、何より今は固有スキル自体封じられている。

どうすれば………。

―― 複合魔法 ――

「 雷神滅火(らいじんめっか) !!」

一筋の雷光が“魔法障壁”ごと黒い宝石を 貫(つらぬ) き、粉々に打ち砕く。

雷(いかずち) が落ちた場所は底が見えないほど大きな穴となり、周囲は激しく燃えている。何が起きたのか分からなかったが、これほどの威力の魔法を使える人間を僕は一人しか知らない。

僕たちが戦っている広場を見下ろす建物の屋上に、一人の男性が立っていた。あの日渡した“ 竜燼刀(りゅうじんとう) ”を 携(たずさ) えて……。

「先生!!」

「おお、ノア! ちょっと見ない間に大人っぽくなったな」