軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百四十二話 Sideメト、エルフさん

Sideメト

人工レベルアップ研究所のあった敷地のすべてが溶岩の海に沈んだ。地面は煮えたぎる大地で、全てを自分がしたのかと思うと己が力に酔い痴れたくなる。心地よい全能感。下々の人間の生殺与奪の権を握る。これこそ神である。

「人がまだいるか……」

地下に逃げ込んだものたちの気配を感じる。10名ほどだ。話し声を聞く限り全員六条祐太の関係者のようだ。声がしっかりと聞こえてきた。声などなくともわかるが、探索者を前に不勉強のやつらだ。

「せっかくこれからいい生活が待ってると思ったのに、こんなところに連れてきて!」

「やっぱりあいつは碌の息子じゃなかった」

「お父さん僕たちどうなるの? お兄ちゃんのせいで死ぬの?」

「それは……」

「だいたいあなたの元妻はどこに行ったのよ! 1人だけ逃げたんじゃ!」

「知らん。どうせ避難の時に見つからなくて上にいたんだろう」

「小春はまだ帰ってこないのか?」

「まだみたい」

「あの不良娘、こんな時にどこでふらついてるんだ」

「お父さん私はあの子が怖いわ。今朝もちょっと六条君のことで怒っただけなのにテーブルを叩き割ったのよ」

「ちょっとじゃなかったけど」

「お前は黙ってなさい」

「小春のやつ化け物だよなー。探索者なんて化け物集団なのにみんな何がいいんだろう」

全員何かしらのことで怒っているな。まあ人などそんなものだ。恩恵を受ける時のみありがたがり、それがなくなれば嫌う。

全てわかる。

太陽のごときメトの瞳からは逃れられない。地下の全ての形が完全に見えた。六条は自分の知り合いだけ避難させたか? いや、そんな余裕があったとは思えない。ならば米崎という男の仕業か。

なぜ米崎は研究員を避難させなかった。避難壕に余裕はあるようだが……、他国に渡ることを嫌だったか? だとするとかなり非常な判断をする男だ。どうしたものか。米崎がいないのならば、大した研究者は残ってなかったと思うが……。

「さて、生かすべきか殺すべきか……」

ここまでやったのだから全て殺してしまうのが平等。

「ふっ。まあよい。ただの虐殺では意味もない」

そう思った。麒麟の話では、六条以外は無視すればいいとのことだった。それが達成された以上、無駄に殺す理由もない。

「しかしまあ……」

たかが15歳の子供。それに今回の作戦の最大戦力をぶつけた。

「その意味はわかる」

六条祐太は確かに異常なほどの輝きを見せた。老公が【呪怨】を使っていなければ、ほぼ間違いなく逃げられていたと思うと、たかが15歳の子供が英傑3人を相手に恐ろしさすら覚える。

「何と言うか。追い詰めれば追い詰めるほど反発して余計に強くなっていく」

そんな感覚がした。

「それに……」

老公がしたことは非道なことが多かった。

「人のことは言えぬか」

大きくクレーター状に抉れた地面。どれほどの人間がいたのかなど気にも止めなかった。人が死ぬことに対してあまり心が動かなくなってる。誰かが死ぬことに慣れすぎたか……。

《そちらはどう?》

麒麟からの連絡だった。

《万事滞りなく》

《本当に?》

疑り深い女だ。好きにはなれない。しかしこんな作戦を実行する。そうして8英傑をまとめ上げるには、こういう女でなければ無理だった。しばらく考えてからまた返事をした。

《六条祐太は確実に死んだ。問題ない》

《信じたいところだけど、できれば流れを伝えてほしいな》

《疑うか?》

《穴があってはいけないと思うだけだよ》

《このメトと老公がいて穴がある? 随分な物の言い方ではないか。こちらは別にお前の下についたわけではないぞ》

腹が立った。知恵が回る女だということは分かっていた。完全ではないらしいがほぼ100%に近い予知もできる。だからこそ陣頭指揮は任せている。英傑7人がこの女の指示に従ってる。それだけでも大幅に譲歩している。

