軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第108話 静寂の時

その光景を見た人々は誰もが言葉を失い、世界は静寂に包まれた。巨人と二体の竜が現れて“塔”を攻撃しているという信じられない光景が広がっているからだ。

巨人と竜は最強の魔物と言われ、世界中の人々を恐怖に 陥(おとしい) れた。

その魔物が人類を絶望の淵に追い込んでいる“塔”の化物と戦っている。単純に考えれば味方と言えるが、本当にそうなのか疑問を持つ者がほとんどだった。

そして最も困惑していたのは――

【国連ジュネーブ事務局】

「あの竜は報告にあったイギリスの“統率者”ではないのか?」

欧州議会が国連と合同で緊急会議を開いている。議題は当然、フランスで行われている戦いについてだ。

参加者は会議室に置かれている大型テレビで戦いの状況を確認していた。

国連には各国の“統率者”の情報が入ってきているが、アメリカにいたタイタンの情報は直接入ってきていない。だが、伝聞でその特徴は把握している。

画面に映る巨人は、まさにタイタンそのものだった。

アメリカを滅亡寸前まで追い込んだ巨人が、突然フランスに出現したことに衝撃が広がっている。

しかし、それ以上に問題なのが竜の方だ。イギリスの統率者の情報は、討伐したレオ・ガルシアが直接国連に報告している。

レオの報告では“統率者”を従えたなどの情報は一切なかった。

「“統率者”が塔の魔物を攻撃している!? どういうことだ」

「 聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ) のカルロではないのか? 彼は“魔物使い”という異能者だったはずだ。“統率者”でも従えることができると報告されていただろう」

「カルロはこの戦いには参加しないと明言している。それにタイタンと思われる巨人がいるのもおかしい。 聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ) はアメリカに行っていないはずだ」

議論に参加しているのは、欧州議会議員だけではなく国連事務局員などもいた。だが誰も正確な情報を持っておらず、憶測でしか発言できていない。

「そもそも“タイタン”や“竜の王”を従えることなんてできるのか? そんな常軌を逸した異能者がいるなんて聞いたことないぞ」

「だが事実、化物の王たちが暴れ回ってるんだ。認めるしかないだろう」

欧州議員から様々な意見が交わされる中、一人の議員の発言に注目が集まる。

「今戦っているのはイギリスの討伐に参加した人間ではないのか? 竜の統率者を従えるにはそれしか方法が無いだろう」

会議に参加した多くの者はその意見に賛同した。

「 聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ) 以外に参加した異能者は誰がいるんだ?」

欧州議員は異能者の情報を管理している国連の職員に 尋(たず) ねた。職員はデータベースにアクセスし、必要とされた情報を報告する。

「イギリスの討伐に参加した 聖域の騎士団(サンクチュアリナイツ) 以外の異能者は“朱雀”の団長である 王欣怡(ワン・シンイー) 、副団長の 劉梓豪(リュウ・ズーハオ) 、そして――」

「五条将門という日本人です」

◇◇◇◇◇◇◇◇

召喚を立て続けに行なったことで、体に凄まじい負担がかかった。無限魔力があっても、一度に放出できる魔力には限界がある。

それに俺の力でも高レベルの魔物を立て続けに召喚したことで、これ以上の召喚はできないようだ。

三体の“統率者”が使う魔力も莫大なので、召喚を維持する時間も長くは持たないだろう。召喚のタイムリミットまでに倒さないと、この敵には勝てない。

ドス黒いオーラを放ちながら、その“塔”はそびえ立っている。地面から数百の触手が上に伸びており、異様な光景を作り出していた。

ヒュドラとシヴァの二体の竜は“塔”の周りを旋回しながら空中まで襲ってくる触手を 躱(かわ) してゆく。

触手の 間隙(かんげき) を 縫(ぬ) って、シヴァが火球を撃ち出す。やや塔の端の部分に当たったが、凄まじい爆発が起こり塔の側面を大きく削っている。

ヒュドラも迫り来る触手を消滅の光で撃ち払っていく。

乱雑に光を放ち、塔を含め手あたり次第に攻撃している。ヒュドラの光が下にいるタイタンに当たらないかと若干心配だ。いくらタイタンでも、この光を浴びると無事ではすまないだろうからな………。

そのタイタンは塔の真下で“破滅の斧”を横に薙ぎ払い、塔の下部を爆散させ吹き飛ばしていた。巨大な塔が揺れている。

タイタンなら木こりのように、この塔も切り倒せるんじゃないか?

