軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

898話 上機嫌

「おかえり~」

借りている家に戻ると、ロティスさんが笑顔で出迎えてくれた。

「た、ただいま」

彼女の、いつもと違う様子に少し戸惑う。

「気にしなくていいよ。機嫌がいいだけだ」

私の肩をポンと軽く叩くジナルさんを見ると、ロティスさんを見て溜め息を吐いていた。

「何か良い事でもあったのか?」

お父さんの質問に、ニンマリ笑うロティスさん。

ジナルさんが言う通り、かなり機嫌がいいみたい。

何があったんだろう?

「私の大、大、大嫌いな奴がとうとう捕まったのよ~」

廊下でくるくる回り出すロティスさんを、お父さんと一緒に呆然と見る。

「カシム町の利権を奪おうとしたり、ロティスの提案を妨害したり。彼女の邪魔をしてきた貴族が、今回の件に関わっていて捕まったんだ」

ジナルさんを見ると、呆れた様子でロティスさんを見ている。

「そうなの! とうとう、あの憎たらしい顔が苦痛に歪むのよ! こんなに嬉しい事は無いわ。爵位を剥奪されるだろうし、ざまぁみろよ!」

ロティスさんの表情は本当に晴れ晴れとして、大嫌いな貴族が捕まった事を心の底から喜んでいると分かる。

「良かったですね」

「ふふふっ。さぁ、アイビー」

何だろう?

「呑むわよ~」

「「子供を誘うな!」」

廊下にジナルさんとお父さんの声が響く。

「嫌ね。分かっているわよ。だからアイビーには、カシム町で一番高級な果物の果実水を買って来たんだから」

怒るロティスさんに、ジナルさんが「紛らわしい」と呟きお父さんが頷いた。

そんな3人に笑ってしまう。

「ロティスさん、ありがとう。そろそろ、家に入っていいかな?」

まだ玄関なんだよね。

「あっ、ごめん。食堂に行こう?」

「先に洗濯物を干してから行くよ」

お父さんの言葉に、ロティスさんは頷くと手を振って食堂に向かった。

その後を疲れた表情で追うジナルさん。

そんな2人を笑って見送り、お父さんと家の庭に出る。

バッグを開けてソラ達を出して、洗濯を干す。

風に揺れる洗濯物に向かって飛び跳ねるソラとフレム。

「こら、洗ったんだから駄目だよ」

「ぷぷ~」

「てりゅ~」

少し残念そうな鳴き方で返事をする2匹の頭を撫でる。

洗濯物を干し終わり食堂に向かうと、ロティスさんとフィロさんが言い合いをしていた。

「どうしたんだ?」

「あぁ。フィロが大事にしていた酒を、ロティスが無断で開けてしまったそうだ」

お父さんの質問に、笑いながら答えるセイゼルクさん。

でも、その答えに首を傾げる。

ロティスさんとフィロさんの言い合いは、子供時代の失敗をお互いに暴露している様に聞こえる。

何処にもお酒の話は出てこない。

どういう事だろう?

「最初はお酒の事だったんだよ。でも『ロティスは昔から』というフィロの言葉から、こんな状態になったんだ。それにしても、色々やってるな」

シファルさんが楽しそうに笑うと、ラットルアさんも笑って頷く。

「ずっと一緒にいるから、お互いに色々知っているんだろうな」

「やめろ、馬鹿共!」

ジナルさんが調理場に続く扉から入ってくると、言い合う2人を見てすぐに止めた。

「全く。ほら、作って来たぞ」

ジナルさんが手にしていた料理を2人に渡す。

「「ありがとう」」

不機嫌に睨み合っていたロティスさんとフィロさんが笑顔になると、ジナルさんが溜め息を吐いた。

それにしても、料理1つで機嫌が良くなるなんて。

何を作って来たんだろう?

「んっ? あぁ、これか? ただのサラダだ」

ただのサラダ?

