軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第150話:魔族の事情

大量に焼かれたステーキが持ち運ばれ、みんなで食事を終えると、魔の森に足を踏み入れてから、ようやく一息吐いた気がした。

ベルガスさんとレミィも似たような状況だったんだろう。満腹になったみたいで、ふぅー、と溜息を吐いていた。

「なかなか野菜も悪くないな」

こんなことをベルガスさんが言っているが、焼き肉のタレに含まれているタマネギのことである。九十九パーセント肉を食べていた人物が言う台詞ではない。

「ボクはもっと野菜を食べたーい!」

レミィは良い子だね。焼き肉のタレを野菜とカウントしてるところが可愛いよ。

「……肉に限る」

メルは野菜も食べなさい。肉だけで生活しても健康的な種族は、魔族だけだぞ。たぶん。

ジジールさんが皿を片付け始めると、ベルガスさんが少し前のめりになり、机に両肘をついた。

「食事も済んだことだ。本題に入ろう。お前たちが国境に来た経緯を教えてくれ」

そういえば、出会った時に魔族の目的は聞いたけど、俺たちは軽く話した程度だったな。

「フォルティア王国の領土内に魔族を見かけた人がいたみたいで、冒険者ギルドから依頼を受けて、国境の調査にきました。こちらに魔族と敵対する意思はなく、調査中に魔族と戦闘すること自体を禁じられています」

「なるほど。隣国のティマエル帝国と違って、話は通じるみたいだな。領主の耳に情報が入り、冒険者ギルドが代わりに依頼を発注したってところだろう。事を荒立てたくない思惑が感じられる」

作戦会議したときに、リズも言ってたな。本当の依頼主は領主なんじゃないか、と。

「魔族と話し合うことになるとは思っていなかったので、詳しい事情まではわかりません。でも、アンジェルムの領主様も国王様も争う意思はないと思います。個人的な意見なので、参考程度にしてください」

高原都市を建設するときに、戦争を起こすのではないか、と国王様が懸念していた。いまはクラフト部隊の法整備や商業ギルドの取引だけで頭がいっぱいのはずだし、戦争は絶対に回避したいと思うんだよな。

「貴重な情報として、その意見はありがたく受け取っておこう。魔帝国側においても、侵攻されない限りは何もするつもりはない。そんな余裕もないからな」

下唇を噛み締めるベルガスさんを見れば、明らかに何かあったとわかる。人族を妙に嫌がっているし、おそらく――。

「ティマエル帝国と何か問題があったんですか?」

「あぁ、かなり厄介な状態だ。魔物討伐による治安維持を名目に、ティマエル帝国の軍隊が魔帝国の領土内に侵入。魔の森を破壊するという暴挙を犯して、大問題に発展している」

それでフォルティア王国の領土内に侵入してまで、魔の森の魔物討伐をしていたのか。同じように環境を破壊されれば、ただでさえ強い魔物が繁殖しやすい状況なのに、生態系に異常をきたし、それが加速する恐れがあるから。

フォルティア王国との国境は魔の森の中間地点あたりに設けられているし、ティマエル帝国も同じような形なのかな。そうなれば、領土の一部を燃やしたとしても問題はない、という認識になってもおかしくはない。

「魔族とエルフは似たような特徴があり、魔力濃度の高い森を神の聖域だと思っている。思想の違いなのかもしれないが、魔の森を破壊されることに関しては、多くの魔族が反発しているんだ」

「どうりで魔物繁殖エリアが拡大されているのに、魔の森の魔物を討伐する人が少ないんですね」

大きい街ではないにしても、魔族の人数が明らかに少なかったし、ジジールさんに報告した際、『大物だけで言えば、トロールキングを二体』そう言っていた。他にも魔物を討伐していたため、疲労が蓄積し、トロールキングに押されたと考えるべきだろう。

メルが一人で善戦していたのに、四天王と呼ばれる魔族が負けるとは考えにくい。メルがめっちゃ強いっていう説もあるけど。

「よく見ているな。強者はいま、ティマエル帝国とのいざこざに駆り出されている。魔の森の異変を解決するために、俺が戻ってきただけだ。ティマエル帝国は気にくわないが、魔の森の現状を放っておくわけにはいかない」

思い詰めるように目を閉じたベルガスさんを見て、魔族が大きな問題に直面していることを実感した。

詳しい事情を聞いてしまったけど、俺たちもどうするかってところだよな。協力するにしても、トロールキング並みの魔物と戦い続けるには、リスクが高い。リズの話を聞く限り、魔力の回復も遅いみたいだし。

もっと言えば、ヴァイスさんもギオルギ元会長もティマエル帝国を注視していたし、深く関わらない方がいい気がする。フォルティア王国の領土内の問題でもあるから、手伝いたい思いはあるが……それは俺たちが決めることじゃない。

冒険者ギルドとアンジェルムの領主であるトレンツさんの判断が必要になる。

リズも同じことを考えていたのか、顔を合わせると、互いに頷き合った。これ以上は関わってはいけない、そういう目をしている。

フォルティア王国と魔帝国の仲介役でもないし、いまは冒険者の依頼を優先すべきであって――。

「私たちも手伝うよ。フォルティア王国の領土内のことでもあるんだもん。放っておけないよ」

めちゃくちゃ安請け合いしてるー! そうだ、リズは真面目でお人好しなタイプだったー!!