作品タイトル不明
5 いないようです
少し早起きしてダンジョンに行く準備をする。昨日のうちに荷物はまとめておいたので、軽く身だしなみを整えれば大丈夫だ。
化粧は落ちそうだからやめておこう。いや、ダンジョンに行くまでに誰かに見られるかもしれないからファンデーションくらいは必要かな。日焼け止めも塗っといたほうがいいかも。
今日行くのは家から1番近い、バスで30分くらいの場所にある中規模ダンジョンといわれているところだ。何を基準に中規模なのかは知らないけどそこそこ難しいってイメージでいいのかな?
ここはフィールドダンジョンで1階層に出現する魔物はスライム・ビッグラット・ホーンラビットの3種類となっているらしい。
手前の草原にスライム、少し奥に進むとビッグラットやホーンラビットが出るので、奥に進まず、手前でスライムを倒すだけなら比較的安全に対応出来るとオススメされていた。
ただ、駐車場がないので公共交通機関での移動を推奨していた。車移動派の私には地味にツラい。剣を持ったままバスに乗らなきゃいけないんでしょ。地味に恥ずかしいって…。
大きな登山リュックに軍手とハサミ、ビニール袋、除菌シート、水筒、おにぎりが入っている。中身はスカスカだけど、リュックにはシーツに包まれた剣が入っている。全部入れることは出来ないので、持ち手の部分はリュックの上から飛び出している状態だ。
なにあれ〜、みたいな感じで一瞬見られるけど、皆さん、程良くスルーしてくれるのでダメージは少ない。剣をお腰に差す以外の運搬方法があれば知りたいものだ。
バスに乗り周りをみると、これからダンジョンに向かうであろう若者達が多くいる。鞘に入った状態の剣を持った人や何かの杖っぽいのを持った人など様々だが、皆ワクワクした様子でヒソヒソとおしゃべりをしていた。若者はお腰に差しても様になるな。
かと思えば、剣らしき物を抱えてぐったりとした様子の中年男性の姿が。
自分も中年女性だが、あんなにくたびれた姿は見せたくないと思い、空いている席に座っても背筋を伸ばし、お上品に窓の外を眺め続けた。
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失敗したっ、背中痛いっっ!!
普段猫背気味なのに30分もスンッて座ったら、そりゃあしんどいわ。もう疲れた、帰りたい。
なんてことを考えてたらバスはダンジョンに到着した。人の流れに乗って進んでいるとでっかいコンクリートで作られた、ドームみたいなところまできた。
バスの窓からずっと見てたドームはダンジョンを囲うようになっているらしく、ドームの壁にめり込む感じで一軒家サイズの建物が建てられていた。
中は狭いが普通の役所のようになっていて、カウンターで受付を済ませ、入って左側にある扉を開けるとその先にダンジョンゲートと呼ばれる門がみえた。この門をくぐるとダンジョンの中、1階層の草原に行けるらしい。
受付で探索者カードを提示する。ピッと音がなって入場手続きが終了した。何かを記入したりとかはないのでスムーズに入ることができるようになっている。駅の改札みたいな感じだ。
前にいる人にくっついて流れるように移動したらダンジョンゲートの前までやってきた。土曜日だからか人が多いので、おお〜っと眺めている間にもどんどん人が門をくぐって行く。ついていくように私も門をくぐった。
薄っすら何かを通り抜けたような感じがしたあと、一気に景色が変わった。景色だけじゃなく、空気の匂いまで変わったからびっくりしたよ。
ゲートを通り抜けても身体に変化はないが、一瞬で全く違う場所にきたと思うと変な感じだな。
「……休日の自然公園だ。」
春のような陽気、青々とした芝生、出現したスライムに向かって走りだす中年男性。ここに小さな子供がいれば完璧な休日の風景だろう。スライムでボール遊びをしているようにしかみえん。
「レジャーシートが必要だったか……。」
探索者の納品義務が始まってまだそんなに経ってないからとにかく人が多い。あっちもこっちも人だらけ。中年男性と中年女性しかいない。奥の方に少しだけ若者が見えるが彼らはこのまま奥に行きそうだ。
やっぱり、考えていることなんて皆同じなんだよ。皆、私と同じように考えて調べて行動した結果がこれなんだよ。だって同年代だもの。そうなるよ。安全なところで怪我をしないように最低限だけ討伐をするためにここにいるんだよなー。
「しかし参った、スライムがいない。」
いや、いることはいるが出現(リポップって言うらしい)した途端に狩られる。ちょっと元気な中年男性達にどんどん狩られる。剣を振り回して楽しそう。童心に返ってるな。
中年女性は若干引いてるようだ。さすがに、あれに混ざろうとする猛者はいないようだ。誰か混ざればつづく人はいそうだけどな。
早めに来てスライム倒してお昼には帰ろうなんて予定立てたけど、絶対ムリだ。現在時刻8時、周りにはスライムなし。
早く帰るために元気に走り回るか、明日の身体のためにゆっくりやるか…。筋肉痛の恐怖に負けたので、少し離れようと中年地帯を抜け出すのであった。