軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 仕事中ですが

「係長〜、明日ダンジョン行くってホントですかぁ。」

私、食品関係の会社で係長やってます。仕事頑張ってます。今話しかけてきたのは入社2年目の部下です。女を武器にするタイプのスピーカーです。部下ですがあまり好ましい相手ではありません。

心の中で一瞬現実逃避しつつもなんとか笑顔を作り対応する。

「なんのことですか?」

「隠さなくてもいいですよぉ。東堂課長とコソコソ話してるの聞いちゃいましたぁ。」

常に間延びした喋り方にイラッとしつつ顔に出さないよう全力で笑顔を維持する。

ついさっき東堂課長と話したばかりなのに何故知っているのか? 一応、周りに人がいないのを確認したのに。

「探索者には納品義務があるので行きますよ。」

「ホントに行くんですかぁ。その歳だとムリっぽくないですかぁ。」

「それでも義務なので。他になければ仕事に戻ってくださいね。」

私の笑顔はピクピクしているだろう。だが、仕方がない。この子は女性相手だとやたら突っかかってくるが、いくら苦手とはいえ部下は部下だ。広い心で対応しよう。

「てか、係長って何の職業でどんなスキル持ってるんですかぁ?」

大きな声でベラベラと!! このクソ野郎がっっ!!

ネットで見て知っているんだよ、探索者は自分のスキルを大っぴらにしないって。

パーティーメンバーは別として、他人にはあまり教えないらしい。職業・剣士で剣術とか、職業・僧侶で回復とか積極的に宣伝するタイプの人もいるけど、まだ探索者が一般的ではないこともあって慎重になっている人が多い。

公表している人は比較的メジャーな職業やスキルの人か、ダンジョンが一般人に開放されてすぐに活動し始めたゴリゴリ最前線の人に多い。

誰かと組みたい時は、前衛で物理攻撃出来る人探してますとか、魔法で攻撃出来る又は回復出来る人探してますみたいに大体伝わるけど微妙に濁す言い方で募集していた。

それ意味あるのかって思うけど、自衛のためには仕方ないらしい。当然、私も教える気はない。

「ごめんなさいね。他人にはあまり教えない方がいいって言われてるから内緒で。」

「別にいいじゃないですかぁ。大したスキルじゃなさそうですし、みんな知りたいって思ってますよぉ。」

スンッてなりそうなのを堪える。いや、なっているかも。笑顔がピクつく。

「知りたいって思ってもらったとしても教えられないですよ。大した職業じゃないけど、これから命かける職業ですからね。」

命かける気はないし、安全第一をモットーにチクチク、コツコツ頑張る所存ですが。

「えぇ〜、つまんないですねぇ~。ノリ悪いですよぉ。」

なんて言いながらフロアを出て行った。

おいっ!! 仕事中やぞ!! とは思ったが辛うじて口には出さなかった。私エラい。代わりに彼女の教育係だった部下を呼ぶ。

「仕事中なのでフロアに戻って仕事をさせてください。」

可哀想なくらいペコペコしながらフロアを出て行く部下を見て申し訳なく思うがこれも仕事だ。対応するのが無理なら無理って言うように伝えてあるし、本人も指導頑張るって言ってたしなぁ、と思いながら仕事に戻った。

終業後、東堂課長に誘われて休憩スペースに向かった。

「話聞かれちゃってごめんね。気が付かなかったよ。」

「いえ、私もわからなかったですから。」

さっき東堂課長と話した場所は会議室の前。多分、会議室の中にいて話を聞いていたんだろう。

サボりやがって!!

「覚醒者だってこと自体は秘密にしてないですし、積極的にダンジョン攻略するわけでもないので問題ないです。」

「ならいいんだけど。明日、気をつけて行ってくるんだよ。無理はしないように。」

「ありがとうございます。気をつけます。」

今日は真っ直ぐ帰って早めに寝よう。