そこからさらに細かいことまで指示されることはかなり気に食わなかった。

《もちろんそんなつもりはないよ》

《ならば信じ——》

「でもさ」

ふっと麒麟の女が真横に現れた。鮮やかな銀の髪、頭には鹿のような角が二本生えている。元は女だが今は雌雄同体なのだという。あまりに興味をかき立てられて、一度確認させてもらったが、あちらは両方ついていた。

あとでナディアをなだめるのに苦労したのが懐かしい。一応元が女だから女と言ってるが、男でもある。だから名前が男のような 王(ワン) なのだろうか。王はこちらを疑わしげな目で見てくる。相変わらず冷たい目をしていた。

「"でも"とは、なんだ?」

言葉に気をつけろと思い殺意を込めて言い放った。

「生きてるよ」

「誰が?」

「察しが悪いな。六条祐太だよ。私の頭にビビって天啓が降りたんだ。まだ生きてるから気をつけろって」

「は? あまり調子に乗って癇に障ることを言うなよ。そもそもそんなわけがない。【呪怨】を食らったのだぞ。生きてられるわけがない」

「ちゃんと死体は確認した?」

「それは……」

珍しく自分の言葉に自信が持てなくなった。死体は確認していない。何よりも無意味に突っかかってくる女ではなかった。確かに死んだはずだ。しかし王はレベル1000を超えて半神に至ったもの。

つまらない嘘などつくか?

せっかく自分がまとめ上げた8英傑の和を乱すようなことを言うか?

この女は無意味なことが嫌いだ。

とすると本当に?

あの状況で生きているものがいる?

急いで老公に確認しに行こうとして、

「ちょっと待って」

「何だ? お前が言うから急ぐのだ」

「別に急がなくていいよ。もう間に合わないみたいだし」

「……」

自信満々に言ってきた。それなのに慌てても焦ってもいない。

「確認はゆっくりでいい。それよりさ。あの下で生きてるじゃない」

王が私が全て溶かし尽くした研究所の煮えたぎる地面を見て言う。どうやら生き残りを始末しなかったことを指摘してきてるようだ。わざとらしく耳に手を当てて地下の声を聞いている。そんなことしなくても聞こえるだろうが。

「しかも六条祐太の関係者ばっかり。米崎君がやったのかな。あの子賢いよね。できれば米崎君は確保しておいてほしいって言ったけど、もしかしてそれもしてない?」

「それは……」

「しっかりしてよね。ちょっと頼りなさすぎない?」

「……」

「今度からちゃんと殺しておいてね」

王は笑顔のままだった。いつもこの女は笑っている。王の人差し指にエネルギーが溜まっていく。それを解き放った。煮えたぎるマグマの中をレーザーのような攻撃が突き抜ける。生かしておいた人間全員が死んだのがわかった。

「惨いことを……それでも麒麟か?」

「ここまでして中途半端にする君よりは僕は優しいよ」

王が死神のもとへと移動しだした。

「本当に生きてるのか?」

横について飛んで行き、王の自信に、こちらが自信をなくす。どう考えても死んでいるはずなのだ。【呪怨】を食らって生きているやつなど聞いたことがない。しかもレヴィアタンを犠牲にしたのだ。

レベル1000を超えた呪いを防ぐ方法。そんなものいくら八洲の貴族であってもないはず。それにこれで逃がしたとなればカインが怒り狂う。それこそ本当に狂いかねない。それほどにカインにとって召喚獣の犠牲というのは大きい。

「やっぱり1階層ってどこも一緒だね。どこまでも続いているサバンナ。私、結構ここが好きなんだよね」

「俺は最初を思い出して嫌になるがな」

「初心は大事だよ。それを忘れないことで人は成長していくと思うな」

池袋のダンジョンの中に入り、見渡す。

すぐに老公の居所が分かった。1階層のサバンナの明るい日差し中、鼓膜を破るような雷の音が何度も鳴り響いていた。雷神との戦闘。そこに黒い瘴気がぶつかり合っている。サバンナの大地が何箇所も焼け焦げ腐り果てていた。

