軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第163話 開けゴマ!

眼前に広がる青々とした農地が望めるワンダフルビュー。

一定の時間になるとスプリンクラーが作動し、あちらこちらでキラキラとした虹がかかってとても美しい景色を見ることができる。

雲一つない真っ青な空と、緑広がる大地に包まれていると、時の経つのも忘れさせてくれるだろう――――なんつって。

「話に聞いてはいたが、短期間でこのようになるとは。まるで夢でも見ているようですね、姉上……」

「うむ。荒れ果て乾いた土地が、見事に蘇っておるのう」

秘密基地を案内する前に、シエラ王女様とアマル様は現在、拡張された農地の見学をしているところである。

色々悩んだ末、耕作地に現在植えているのはトマトやキュウリなどの野菜類、定番の大豆やトウモロコシや小麦などの穀物類も植えてみた。

元々ある苗や種の種類がそれぐらいしかなかったのもある。様子見がてらなのでこんなもんで良いだろうということで落ち着いたのだ。

他にも菜種を植えて、近いうちにとある実験をしようと考えている。

そうして今や干ばつで荒れ果てていた農地は、サワサワとした緑の新芽が生え始めたことにより様変わりしていた。

俺はというと、囲いで覆われた一角へとやって来た。

そこでは俺専用の、俺が持っていた野菜の種を植えて育てている実験場である。

大きさはテニスコートぐらいで、農地としてはそこまで広くはない。種自体には何の問題もなさそうなので、丁度良いから植えてみたのだ。

春から夏にかけて植えようと思って購入していたのに、この世界に飛ばされてすっかり忘れていたのを思い出したんだよね。

見慣れた日本の食べ物を再現するべく、この世界でもちゃんと育つかどうかも含めて完全に個人的趣味でやっていた。

「それにしても、貴様の専用畑だけ異常だな……」

「そうかな~?」

サボテンの魔物で作った液体肥料が優秀だからか、異常なほどに育ちが良い。

サワサワどころがワッサワッサしているのは確かだけど。

二週間前に植えたばかりのナスとシシトウとエダマメだが、そろそろ収穫できそうなのがちらほらあった。

「あ、これはたべごろかな~?」

スイカやメロン、人参や大根も一緒に植えてみたところ、すくすくと育っている。こちらの収穫はもう少し先かな?

そしてこの世界のトウモロコシとは別に、俺の方も日本生まれのゴールドラッシュ(という品種)を育てている。生で食べられるぐらい皮が柔らかくて甘いので、収穫するのが今から楽しみだね!

「なぁ、真面目な話し、育ちが早すぎるような気がせんか?」

「そう?」

「流石にこの短期間で収穫できるまで育つのは異常であろう?」

「こんなもんだよ」

サボテン肥料の威力が凄いからね。

殿下たちの畑も、通常の二倍から三倍の速度で育ってるじゃん。

シエラ王女様やアマル様、それに護衛の人たちも緑化した農地を見て驚いてるし。元農家のせがれのグラスさんは、興味深そうにあちこち見て回っている。ハンターさんとハルクさんは興味がないのか向こうの方でボ~ッとしているけど。

まぁ、収穫できるまで育っているのは俺の実験農場だけだが。

種がそもそも違うから、異常に感じるのだろう。なんたって日本で品種改良された野菜や果物は優秀だからね! (異世界に流出させて申し訳ない)

「リオンの持っている種だからですかね?」

「こ奴の種だけ異常ということか? そう言えば、よく見る野菜と少々形が違うな」

「たしか、品種改良をしたものだったよな?」

「うん」

「品種改良?」

ということで、ざっくりとした品種改良の方法をアラバマ殿下に教えた。

「なるほど。性質の異なる品種同士を交配させ、質の良いモノだけを選ぶのか」

「うん」

「暑さに強い品種や、害虫に強い品種などを掛け合わせたりするのもいいですね」

「興味深いな……。俺様もその品種改良とやらをやってみるか」

「いいねー」

時間はめちゃくちゃかかるだろうが、やってやれないことはない。

でも俺の方は、実際には品種の改良なんてやってないけどね。改良されたモノを育てているだけである。

美味しく育てと祈りながら世話をしているので、植物がその期待に応えてくれているだけだよ。

それに俺の畑は大体いつもこんなもんである。

割と適当に植えてもちゃんと育つし、カラスや猪に狙われるほど美味いのだ。

爺さんからは『緑の手』だって褒められたもんね。

なので調子に乗って、家庭菜園(というには広い庭)で野菜を作って、大量に収穫したら道の駅でゲリラ販売もしていた。(即刻完売する大人気野菜である)

だって自分で作ると凄く美味しく感じるし、きっと俺の庭の土が良いのだろう。

ここではサボテン肥料が優秀なので、同じような環境が再現されているのかもしれないね。

「リオっちの畑、本当にすごいね……」

「一月でこんなになるのかよ」

「それはリオリオだからっすよ」

「それですますにゃおかしくねぇか?」

「考えるだけ無駄ってことよ。だって リオン(ブラウニー) だもの」

「そりゃそうだが……」

正確には二週間ほどだけどね。いつもこんなもんだよ。

サボテン肥料のお陰で倍の速度で育っているみたいだけど気にしない。

Siryiの鑑定によれば本来の品種に比べて若干の変化があるそうだが、人体に影響はなく寧ろ良くなっているそうだ。しかも魔素の関係での変化だから、気にしなくてもいいらしいよ?

