軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第181話 フェスバトル最終日

本日は冒険者同士のフェスバトル最終日です。

現在シエラ王女様の陣営は、カメムシ王子陣営に僅差で負けております。

「よって最終兵器としてリオンを投入する」

最終兵器の意味が解らぬ。

「この場に居るだけでいい」

居ても役に立たないよ?

「デザートデミドラゴンが現れるかもしれないっすからね!」

そんな都合よく出て来ないと思う。

「狩りすぎて魔獣も警戒しているのよ。だからお願いね?」

お願いされてもどうにもならないよ?

「リオっち様~どうか幸運を授けて下さいませ~」

チェリッシュは俺を拝むな。

「お、マジで今日は坊主も参戦か?! 」

「なぁ~んか、坊主がいると運気が上がるらしいじゃねぇか!」

「初日以降、エアバッファの群れにも遭遇しなくなったし、いっちょ頼むぜ!」

ハルクさんたちグロリアストリオも何を言っているのだ。

俺ごときが居たからと言って、獲物に遭遇する訳もない。

それからシエラ王女様陣営の冒険者が何故ここに集まっているのか。最終日だからというのもあるのだろうけれど。なぁんかみんなの視線が俺に向いてる気がする。

俺に手を振ってくる愛想の良い冒険者さんが多いな?

取りあえず手を振り返しておく。

「二日前から東西で狩場が日替わりになってんだ」

「各陣営が接触すると奪い合いが始まっからな」

それを危惧したカメムシ王子が、狩場を陣営毎に分かれて日替わりで変更しようと提案したらしい。

本当に心を入れ替えたみたいな公平さに、アラバマ殿下たちも驚いていた。

「同じ陣営同士だと協力し合えるから、チーム戦らしくて良いしな」

「だからあっちとこっちで、狩場が分かれてる訳よ。飛竜隊で確認済みらしいから、どっちが獲物が多いとかはないらしいぜ?」

飛竜に乗れない冒険者は全員徒歩なので、その情報が正しいかは確認できない。

だが公正を期すため飛行型の従魔で各々確認したところ、獲物の散布自体に偏りはないようだ。

「移動距離も長くなるし大型の従魔を持ってるテイマーに有利だが、今日は秘密兵器をレンタルしてきた」

そう言うとハルクさんは背後を指さした。

バホメールの牽引するトゥクトゥクみたいな、車輪部分がソリになっている屋根付きの乗り物だ。

街の中でよく見かける移動用の乗り物ですね。車輪部分は砂漠仕様だけれど。

なんだかんだでバホメールって、この国では馬のような役割もしている。

美しい毛並みであれば絨毯などの織物になるし、メスは美味しいミルクを出すし、オスは農耕や荷運びに活用されていた。

これだけ有用だと、食べちゃダメという法律も出来るよね。

「つーわけで、最終日だから気を抜くんじゃねぇぞ、お前らっ!」

「「「おおーっ!!」」」

いつの間にか新参者であるハルクさんたちが、自陣営の冒険者のリーダーのようになっている。

聞くところによると、グロリアストリオが一番獲物を狩っているそうだ。

ドワーフの武器を手に入れたのもあるのだろうが、そのせいで素寒貧になったので必死に稼いでるみたい。いつもなら圧倒的な差で負けている筈のシエラ王女様陣営が、カメムシ王子陣営に僅差で迫っているのは彼らのお陰らしい。

続いてスプリガンも狩りの成績が良いそうだ。一番じゃないってところはらしいけれど。ガンガン行こうぜタイプじゃないからね。(特にディエゴが)