あらゆるゴブリンや動物が雷に焼け焦げ、焼け焦げていないものは苦しみもがいて腐り果てて死んでいた。

「何だジジイ! 勝てないからって3人がかりか!」

「メト、麒麟! 手出しは要らぬ!」

「年寄りが無理してると後悔するぞ。素直に手伝ってもらったらどうだ?」

「雷神! 貴様が格下だと教えてくれるわ!」

老公もかなりヒートアップしている。それでも押し切れてない。老公としては苦手なタイプなのだ。スピードと雷でどんどんと攻撃してくる。それが鳴り止むことがない。むしろ苦手なタイプでよく持ちこたえてるものである。

「2人ともストップ。コシチェイ。彼に逃げられたよ」

「「……」」

それを聞いた瞬間、激しくぶつかり合っていた2人が停止した。

「笑えない冗談だ。誰が生きてると?」

この状況で誰のことかは聞かなくても分かったはず。それでも信じられなかったのだろう。

「それを聞かれるのは2度目だな。もちろん君たちのターゲットだよ」

「そんなことは万が一にもありえん」

「でも本当だ」

「バカな……【呪怨】を食らわせたのだぞ。レヴィアタンが呪いの塊となったのだぞ。カインの一部が全て費やされたのだ。生きてられるわけがない」

「でも確かだと思うな。彼の未来はまだ見えてこないけど消えてしまってないんだ。僕には彼の光だけが感じられる」

「信じぬ!」

老公が飛び出した。池袋の階段をどんどん下へと降りていく。王と面白がった雷神までついてきた。この4人である。こんな階層に敵などいるはずもなく、一瞬にして10階層まで到達した。

「——ありえぬ……」

水浸しになり腐った臭いのする女神の神殿だった。しかしそこに誰かが死んだ形跡はなかった。口ではそう言っていても、老公にはこの状況で、六条祐太が死んだのかどうかはすぐに分かったようだった。

老公の静かな怒りを感じる。自分が人を殺しそこねた。そのことに腹を立てている。その様子を見て思う。どうやら本当に六条祐太は死んでいないようだ。

「傑作だ」

後ろから笑い声が聞こえた。ゲラゲラとけたたましく。耳障りに雷神が笑っていた。我らの体たらくを笑っていた。

「英傑などと驕っているからこんなことになる! これに懲りたら程度をわきまえて大人しく自分の国に引っ込んでおけ! 泣いて帰ることになるだけだ!」

「貴様!」

「まあまあやめとこう。僕も指示の仕方が悪かったんだよ。事細かにどうするべきか教えるべきだった」

「愚弄するか!」

麒麟の言葉に腹が立った。

「メト。これは我らが悪い……カインに申し開きできんな。『殺せなかった』では、とても納得するとは思えん。王。すまぬが六条祐太の殺害はしばし待ってもらいたい。この死神がその名にかけてちゃんと殺してこよう」

「できるの? 馬鹿にするようなことを言ってしまったのは悪かったけど、この子多分かなりしぶといよ」

「よく理解した。死神たる我の中にまだ侮りがあったことも認めよう。雷神の相手をメトにさせ、自らが追いかけるべきだった。たかがレベル250。ここまですればさすがに死ぬだろうと思った。なんという愚かさ。無駄に八洲の貴族を巻き込んだだけになるとは」

「老公……」

「王よ。呪いは発動した形跡がある。六条祐太は決して無傷ではないはずだ。【呪怨】とはそれほど容易い呪いではない。確実に弱らせることはできているはずなのだ。ならば正規ルートで大八洲国へと入りとどめをさしてこよう」

「……まあそうするしかないか」

雷神の姿がいつの間にか消えていた。ふと思う。麒麟はどこまで考えていたのだろうか。老公はもう後には引けなくなった。死神の名にかけても意地でも六条祐太を殺しにかかるだろう。その未来は麒麟に見えていたのか。

