作品タイトル不明
2-8
その日はもう時間も遅かったので、一旦帰宅することになった。
ホワイト伯爵邸に帰る頃には、外はすっかり暗くなっていた。私は自室に戻るために廊下を歩く。
「最近やけに楽しそうね」
後ろから声がして、振り返るとそこにはマーガレットお姉様がいた。
「お姉様」
「まだ魔術院なんて行っているの? そんなものより早く新しい婚約者を見つけたほうがいいんじゃないかしら。ようやく見つけられた婚約者に逃げられたばかりだというのに、魔法にばっかりかまけていていいの?」
お姉様は頬に手を当て、呆れ顔で言う。
ようやく見つけられた婚約者と婚約解消になったのは、半分はお姉様が原因なんだけれど……。そう言いたかったけれど言葉を飲み込む。
「婚約者探しをする気はないんです。今は魔法に打ち込みたくて」
「ふーん。それで休日にこんな遅くまで学校に残っていると。ご苦労なことね」
「いえ、今日は学園長先生に頼まれて、えん……」
演習場に行っていたと言いかけて、口に手を当てた。
お姉様の婚約者の家の所有する演習場で魔獣退治をしているなんて、正直に言っても大丈夫だろうか。嫌な顔をされる気しかしない。
「あ、いえ、なんでもありません! 魔術院の課題が多くて、遅くまで残っていただけです。明日は早いので、私は部屋に戻らせていただきます!」
私はそう言いながら、逃げるようにお姉様の元を離れた。
去り際に見たお姉様の顔は、随分と機嫌が悪そうに見えた。
それから数日間、ラネル魔術院の授業が終わるとレナード様と演習場へ行ってフォスティ退治をしに行く日々が続いた。
演習場で香り石を使ってフォスティをおびき寄せ、魔法で眠らせていく。
フォスティが唸り声を上げて襲い掛かってくることもあったけれど、その時はレナード様かエイデン様がすぐさまガードしてくれるので、魔道具店で購入したバリアはほとんど使われることがなかった。
フォスティ退治は順調に進み、演習場からはどんどんフォスティの影が消えていった。
そんなある日、レナード様が家の用事で演習場に行かれない日があった。
レナード様は随分心配そうな顔をして、日程をずらしてくれれば同行できるよと言ってくれたのだけれど、遠慮しておいた。
フォスティ退治は何度か行っているのでもう大分慣れてきたし、エイデン様もついていてくれるので大丈夫だと思ったのだ。何より家のことで忙しいレナード様に別日に来てもらうのは気が咎めてしまった。
私はまだ心配顔をしているレナード様に大きく手を振って、一人で演習場へ向かった。