そう思ったが、塔の四方は巨大な“ 蔦(つた) ”のようなもので補強されており、この蔦を破壊しないと完全に倒すことはできないようだ。

「タイタン! 近くにある巨大な“ 蔦(つた) ”を狙え!」

タイタンは大きく方向を変え、“ 蔦(つた) ”に向かって歩き始める。正直、言葉が通じているか分からないが意思は伝わるようだ。

そのタイタンに向かって数十本の触手が巻き付き、動きを止めようとしてくる。数本ならタイタンの灼熱の体で燃やすことができるが、さすがに数十本もの触手に押さえ込まれると簡単には動けないみたいだ。

空中ではシヴァとヒュドラも、触手によって捕捉されていた。

一度動きが止まると次々と触手に絡みつかれていく、シヴァは炎のブレスを放とうとするが首を押さえられている。

ヒュドラも“絶対防御”のスキルがあるが、 捉(とら) えることは可能のようだ。

三体の魔物が完全に動きを封じられる。俺が魔法で助けようとした時、ヒュドラの体が光り始めた。

「あいつには ア(・) レ(・) があったな」

ヒュドラは輝く球体となり、一気に光の輪が広がる。ヒュドラを拘束していた触手は完全に消滅していた。

大空に君臨する竜は怒りを表すように口から光を吐き出す。塔の中央に直撃し、そのまま外壁を吹き飛ばした。再生の遅れを補うため、塔は破損した部分に触手を巻き付け破壊されることを免れようとしているようだ。

一体だけ自由に動けるヒュドラに向かって、数百の触手が高速で襲い掛かる。

触手をなんとかしないと、塔の破壊が困難になるな。そう思った俺は両手に複数の性質の魔力を集める。火と闇と雷が混然一体となり、強力な魔力が辺りを覆う。

「複合魔法 ―― 黒雷華(こくらいか) ―― !!」

数百の触手に、黒炎を纏う稲妻が降り注ぐ! ヒュドラを追っていた触手も雷に打たれ麻痺したように動きが止まり炎上していく。

ヒュドラはその隙を見逃さず、消滅の光で辺り一帯の触手を根こそぎ視界から消し去っていった。

タイタンとシヴァを拘束する触手にも稲妻は直撃する。

二体の魔物に当たっても効かないと思うが、触手には大きく傷が入り黒い炎で燃え上がる。一旦拘束が弱くなれば、あの二体を押さえ込むのは不可能だ。

タイタンの体表は更に高温になり触手は内と外から焼き尽くされた。自由に動けるようになった巨人は持っている斧で巨大な“蔦”に切りかかる。

“蔦”は木っ端みじんに吹き飛び、“塔”を支えていた巨大な蔦の一つが完全に崩れ去った。

シヴァに巻き付いていた触手にも傷が入り、締め付ける力が弱くなっている。シヴァは全力で上空に飛行し、触手を引きちぎっていく。

塔より高くまで飛翔した竜は魔力を最大限まで集め、全てを滅殺する火球として放った。塔の最上部に当たった火球は超高温の熱を発し爆散する。

卵を含め、塔の先端を完全に破壊した。

これだけ破壊されれば、さすがに卵も再生できないんじゃないか? そう思ったが、一分もかからず卵は元の形へと戻ってしまう。

ここにきて俺は違和感を抱く、あの卵は明らかにおかしい。他に比べて再生が早いのもそうだが、手応えみたいなものを感じない。

まるで、ここを狙ってくださいと言ってるような………まさか……。

「誘導している?」

あえて攻撃させて他の部分を守ろうとしているのか? だとしたらアレは卵なんかじゃない。トカゲのしっぽのような“自切”の機能に似た器官だ。

事前にレオから卵の特徴を聞いていなかったら、俺も無駄な攻撃を集中させていたかもしれない。

だとすると、やはり“塔”そのものを守ろうとしたってことか?

それとも……もっと下。

「地面の中に何かあるのか?」