作品タイトル不明
5-2
「今日はメイベル様にお詫びをしたくて探しておりましたの」
「お詫びだなんて……」
「お詫びしなければ私の気が済まないのですわ。こちらを受け取ってくださいませんか?」
カレン様はそう言ってカードを差し出す。そこには、『ロナ・ミラー新作展示会』と書かれていた。
「これはなんですか?」
「有名ドレスデザイナーのロナ・ミラーの展示会の招待状ですわ! 今度新作が出るので、発表のための展示会とパーティーが行われますの。大人気なので滅多に参加するチャンスはないんですのよ。よろしければメイベル様も参加なさって」
「え! そんなにすごい展示会なんですか!? そのようなものいただけません! カレン様ご自身で行っていらしてください」
「カレンの分の招待状もありますのでご心配なく。今回は、父の友人経由で、運よく複数枚の招待状をいただけましたの。ぜひメイベル様に受け取ってほしいですわ」
カレン様は笑みを浮かべて言う。
私はカードをじっと眺める。なんだか申し訳ないけれど、もらってしまってもいいのだろうか。迷っている私に、カレン様はぐいぐいカードを押し付けてくる。
「メイベル様にはぜひ展示会に参加してほしいのです! どうか受け取ってくださいませ」
「それでは……お言葉に甘えていただきますね」
「ええ、ぜひ!」
私がカードを受け取ると、カレン様はたちまち笑顔になった。それから、躊躇いがちに言う。
「メイベル様。お礼にと招待状を渡しておいてなんですが、一つお願いがあるのです。展示会にレナード様も誘ってきてくださいませんか? もう一枚招待状をお渡ししますから」
「え? レナード様を? カレン様、ご自身で誘わなくていいのですか?」
私は困惑して聞き返す。カレン様はレナード様がお好きなのではなかっただろうか。戸惑う私に向かってカレン様は言う。
「ええ。カレンが誘うより、メイベル様と一緒に参加なさるほうがレナード様も楽しめるはずですから」
「でも、わざわざ私に誘わせること……」
「レナード様のことはもう諦めることにしたんです。レナード様はカレンが気持ちを押し付けても迷惑でしょうから……。ですから今度の展示会でお会いしたら、今までご迷惑をおかけたことをきちんと謝って、気持ちを切り替えたいのです……」
カレン様は寂しそうに微笑んで言う。
私は言葉に詰まってしまった。そんな寂しげな表情をされると、それでいいのだろうかと思ってしまう。
しかし、レナード様がカレン様に困っているようだったのを思い出すと、諦めようとしているカレン様を焚きつけるのもはばかられる。
私は迷った末に言った。
「……わかりました。レナード様をお誘いしてみますね」
「まぁ、メイベル様。ありがとうございます!」
カレン様は嬉しそうにそう言った。
私はちょっと戸惑いながら、そんなカレン様を見ていた。