「今は窮地に追い込まれてるが、逆にそれがオレらの絆になっている!」

「余裕ぶっこいてる連中の鼻を明かしてやろうぜ!」

個人戦ではなく団体戦のようにみんなが集結している。

アンダードッグ効果もあるのか、シエラ王女様陣営が窮地に追い込まれているだけに結束力も強くなっているようだ。

「しかも幸運の妖精がオレらには付いてるからな!」

「「「イエーイッ!」」」

「みんな頑張ろうぜ!」

「「「おおーっ!」」」

幸運の妖精ってどこにいるんだ。

そして何故みんな俺を見るのだ。

首を傾げていると、ディエゴとギガンが苦笑しながら説明してくれた。

「なぁリオン。悪いが、アレを出してやってくれねぇか?」

「ここで?」

「ああ。ここにいる冒険者の多くが、リオンのチョコチップクッキーの虜だそうだ」

「最近は屋台を出してなかっただろ?」

「そうだね」

畑仕事に精を出していたので、屋台のことはすっかりおざなりになっていた。

それに実験的に屋台で販売してただけで、元々不定期販売だったしね。

「一部の冒険者の間では、幻の幸運を呼ぶクッキーって呼ばれてるそうよ」

「?」

「食べるとテンションが上がるんだって~」

「しかも良いことがあるそうっす」

「へぇ?」

気分の問題ではなかろうか? カカオには脳疲労の軽減効果があるし。その効果のせいで気分が良くなっているだけじゃないかと思うのだが。

だからチョコチップクッキーを沢山持って来て欲しいって言ってたのか。

シエラ王女様陣営の冒険者って、チョコレート好きなのかね。

まぁいいや。取りあえず士気を高めるべく、クッキーを配っておくとする。

「はいどうぞ」

「うおぉ~! これだよコレ!」

「やった! やっと手に入れたぜ!!」

「たまにしか手に入れられねぇんだよな!」

「最近じゃ滅多にお目にかかれねぇんだよっ!」

「こ、これが幻のチョコチップクッキーってやつか!?」

「こっちの陣営を選んでよかったぜ!」

「ありがてぇ!」

幻でも何でもない。屋台販売をすっかり忘れていただけである。でもこんなに喜んでもらえると嬉しいものだね。

美味い美味いと既に食べている冒険者さんもいるし。

明日のお祭りではお菓子の屋台も出る予定なのでよろしくね。

王子宮のコックさんたちや、乳製品工場の従業員さんが作って販売するよ。

「リオンの作ったのじゃなきゃダメなんじゃねぇかな……」

「そうだよね。なんか違うんだよね~」

「不思議な粉が隠し味だからっすかね?」

テオよ、その言い方だと怪しい白い粉みたいだから止めろ。それに混入させる粉はシナモンである。スパイス好きのサヘール人には好評なんだよ。

後はせいぜい「おいしくなぁ~れ、もぐもぐきゅん」と唱えているだけだ。

料理は愛情って言うし。(そして空腹は最大の調味料)

メイドカフェの店員さんがそう言うと、 お客(ご主人) 様が大変喜んでいる映像を見たので真似しているだけである。

俺自身はメイドカフェに行ったことはないが。

そんなこんなで。

昨夜、俺も最終日に参戦するようにお願いされたのでここにいる訳だ。

狩りの参加というより、お昼ご飯係だけどね。(いつもはお弁当である)

シエラ王女様陣営の士気を上げるべく、美味しいご飯をお願いされたんだよね。

荷が重い気はするけど、パーティの食事係として頑張ろうと決意を改めたのもあって断らなかったのである。

明日の屋台販売の材料についてはある程度収穫が終わったので、こうしてみんなに同行することになった。

それ以外の準備はシュテルさんや商業ギルドの人たちがやってくれるとのことなので任せているけど大丈夫だろうか?

砂漠にいくつか点在する小さなオアシスに移動してテントを張る。

ここを拠点に冒険者さんたちは狩りをするべく、飛行型の従魔を其々放って獲物の確認をすることにした。

スプリガンもノワルを偵察に送り出し、獲物が何処にいるのかを調べている間。

俺はみんなのお昼ご飯を作るべく、お手伝いの方々と食材を持ち寄っていた。

しかもみんな見慣れた蓋つきフライパンを持っているのだが。既にここでもホットサンドメーカーが浸透しているようだ。

「リオン君は料理が上手なんだよね?」

「僕より小さいのに凄いですよね!」

調理用のテーブルを取り出していると、チョコチップクッキーをもぐもぐしながら子供たちが集まって来た。

十四~十六歳ぐらいのまだ若い子達が俺のお手伝い要員さんである。

漸く見習い冒険者から脱して、本格的にパーティメンバーになったところかな?

