軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第183話 フェスバトル結果発表

俺は今現在。冒険者同士による王族代理戦争である、フェスバトルの結果発表が行われている会場に来ております。

運動会の玉入れ競技ってあるじゃん?

籠から紅白の玉を一個ずつ互いに取り出しながら数えていくやつ。今それを行っているのだが。

「もうかえりたい……」

俺の四次元リュックから本日の成果を取り出しているので、衆目に晒されているという現実を受け入れられない。

「さぁ、まだ出てくるのか!? カシム殿下陣営、どうですか?」

「あります!」

ずるりと引っ張り出されるエアバッファ。

「シエラ殿下陣営はどうですか?」

「……あるよー」

負けじとこちらもエアバッファを引っ張り出す。

うおおおおおっ! と盛り上がる会場。

互いのマジックバッグから取り出される獲物の査定をしつつ、丁寧にカウントされていく。だが一気に出させて欲しい。そして帰らせて。

「両陣営共に既に去年の数を上回っておりますが、如何でしょうか!」

「このバトル始まって以来の接戦です!」

「前日までの集計結果ではカシム殿下陣営がリードしておりました。しかし最終日にシエラ殿下陣営が巻き返すのかに注目が集まっております!」

冒険者ギルドの査定係さんもノリノリである。

カウント数を同じにしてから、何故かこのような事態に陥っております。

いつもならこういうことはしないらしいんだけどね。向こうのカウント数に追いつき始めてから、何故か玉入れ競技のカウントダウンをすることになったのである。

みんな暇なのかな?

獲物の査定額自体は似たり寄ったりだからか、数の勝負なんだけど。

カウントダウンを盛り上げるべく、互いに同じ獲物を出し合うようにという指示を受けていた。

査定対象の獲物はエアバッファ、ジャマルーン、レインパラ、鎧トカゲである。

ただ鎧トカゲはエアバッファより1.5倍高い。何故なら皮鎧(防具などに加工される)のお値段が含まれるからである。なので最後に取り出せと言われていた。

「おーっと、ここでカシム殿下陣営! 鎧トカゲを取り出したー!」

「終わりが近いのでしょうか!?」

「一方のシエラ殿下陣営は――――ジャマルーンですね!」

「こちらには1.5倍の鎧トカゲはあるのでしょうか?」

「そこが気になる所です!」

相手陣営は既に鎧トカゲのカウントに入っている。 レポーター(査定係) さんの言うように、終わりが近いのかな?

見守る観客もドキドキしながら結果を待っているのだが、中身を知っている俺は全部取り出したくてしょうがなかった。

マジックバッグだから中身がどれほど入っているか、お互い判らないんだよね。

籠に入っている玉なら見た目で判りやすいんだけど。向こうはいくつかのマジックバッグに分けているけれど、こちらは俺のリュックに全部入った状態だ。

面倒だから一気に出したい。

というか、一発逆転のデザートデミドラゴンを出したい。

そうしたらこの茶番のようなフェスバトル最終日の結果発表が終わる。

「―――リオン。頼む。耐えるんだ」

俺の肩を押さえてギガンが耳元で囁く。

やろうとしていたことを察せられたようだ。チェッ。

「気持ちは判るけれど、これもお祭りだから仕方がないわ。最終日だし、盛り上げてあげなきゃいけないの。だから勿体付けなきゃいけないのよ」

判るわね? と、アマンダ姉さんにも宥められてしまった。

「それに、あくまでも《《ソイツ》》は最終手段だからな?」

「ぐぬぅ……」

そうして耐えること何度目かの玉出しをして、漸くこちらも鎧トカゲのカウントに入った。

あちらが出せばこちらも出す。一進一退の攻防戦です。

やっとこちらも鎧トカゲのカウントに入ったところ、向こうの陣営はマジックバッグから鎧トカゲを取り出しながら告げた。

「鎧トカゲは、これで最後です」

カメムシ陣営の玉出し係の冒険者さんが悔しそう――――ではなく、どこかニヤついた表情で最後であることを宣言した。

「おーっと、カシム殿下陣営、まさかの打ち止めか!?」

「シエラ殿下陣営は、まだ鎧トカゲを出しております!」

「もしやこのバトル始まって以来の、シエラ殿下陣営の勝利かー!?」

「いえ。鎧トカゲの査定額は1.5倍ですので、数的にはまだカシム殿下の陣営の方が勝っておりますね。このままシエラ殿下陣営が鎧トカゲを出し続けられれば勝利となりますが、まだ判らない状況です!」

判りやすく言えば、向こうの鎧トカゲは十体だけど、こっちはまだ二体である。なので八体以上出せば勝てる見込みがあるって話なんだけれど。

「鎧トカゲは最後だが、俺たちには《《コレ》》がある!」

そう言って。

勿体つけてカメムシ陣営が新たなマジックバッグを持ってきて取り出し始めたのは――――。

「おーっと、もしやその尻尾はっ!?」

「まさかまさかのっ!?」

「なんとカシム殿下陣営、大物中の大物であるデザートデミドラゴンの、尻尾が出てまいりましたーっ!」

ずるりと引き出される巨大な尻尾。俺のリュックにも入っている、見知った物体があちらのマジックバッグから出てきた。

もしかして、カメムシ王子の方もデザートデミドラゴンを狩って来たのかな?