今一麒麟の能力の詳細が分からない。そもそもこの女もどこまで信じていいことやら……。

「まあ今回は南雲には、かなりダメージを与えられたから、それでよしとするか」

南雲はここと同じ1対3の状況ができてしまった。おそらく一度死んだか。六条のように逃げればいいものを性格的にそれをしなかった。正面から戦えばロロン、ゲイル、カインの3人組などどうにもなるわけがない。

戦争はまだ始まったばかりだった。こちらの戦果は南雲の命を一つ削れたこと。そしておそらく六条祐太の寿命もかなり削れたこと。人工レベルアップ研究所の人間を全て殺したこと。

「命を一つ。今度こそ必ず……」

老公がその姿を消した。

「行っちゃった。メト。僕たちはとりあえず引き上げようか」

「王。貴様、どこまで考えてしたことだ? 戦果はあったと言っていたな。ならば無理に老公を行かせる必要があったか?」

先は長い。この戦争で英傑を一人減らすのに年単位の計画がいる。簡単に死ぬ相手ではないことが最初からわかってる以上、殺すのならばその命を徐々に削っていくしかない。

「私はね。この戦争でどうしても2人消したいんだ」

「2人。1人は聞いていたが……」

「言えば相手にしなかっただろう。でもメト、君は冷静な男だ。そしてこれを見たから理解してくれると思う。だから言っておこう。僕は森神と六条祐太を殺したい」

「1人はわかる……。今回のことであの子供は油断できないと思った。だがエルフは本当に殺せるのか? かなりしぶといと聞くぞ。それよりは南雲の方がたやすいのではないか?」

「こんなところまで来て自信喪失かい?」

「そんなわけではないが、たかがレベル250にここまで手こずったのだ。全ての英傑の中で一番殺しにくいと言われるあのエルフを本当に殺せるのか?」

六英傑と思っていたのが、この女が八英傑にしてみせた。これで勝ちは確信したと思っていたが、老公が早速単独行動である。老公こそがエルフへの切り札と思っていたのだ。大八洲国に入り込む危険も考えると……。

「殺さなきゃ仕方ないよ。エルフが生きてる限り南雲は死なない。というか四英傑は森神が生きている限り誰一人として殺せない」

「……やはり、そうなのか?」

不思議と説得力のある言葉。かねてより奇妙には思っていた。南雲は異常なほどの攻撃力がある。あれの一撃は大地を削る。間近で見て恐怖したことがある。それがもし、自分の防御を考えなくてよかったために手に入れた力だとしたら。

だとすれば森神ならばできるのか? 人の命の肩代わりが?

「本当だよ」

「だとしても森神を最初期に殺すという貴様の案。老公がおらずにどうやって成功させる? 帰ってくるのを待つのか?」

「待たないよ」

「ではどうする。そもそもエルフが死ねばポーションが世界に行き渡らなくなるぞ。エルフの存在は特殊だ。他の誰にも代わりができない。まあこんな争いになれば、その供給も滞りそうだが」

今更言うことかとは思う。しかし、簡単に殺せるはずのものを殺せず、苛立っていた。

「それがさ、その位置を代わることができる才能がいるんだ。アメリカにね」

「アメリカ……。アメリカに有望な探索者などいたか?」

「いるんだよこれが。本当に面倒な場所にね。アメリカの……いや、違うか。ロロンとゲイルの二人が今回の件を了承した最大の理由さ」

「いや、待て。それも聞いていないぞ。せっかく開いたポジションをアメリカに取らせるつもりか?」

てっきり自分の子飼いを次の英傑にするつもりかと思った。もちろんこちらも簡単にそれをさせるつもりはなかったが……。

「それ以上はまだ秘密。確実には見えてないんだ。ごめんね」

「……ちっ、終わったのなら帰らせてもらう」

そう言って麒麟から離れた。六条祐太の顔が思い出される。たかがレベル250でこれほど面倒とは……普段であればかなり気に入ったのだが、戦時の今、優秀な探索者ほど面倒なやつはいない。