でも見た目は俺より年上なんだよな。ほんとこの世界の人間って、背が高いし彫りの深い顔で年齢が高く見える。お菓子を食べている姿は子供そのものだけれど。

年下の子達に年下扱いされるのも複雑な気分だ。

「レッドエンペラー・スコーピオンで何を作るの?」

「あげものかな?」

レッドエンペラー・スコーピオンとは、巨大なサソリの魔物である。

普段は地中に潜って獲物を待ち伏せしている魔物だ。遊園地のゴーカートぐらいの大きさで、硬い外殻は物理攻撃に強く集団で襲い掛かってくる。

要するに巨大な毒サソリの魔物なのだが電撃魔法に弱く、オアシスに辿り着く前に遭遇したのでディエゴがタクトを軽く一振りして討伐した。

それが丸々一匹目の前にあるわけだが。(残りは俺のリュックにインした)

赤い外殻のせいか、海老と蟹が合体したような姿に見える。

問題のお肉の方なのだが、Siryiの鑑定でも蟹と海老みたいな味だそうだ。

それは是非とも食べて確かめなくてはなるまい。

Siryiの鑑定があるからか、魔物が全部食べ物に見えてしまう俺である。

以前なら知らない魔物のお肉を口にするのが怖かったのに、いつの間にやら平気になってしまった。それが良いのか悪いのかはよく判らないけれど。

「レッドエンペラー・スコーピオンって、殻が硬くて討伐が難しいんだよね」

「それにあんまり遭遇しないらしいよ?」

食欲が旺盛な魔物ではないらしく、一度食事をすると一月ぐらいは地中に潜って姿を現すことはないそうだ。

「遭遇しても数十匹も相手にしてらんないしね」

「尻尾だけ刈り取るのも難しいんだって」

「そうなんだ」

硬い殻だからと言ってそれが素材になることはなく、素材となるのは尻尾部分にある毒だけらしい。これが様々な薬となる素材なので、かなり高価という話だった。

そのせいか討伐しても基本的に尻尾部分しか持ち帰らないんだって。

誰もが大容量のマジックバッグを持っている訳ではないからそうなるのも頷ける。

しかも弱点である電撃系の魔法が使える冒険者はほぼいないので、遭遇すれば基本的にボコボコに物理攻撃をして漸く斃せるか否かといった具合らしい。火魔法で焼くと身がダメになるので討伐が難しい魔物だそうだ。

よってフェスバトルの獲物としてはカウントされていないので頂くことにする。

「こんなに奇麗なレッドエンペラー・スコーピオンを見るの初めてだよな?」

「砂まみれでボロボロの姿ばっかだしな~」

「だから食べるの初めて~」

「どんな味かな~?」

砂漠の民なので海老や蟹などの海産物は食べたことがないだろうな。

今から反応が楽しみだ。

「毒とかあるんじゃないの?」

「大丈夫か?」

「それはだいじょうぶ」

普通のサソリと同じで、熱を加えると毒素が失われるそうだしね。

焼いてよし、揚げてよし、茹でてよし。ただし生食はなし。

魔物ではないサソリの場合、肉の部分が少ないから殻ごと食べるけど、レッドエンペラー・スコーピオンは大きいので可食部位が多いのが良いね。硬い殻を剥がすのに苦労しそうだけれど。

「おーい! ここから三キロほど先に、エアバッファの群れがいるそうだぜっ!」

戻って来たノワルからの報告を受け、ギガンがみんなに声をかけてきた。

「よっしゃ、早速エアバッファとは幸先良いな!」

「結構な規模の群れらしいから、全員で行くとしようぜ!」

「んじゃいっちょ狩ってくるか!」

「いってらっしゃ~い」

「気を付けてね~!」

「昼飯楽しみにしてっから、よろしく頼むぜ~!」

「はーい」

自陣営の冒険者たちを送り出し、俺たちはレッドエンペラー・スコーピオンの料理に取り掛かることにした。

因みにディエゴは子供たちの保護者として拠点で待機である。

相変わらずの マイペース(サボリ) ですね。まぁ、ディエゴがいると安心感があるし、残ってくれるのは有難い。

本人は俺の出したキャンプ用ロッキングチェアに座って優雅に寛いでいるけれど。

それが許されているのは、既にレッドエンペラー・スコーピオンを十匹ほど斃したからって訳ではないが。

いざとなったらちゃんと働くことを信じよう。