間違っても手足が生えたり走り回るような化け物にはならない。普通に美味しく頂ける野菜に育つということだった。

そうしてイイ感じに収穫できそうなモノを選んでもぎ取り、お待ちかねの秘密基地へと案内することにした。

ここで護衛のみなさんは一旦農場で待機してもらってお別れだ。ここから先は重要機密てんこ盛りなので、関係者以外は見学は出来ないのである。

暇なら農家のみなさんのお手伝いでもしてください。

まだ作付けが終わってない畑があるからね。(拡大し過ぎ問題)

という訳でやってきました秘密基地という名のアラバマ研究所。

ここでは自由な発想を持った人たちが集まって、様々な分野の研究や開発をしている場所である。

だがしかし。

「おい、アラバマ。何もないではないか」

「ただの岩というか、岩山の壁の前ですね」

「愚か者どもめ。俺様たちの拠点がそう簡単に目に見えてどうする」

「だよねー」

秘密基地なので簡単に視認されてはいけないのだ。

子供の頃の憧れの秘密基地と言えば小規模なもので言えば段ボールハウス、本格的なものでツリーハウスだけど、外からは丸見えである。

しかし俺たちが作った秘密基地は外からは見えない工夫が施されていた。

それもこれも幻獣カーバンクルのお陰である。

「あたし、なんか嫌な予感がする~」

「私もよ。この二人を放っとくと、大体ろくなことをしないんだもの」

「悪さをしてる訳じゃねぇのに、ろくでもねぇんだよなぁ~」

「俺はワクワクするっすよ!」

ろくでもないとはどういうことだ。

それにこの秘密基地は、アラバマ殿下とディエゴが自重しなかった結果できたんだからな!

という訳で。

「 イフタフ(開け) ・ヤー(ゴ) 、シムシム!(マ!) 」

合言葉を唱えると、岩からひょこりとフェネックが顔を出した。

実はペット用の出入り口である。この場合は従魔用の出入り口だろうか?

「フェネックだぁ~。やぁ~ん、可愛い~!」

「あら、ほんと。でも、岩をすり抜けて出てきたように見えない?」

そして出てきたフェネックことカーバンクルが、ちょいちょいと岩に触れると幻術が解けて目の前に扉が現れた。

おおっ! と驚く面々。

「……のう、この合言葉は止めにせんか?」

「なんで?」

セキュリティ上必要じゃない?

カーバンクルも俺たち見知った人間であることを確認するために必要だしね。

そして『開けゴマ』という合言葉は、農業の責任者であるアラバマ殿下だからこそ相応しいじゃないか。

農民がゴマの実が早く開いてくれと願うものであり、未知なるものへの扉を開く、新しいものへの挑戦をするという比喩表現でもあるのだ。

後ちょっと『 アラバマと四十匹(アリババと) のカーバンクル(四十人の盗賊) 』みたいな感じで面白い。現在は四十匹以上いるかもしれないけどね。某アイドルグループのように、グループ名の数字が正確な人数ではないのと同じだ。

「……まぁ、とりあえず入るか」

そうして幻術解除役のカーバンクルに促され、俺たちは秘密基地内部へ入った。

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

「ぶほっ!」

「なんじゃっ?! いきなり突風が襲ってきたぞっ!!」

上から前から風がゴウッと襲ってきたことにみんな驚く。

「砂や汚れを落とすための仕掛けだ。攻撃性はないから安心しろ」

「清潔第一だからな」

「そうそう」

クリーンエリアを通過しないと基地内に入れないので仕方がないね。

だってここでは食品も扱えば、魔道具の部品も作られているのだ。よって汚れや埃は持ち込んではならない決まりがあった。

「くっそ。初っ端から予想外過ぎる出迎えじゃねぇか!」

「わらわは少々面白くなってきたぞ!」

「わくわくするっすね!」

「兄上……これ以上の驚きはありませんよね?」

「……さぁな」

みんな清浄装置を通過するだけで騒ぎ過ぎだ。

研究所なんだから、この程度の設備はあって当然じゃないか。

アラバマ殿下もディエゴも設置に反対しなかったしね。

そして砂などを落とすための通路を渡ると目の前にもう一つの扉が現れるが、その前に手洗い場があってみんなに手を洗ってもらった。

「のうアラバマ。ここまで徹底する必要があるのか?」

「必要性を感じない方がおかしいことに気付け、バカ者どもめ」

「……兄上のそういう物言いが、みなの反感を買うのですよ?」

「うるさいわ。丁寧に説明しても理解せん奴が多すぎるだけだ」

あ、なんかちょっといがみ合いだしたぞ。

というかアラバマ殿下って言い方が捻くれているだけで、間違ったことはあんまり言ってないんだけどね。これが誤解を生む原因なんだろうけれど。

賢すぎるのも周りから浮く原因なんだよなー。理解を求めようと思っても、同じレベルで話ができる相手が居ないと逆にバカにされるし。人間関係って難しいよね。

それにアラバマ殿下って、ちょっとこの世界では先を行きすぎちゃってるからな。

どんな時代であっても、先進的な考え方って受け入れられ難いのだ。

「俺様からすれば、貴様らが砂だらけでも平気なのが解せぬ」

そう言うとアラバマ殿下は扉を開ける。

するとひやりとした涼しい室内の空気が流れ込んできて、同時に白い物体がディエゴめがけて飛んできた。