「お酒に合うのよ。しかもこの味はジナルしか出せないのよね」

ロティスさんの言葉にフィロさんが頷く。

「作り方を聞いて何度か挑戦したけど、味が違うんだよ」

なるほど。

少し気になるな。

「多めに作ってあるから、夕飯の時に食べてくれ」

ジナルさんの言葉に笑顔になる。

「ありがとう」

夕飯が楽しみだな。

ロティスさんが買って来てくれた果実水を飲む。

トロッとした甘味とさっぱりとした香り。

かなり美味しい。

「アイビー、おはよう」

「おはよう」

「ラットルアさん、ヌーガさん。おはよう」

ご飯を食べてた時はまだ寝ていたから、挨拶がまだだったね。

「アイビー、ドルイド。そろそろ、行こうか?」

そうだ。

カシム町を色々と回って見るんだった。

「うん」

シファルさんに笑顔で応えると、ラットルアさんとヌーガさんも用意をした。

どうやら、皆で行くみたいだ。

「あれ? どこかに行くの?」

ロティスさんの質問に、皆でカシム町を見て回るとシファルさんが言う。

「そうなんだ。だったら、これを貸してあげるわ」

ロティスさんが、シファルさんに緑の板を渡す。

「これは?」

「飲食店で使える優待カードよ。この町の飲食店や屋台は、常連客にだけ出す特別な料理があるの。そのカードを見せると、出してくれるわ」

シファルさんが持つ緑のカードを見る。

凄いカードだよね。

でも使って良いのかな?

「そうか、ありがとう。でもロティスのカードを俺が使っても、問題になったりはしないのか?」

「大丈夫よ。友人や別の場所に住む家族が来た時に渡してもいい事になっているから」

かなり自由なんだな。

「それならありがたく使わせてもらうよ」

セイゼルクさん達とお父さんと私で、家を出る。

「アイビー」

お父さんを見ると、ソラ達が入っているバッグを見た。

「やっぱり一緒にいたいみたいだな」

「そうみたい」

カシム町を見て回るだけだから家で待っていてもいいと言ったけど、今回も一緒に来たソラ達。

明日は、出掛けずに皆と1日過ごそうかな。

「ロティスに捨て場に行きたい事を伝えておいたから」

ソラ達のご飯だ。

「どうだった?」

「明日は無理だけど、明後日なら何とかなると言っていたよ」

明後日か。

それなら明日は1日家で皆と遊ぼう。

「どうした?」

「明日は皆と家の中で遊ぼうかと思って。あっ、森に出た方がいいかな?」

森だったら、シエルも本来の姿で走り回れるよね。

「それは、皆に聞いて決めようか」

「そうだね」

お父さんの言葉に頷く。

「アイビー、ドルイド。話は終わった?」

シファルさんの言葉に、視線を向ける。

「あぁ。どうしたんだ?」

「これっ!」

ラットルアさんが、ある店を指す。

その店の出入り口から中を覗くと、甘い香りがした。

「可愛いだろう」

店の中にいたヌーガさんが、手に何かを持って目の前に来た。

それを見て、目を見開く。

「花の形をした飴だよ」

シファルさんが面白そうな表情で、ヌーガさんと手に持っている飴を見比べる。

そして肩を震わせた。

「可愛いな……飴は」

お父さんの言葉に、シファルさんの笑い声が大きくなる。

「あぁ、こっちにはもっと色々あるぞ」

チラッとシファルさんを見たヌーガさんは気にした様子も無く、お店の奥を指す。

「凄い」

奥に行くと、様々な花の形をした飴が並んでいた。

どの花も、透明感のある花弁が綺麗だ。

「アイビー、気に入った花があったら買おうか」

お父さんの言葉に頷くと、花を選ぶ。

「どれも綺麗で選べないな」

「あっ、シファル。優待カードは?」

お父さんの言葉に、ハッとした表情をしたシファルさんが優待カードを出す。

それを見たお店の人が、奥から少し大きい花の飴を持って来た。

「これが特別な飴になります」

「ありがとう。これは、凄いな」

お父さんの言葉に、全員が頷く。

優待カードで出てきた花の飴は、凄く手の込んだ作りだと分かる逸品だった。