思わずギョッとした表情になるこちら側の陣営。翻ってあちら側は勝利を確信した表情を浮かべている。気持ちは判らんでもない。

思わずみんなで固唾を飲んで見守っていると、その尻尾は途中で切れていた。

「ん~?」

どういうこと? そう思っていると、みんながこそこそと俺に耳打ちしてきた。

「……あれな、普通は尻尾だけ切って逃げるんだよ」

「本体に逃げられても、尻尾だけ獲れるパターンだからな」

「それでも相当なものなのよ」

「あ、そういうことなんすね」

「なんだ。ビックリしちゃった~」

ああ、そっか。《《デミ》》ドラゴンだもんね。ドラゴンとはいえ、デミだし。

トカゲみたいに尻尾を切り離して逃げるってことか。なるほどなるほど。

スプリガンのみんなは、デミドラゴンに逃げる隙も与えず素早く斃してゲットしていたから忘れてた。

因みに鎧トカゲはイグアナみたいに尻尾を切り離さないタイプのトカゲである。

取りあえずこちらは鎧トカゲをもう一体出しとこう。

「さて迎え撃つシエラ殿下陣営ですが、おーっと、またもや鎧トカゲだー!」

「いやぁ~、これで勝負の行方が判らなくなってきましたね」

「ですがデザートデミドラゴンの尻尾は鎧トカゲ十体に相当しますし、シエラ殿下陣営は対抗できるのでしょうか?!」

「尻尾とはいえ、ドラゴンですからね。査定額も最高ですし、シエラ殿下陣営が巻き返すのは難しいのではないでしょうか?」

ほおん?

「どうだお前らーっ!」

「流石にこんな大物は出せねぇだろうっ!」

「素直に負けを認めろー!」

「そうだそうだー!」

査定係さんの言葉に、相手陣営は勝った気になって挑発をしてきた。

「うるせぇお前らっ!」

「勝った気になってんじゃねぇぞ!」

「たかが尻尾じゃねぇか! 威張ってんじゃねぇっ!」

「まだまだこっちにゃ獲物はあるんだよ!」

「そうだそうだー!」

負けじとこちらも挑発に応戦している。

「で、でも……デミドラゴンはないんだよね?」

「鎧トカゲは、ディエゴさんが沢山狩ってくれたからあるけど……」

「だ、大丈夫かな?」

だが獲物の受け渡しをしていた子たちは、リストにデミドラゴンがないことを知っているだけにしおしおだ。

それが余計に向こうに勢いを付けさせていた。

「ねぇねぇ、あんなこと言ってるよ~」

「どうするっすか?」

ほんとどうしようね?

