作品タイトル不明
5-8
「まぁ、なんて綺麗なの……」
「さっきのは演出だったのね!」
「あの白いドレスの子、誰なんだ? すごい美少女だな!」
え? と思いながら私は自分の恰好を見る。会場の反対側にある鏡には、先ほどの質素な姿とは全く違う自分が映っていた。
白いひざ丈のドレスは裾が床に着くほどの長さになり、肩や腰には、色とりどりの宝石が輝いている。
髪型まで、シニヨンへアに変わっていた。三日月型の髪飾りまでついている。これは確か、以前ブラッド様にお姉様とパーティーに参加すると言われ、レナード様が代わりに一緒に参加してくれたときにしていたのと同じ髪型だ。
私は何が起こったのかわからず、ぽかんと突っ立っていた。
会場からはいつのまにか拍手の音が聞こえてくる。
私は戸惑いながら会場を見渡した。すると、得意げな顔でこちらを見ているレナード様と目が合う。
このドレスはレナード様が変えてくれたのだろうか。
レナード様は私と目が合うと、小さく手を振ってきた。私はレナード様に向かってこっそり手を振り返す。途端に、なぜか会場全体からざわめきが聞こえてくる。
「なに……どういうこと……、なんで突然ドレスが変わるのよ……」
横からカレン様の狼狽する声が聞こえた。私は小声で答える。
「多分、レナード様が魔法で変えてくれたんだと思います」
「魔法……!? なんでレナード様がこんな……!」
「私がステージにそぐわない恰好をしていたから気を利かせてくれたんだと思います。さすがレナード様です!」
私は感動して言った。ものを変化させる魔法は難しいし、頭の中でしっかりイメージを思い浮かべられなければうまく発動できない。あの短時間でこんなに素敵なドレスを作れるなんて、さすがレナード様だ。
カレン様はなぜか、ずっとわなわな震えていた。
それから次の演者が舞台にやってきたので、私たちはその流れで舞台裏に戻ることになった。
ステージを歩いている間も、ざわめきは一向に止まないままだった。
ようやくステージを降りて会場に戻ると、すぐさまレナード様が駆け寄ってきた。
「メイベルさん! 大丈夫だった!? 戻ってきたら突然舞台にいるから驚いたよ!」
「レナード様!」
レナード様ははらはらした顔でこちらを見ている。私は慌てて言った。
「私もちょっとびっくりしましたが大丈夫です! 私のドレスを綺麗なドレスに変えてくれたの、レナード様ですよね?」
「うん。勝手なことしてごめん。最初のドレスも似合ってたけど、ショーの出演者のドレスとしてはあっさりし過ぎていたから……」
「いえ、とても感謝しております! レナード様がドレスを変えてくれなかったら、あのまま冷え切った空気のまま退場することになるところでした」
レナード様の魔法がなかった場合のことを想像すると、ひやっとする。場違いな恰好のまま舞台から降りて、ショーの空気をぶち壊しにしたまま終わるところだった。
カレン様も、ショーに連れていく前に説明してくれたらよかったのになぁとちょっと不満に思ってしまう。まぁ、旧作のドレスも簡素ではあるものの可愛らしいし、カレン様はあのドレスでも問題ないと思ったのかもしれないけれど。