作品タイトル不明
6-15
(どうしよう、前にお店の前で見たときよりもつらい……。二人が一緒に魔法の練習をしているところなんて見たくない……)
婚約の話を聞いたときよりも、街を歩く二人を見た時よりも、楽しそうに魔法の練習をする二人の姿が一番胸に刺さった。
レナード様とは魔法を通して繋がっていると思っていた。ほかの場面はどうであっても、魔法のことに関してだけは、私が一番レナード様とわかりあえていると思っていたのだ。
なんだか自分の居場所が取られたみたいで悲しくなる。
そんなことを考えている間も、二人は楽しそうに笑い合っていた。
居場所を取られるも何も、最初から私とレナード様はただの魔術院の同級生なのだ。これから婚約者になる人に敵うはずもない。
それくらい私にもわかっている。二人を見なかったことにして、大人しくその場から立ち去るのが一番いいのだろう。
早くここから離れないと、と自分の中の冷静な部分が言っている。
すると、エリアナ様が楽しそうに口を開いた。
「レナード様は本当に魔法が得意なんですね」
「いや、そんなことないよ」
「よろしかったら、私がラスウェル家に行った後、一緒に魔法の研究をしませんか? 私が呪文の研究をして、レナード様がその実際の効果を測るなんてどうかしら。共同研究パートナーのような形で! そうしたら怖いものなしですわ!」
エリアナ様は可愛らしい笑顔で提案する。
レナード様もそんな彼女に対して、いいかもしれないね、なんて笑顔を向けていた。
その言葉を聞いた瞬間に耐えられなくなって、私はほとんど無意識で二人の方へ駆け出していた。
「……待ってください!」
「あれ、メイベルさん?」
呼びかけると、レナード様は驚いたようにこちらを振り返った。隣にいたエリアナ様も不思議そうに私を見る。
「メイベルさんも演習場に来ていたの? 偶然だね。僕たちも魔法の練習に来て……」
「レナード様、エリアナ様のパートナーにはならないでください!」
「……え?」
思わず叫ぶと、レナード様は驚いた顔をした。
止められなくて、私は勢いのままに言う。
「エリアナ様のほうがレナード様にぴったりなのはわかっています。でも、魔法に関してだけは隣を譲りたくないんです! レナード様と一緒に頑張るのは私がいいんです……!」
勢いあまって、心の内をそのままぶちまけてしまった。
辺りはしんと静まり返っている。
おそるおそる顔を上げると、呆気に取られたような表情でこちらを見るレナード様とエリアナ様の顔があった。
そんな二人の顔を見ていたら、だんだんと冷静になってきた。
婚約を控えた二人に対して一体何を言っているのだろう。突然やってきて隣を譲りたくないだの、一緒にがんばるのは私がいいだの、不審者もいいところだ。
自分のやってしまったことに今さらながら青くなって、私は頭を下げた。
「ごめんなさい、今のはなしで……っ! なかったことにしてください!」
それだけ言うと、私は二人に背を向けて走り去った。
何を馬鹿なことをしているのだろう。絶対変に思われた。なんであんなことしてしまったんだろう。
恥ずかしさと情けなさで、目に涙が滲んでくる。