あんな子供なのに……。おそらく麒麟はまず今回では殺せないとわかっていたようだった。六条祐太。奇妙な男だ。アグニを奪われているというのに不思議とそこまで腹が立ってこなかった。

それでも、いずれ殺し合いをせねばならぬか。

「難儀よな」

一体どれほどの血がこれから流れるのか。自分が殺しただけで数千人は死んだものと思われる。英傑達が争ったのなら、アメリカの被害も相当なものだろう。南雲は私の国の空にも舞い降りるのだろう。それでももはや止まれない。

始めた以上は止まれないのだ。

Sideエルフさん

「体の調子は?」

目の前で男か女かわからないような体をした南雲が体を起こした。【翠聖兎神の大森林】の中、森の木で作ったベッドの上で依り代を使い南雲を復活させた。無限に使えることではないが一度や二度死んだだけで南雲は死にはしない。

私が死なせないのだから……。

「ババアか……ちっ、負けた。カインまで来やがるとは」

南雲がすぐに姿を自分のお気に入りのワイルド風味の男に変化させた。

「慎重に戦っていけって言ってるだろう。向こうの方が人数が多いんだ。まともにぶつかるんじゃないよ。そもそも私がいるからってあんたは大雑把すぎるんだよ」

「ああ、悪かったよ。今回は仕方なかっただけだ」

「まあわかるけどね。交渉が決裂したならさっさと逃げておいでよ」

ロロンとゲイルをなんとかこちら側に引き戻したかった。そう思っていた矢先に向こうから話をしないかと声をかけてきた。しかし、話し合いは決裂、というか2人とも本当に話す気などなかったようだ。

どうやら向こうの心は決まってる。話し合いの余地などどこにもないらしい。結局南雲に対してそのまま弓神と瞬神による同時攻撃が始まった。ロロン達のやり方に完全に腹を立てた南雲は逃げずにまともに戦ってしまった。

「それでもまだ最初は拮抗してたんだぜ。カインのせいでそれが崩れた。何なんだあいつ。ロロンもゲイルも様子見で戦ってやがったのに、1人だけマジだった」

「しかしまあ……嬉しそうな顔してるね」

なぜか南雲は負けたくせに楽しそうだ。

「どうだババア。俺は見る目があるだろう?」

誰のことを言ってるのかすぐにわかった。あの戦場の中で1つだけ場違いな気配が爆発的に広がった。地球上にいればどこからでもはっきりと感じるような巨大な気配。あれは私たちと伍するような力だった。

「あの子なのかい?」

「間違いねえよ。助けに行きたかったけど、それだとロロンとゲイルを連れて行くだけだしな。どうしようかと思ってたら自分でどうにかしやがった。あいつ、面白い育ち方をしてきてるよ」

「かなり邪道だよ。何か別の魂と交じったみたいだった。ああいうのは良くないんだよ。魂を弄りすぎて、わけわからなくならなきゃいいんだけどね」

「まあそれだけが心配だけどよ。あの頼りなかったガキが頑張ってるのは確かだ」

「殺されたのに嬉しそうな顔しちゃって」

「いいさ。次は勝つ」

強い子だと思う。あの子のことじゃなくて目の前の私から見たら子供……、世界中、誰もが南雲を殺したがってる。ほとんどの人間は南雲が死ねばいいと思ってる。それでもいつもと変わらない。これだけのことを言い放てるのだ。

対照的に私の気分はさえなかった。皮肉なことに六条祐太が力を示せば示すほど、王はこちらを1人も残さないでおこうとする。神の座を余計に開けるために……、あの子は気づいてるだろうか。

自分が12英傑になろうとするのなら、12英傑は誰か死ななければいけないのだと。気づいててもそれでも進もうとしているの?

「南雲」

「なんだよ」

「いや……何でもないよ」

王と同じく私も未来が見える。だからわかるんだ。

私ともう1人死ぬ人が増える。

変化した未来でそう出ていた。

きっとそれは……。

この子だけは死なせない。

私はそれにはどうすべきかを考えていた。