ディエゴがサンドクーガーを助ける時に、鎧トカゲを数体斃したからまだあるんだけれども。

グロリアストリオも頑張って数体斃してたので、十体ぐらいは余裕である。

「……なんか、どうでもよくなってきた気がしねぇか?」

「リオンも飽きてきてるしな」

「ここで出しちゃう?」

「やっちまいますか?」

「引導を渡すのもありよね?」

祈るように俺たちを見る自陣営であるがしかし。スプリガンのメンバーはみんな悪い顔をしていた。

「赤ん坊も居ることだし、終わらせるか……?」

「それがいいわね」

ギガンとアマンダ姉さんがそう口にすると、みんなも黙って頷いた。

これでやっと終われる。

「獲物を出し尽くしたカシム殿下陣営ですが、依然勝利を確信した態度です」

「ではシエラ殿下陣営には、次の獲物を出してもらうことにしましょう!」

「果たしてあとどれぐらいの獲物があるのでしょうか?」

じゃぁもう出しちゃっていい? そう視線を仲間に送れば。

「リオっち良いからやっちゃって!」

「目にもの見せてやるっすよっ!」

チェリッシュとテオが声をかけてくる。それにこちらの陣営は不思議そうな表情をした。

「やぁやぁ、遠からん者は音にも聞けっ!」

「近くば寄って目にも見よ」

ギガンとディエゴもノリノリである。でもその名乗りというか、慣用句ってこの世界にもあるんだな。

そうして最後にアマンダ姉さんが、フェスバトル会場を見渡しながら挑発的な笑みを見せる。

「やっておしまいなさい」

その言葉に背中を押されるように、俺はリュックからずるっとデミドラゴンの尻尾を掴んで一気に引き出した。

「だーっはっはっ! 見たかよ連中のアホ面!」

「いやぁ~盛り上がった盛り上がった!」

「前夜祭に相応しい激戦だったよな!」

全ての獲物の査定が終わり、冒険者全員に報酬が支払われた。

その結果に満足したのか、グロリアストリオもご機嫌である。

「それにしても、デミドラゴンを初日に狩ってたなんて、何で言ってくれねぇんだよ!」

「水臭いじゃねぇか!」

「お陰で余計にハラハラさせられちまったぜ!」

「わりぃな。お陰で盛り上がっただろ?」

「そりゃそうだがな!」

最終手段として出す予定ではあったが、出さなくて済むならそれに越したことはなかったんだけどね。

まぁ、もう一体俺のリュックに入っていることは黙っておくが。

「あ、僕たち勝ったんだって!?」

「やったーっ!」

そうしてわいわい騒ぎながらとある場所へ行くと、サンドクーガーの赤ちゃんの面倒を見ていてくれた子供たちが俺たちに向かって駆けてきた。

残念ながら母親の方は助からなかったけれど、サンドクーガーの赤ちゃんは無事である。

騒がしい会場から離れた場所で面倒を見てもらっていたのだが、ご飯を貰って今はすやすや眠っていた。

「面倒を見てくれてありがとね」

「ううん。でもこの子、誰とも契約してくれそうにないんだよー」

「ちょっと残念~」

アマンダ姉さんがそう声をかけると、子供たちは首を振った。

テイマー予備軍の子供たちに預けた時に、契約出来るようなら世話してあげて欲しいと頼んだのだが、どうやら無理のようだ。

まだ小さいし、母親とお別れしたばかりだからかな? 可哀想だけど、早く主人を見つけてくれれば、保護したこちらも安心できるんだけどね。

「やっぱ無理だったか」

「まぁ、仕方がねぇよ」

「普通はもう少し成長してから契約するからな」

テイマーである冒険者さんたちも心配そうに、けれど仕方がないとばかりにサンドクーガーの赤ちゃんを見た。

華麗なるディエゴのサンドクーガー救出劇は割愛する。(タクトを振ってレーザー光線のような電撃でバタバタ斃していただけなので)

母親の方はディエゴが現れたことで何故か安心したようにそのまま息を引き取ったのだが、残された赤ちゃんの里親探しに悩むことになった。

保護した俺たちが面倒を見るのは当然だけど、唯一契約出来そうなディエゴ曰く「ネコ科はな……。扱いが難しいから無理だ」と言って首を振った。

どうも躾の際に、甘やかすと主従関係が逆転した状態になるらしい。

ブランカの例もあるからね。ディエゴに躾が向いていないのは判明している。

ディエゴに子育てできるとは俺も思えないしね~。アマンダ姉さんのお陰でどうにかなっている状態だし。

それにネコ科の従魔は主従関係を教える前に、世話をされている自分が主人と勘違いしちゃう子が多いんだって。

しかも人間側も愛らしい仕草にデロデロになっちゃって、主従関係が崩れることが多々あるとか。それでも良いと思うテイマーもいるからどうしようもないが。

個体差もあるのだが、ネコ科従魔はプライドが高くお姫様気質な子が多いのが難点である。しかもこの子は雌だったので、余計にその傾向が強いだろう。

せめて雄だったらと思わないでもないが、やんちゃすぎるとシルバやノワルが苦労しそうだから諦めた。

特にシルバの心労が絶えないだろう。美しい毛並みがストレスで禿げるかもしれないと考えれば諦めるべきだ。

お姫様気質はブランカだけで十分なのである。いや、ブランカは山賊の親分か。

「それよりお前らこれからどうする?」

「俺等は祝杯を上げるためにこれから酒場に行くんだが」

「いや、赤ん坊もいるし、帰ることにするぜ」

飲みに誘われたギガンが申し訳なさそうに断った。

「え~!? 勝利の逆転劇の功労者がいねぇと盛り上がらねぇよ!」

「ちょっとだけ! ちょっとだけ一緒に勝利の美酒を味わおうぜ!」

「だがな……」

チラッとこちらを見て、どうすると問い掛けるギガンである。

行きたそうなのは丸判りだよ。

「こっちはだいじょうぶだよ?」

お世話係はそんなに沢山必要ないしね。

俺は帰りたいので帰宅するが、行きたい人は行けばよいと告げた。

「リオンの方は俺が付き合うから、行きたい者は行くといい」

ディエゴは俺に付き合ってくれるそうなので、ギガンだけじゃなく内心行きたそうなアマンダ姉さんやテオとチェリッシュも行けばいいじゃない。

「それじゃぁ、少しだけ付き合うことにするわ」

「仕方ないよね~」

「やれやれっすねぇ~」

「じゃぁ、お言葉に甘えて少しだけ付き合ってくることにすっか~」

ということになって、俺たちはイツメンで別れることになった。

みんな飲み過ぎには注意してね。

他にもサンドクーガーの赤ちゃんのテイマーになってくれそうな人を探すことを約束して、夫々別れることになったのであった。

最終的には忘れられそうな約束だけどねー。