軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

840話 色々が当たり前

広場から出て防護団に向かう。

ロティスさん曰く、広場から数分で着くらしい。

「ここよ」

彼女が少し大きめの建物の前で止まる。

その建物の壁に掛かっている看板を見る。

「酒場?」

「そうよ。組織が出来た当初から、全てが終わったら解体すると決まっていたの。だから、専用の建物のなんていらないし、話し合いが出来るような場所さえあればよかったから。酒場の2階と地下の借りたのよ」

「他の場所も候補に挙がっていたのに、ロティスがこの場所に決めたんだよな。酒が好きだから」

ジナルさんの言葉に、ロティスさんが「そうよ」と頷く。

「仕事が終わって、1分後に酒が飲めるなんて最高の環境じゃない!」

「「はぁ」」

フィロさんとガガトさんが、嬉しそうに言うロティスさんの傍でため息を吐く。

2人の苦労が伝わってくるな。

「大変だったんだね」

シファルさんの言葉に、フィロさんが何度も頷く。

「仕事が終わってから、翌日の仕事が始まる時間まで飲むんだぞ。俺達も賭けに負けて、何度か付き合わされたよ」

うわぁ、凄いな。

休みを取らず仕事に向かって、大丈夫なのかな?

「最近は、途中で帰るけどな」

「根性がないな」

ガガトさんの言葉に、ロティスさんが彼の肩を軽く叩く。

「根性の問題じゃない。酒は好きだが、徹夜はつらい年だ」

不服そうに言うガガトさんに、シファルさんが大笑いする。

「確かに年だな。3日も続けるとふらふらになる」

いや、3日も続けられるなら十分だと思う。

「さてと、まずは馬車の中にいるあいつ等ね」

酒場の扉から中を覗くロティスさん。

目的の人物を見つけたのか、誰かに向かって手招きをした。

「あんだぁ」

酔った状態で出て来た小太りの男性を見る。

「仕事よ。馬車の中にいるわ」

ふらついている男性に、ジナルさんの眉間に皺が寄る。

「相変わらずだな」

「おっ、ジナルか! 元気だったか?」

バン。

勢いよく男性がジナルさんの肩を叩く。

「元気だ。それより、重要な情報を持っている可能性があるから、しっかり聞き出してくれ」

ジナルさんの言葉に、男性の雰囲気が変わる。

「ほぉ。重要な情報か。それだったら酔っている暇はないな。すぐに取り掛かるよ」

今までふらついていたはずが、馬車まで淀みなく歩く男性に首を傾げる。

「おかしいだろう?」

ジナルさんを見ると、男性を指した。

「えっと、酔っていなかったという事ですか?」

私の質問に首を横に振るジナルさん。

「いや、奴は本当に酔っていたよ。ただ重要な仕事だと分かると、酔いが一気に醒めるらしい」

「えっ? 本当に?」

「本当に」

ジナルさんの説明にビックリして訊き返してしまう。

「よっと」

男性の声に視線を向け、目を見開く。

「ちょっと重いな」

両肩に2人ずつ担げば重いと思う。

というか、凄い力持ちだな。

「フィロ。手伝いよろしく」

「あぁ、分かった」

4人の刺客を担いだ男性が建物の中に入っていく後をフィロさんが追う。

「次は、ジナルの話を聞かないとね」

ロティスさんの言葉に、ジナルさんが肩を竦める。

「奥で話すよ」

「奥?」

ロティスさんがジナルさんの言葉に、驚いた表情をする。

「奥」という言葉に、どんな意味があるんだろう?

「そうだ」

「わかったわ。では、ミーチャの仕事が終わるまでに話を聞かせて」

ミーチャ?

……もしかしてさっきの男性の事かな?

いかつい印象が強いけど、名前は可愛いな。

「こっちよ」

ロティスさんの後に続いて酒場に入る。

中は広く、まだ混む時間ではないためか人はまばらだ。

「ロティスだ~」

でも既にお酒に酔った冒険者はいるみたいだ。

「おかえり~」

冒険者達がロティスんさんに気付くと、酒の入ったコップを持ち上げる。

「ちっ。私はまだ仕事中で飲めないのに!」

あはははっ。

本当にお酒が好きなんだね。

建物の2階に上がり、一番奥の部屋に案内される。

部屋の中には、ソファとテーブルがあるだけで、特に変わった物はない。

「普通の部屋だな」

セイゼルクさんが部屋を見渡すと首を傾げる。

ラットルアさん達も、不思議そうに部屋の中を見渡している。

全員「奥」という言葉が気になるのだろう。

全員が部屋に入り扉が閉まると「カチッ」と、鍵の閉まる音がした。

全員が扉に視線を向ける。

「誰も、鍵を閉めてないよね?」

「自然と鍵が閉まるようになっているのか?」

お父さんが扉の取っ手を回すが、ガチッと鍵のぶつかる音がした。

「そうなの。この部屋は扉が閉まると、自然と鍵が閉まるよう魔法が掛かっているの。あと、鍵がしまった瞬間から外に音が漏れないようにもなっているのよ。極秘の会議や、密会するのにお薦めの部屋よ」

極秘や密会か。

「で、ジナル。この部屋を指定した理由は、広場での会話からアイビーの事よね?」

「あぁ。アイビーの能力はロティスが知っているテイマーとは全く異なるんだ」

ジナルさんの言葉に、ロティスさんが興味津々という表情をする。

「まずは座って話さないか?」

シファルさんの言葉に、ロティスさんが笑う。

「ごめん。みんな、座って。お茶を淹れるわね」

ロティスさんが、皆に椅子を勧めるとすぐにお茶の用意を始める。

手伝おうかと思ったけど、その手際の良さに見惚れてしまう。

「どうぞ」

すぐに目の前に出されたお茶に手を伸ばす。

一口飲むと、ふわっといい香りがした。

「手際がいいですね。それに凄く美味しい」

「ふふっ。仕事の合間に美味しいお茶って大事でしょ?」

そうなの?

お父さんを見ると、肩を竦められた。

まぁ、人それぞれだよね。

「でも、私の周りには美味しいお茶を淹れれる者がいなくてね。ずっと自分で用意していたんだけど、私は忙しいのよ。それでどんどん手際が良くなったの」

仕事が忙しいから手際が良くなったというより、ロティスさんが器用だったからだと思うな。

「さて、お茶の用意も完璧。ジナル、話して」

「分かった」

ジナルさんが私について話し出す。

しばらくすると話は終わり、ジナルさんがお茶に手を伸ばした。

「アイビーがテイマーなのは、間違いはないのよね?」

「はい。教会で調べてもらった時にテイマーだと出てました」

「そう。まぁ、ソラをテイムしたんだから、間違いないか。でも、アダンダラがテイムの印を真似て見せた? それでいつの間にか本当にテイムしていた? 魔力を渡していない? テイムしていないスライムが、攻撃しない……」

聞いた内容を繰り返すロティスさん。

「よしっ」

パンと両手を叩くロティスさんは、私を見て笑う。

「アイビーのようなテイマーもいる。うん。もうそれでいいわ」

えっ?

私の様なテイマー?

「同じスキルを持っていても、全く同じ事が出来るわけではない。炎のスキルで星3つの冒険者達を知っているけど、全員が全員同じ威力の炎での攻撃が出来るわけじゃない。本当に星3つなの? そう思う者もいるぐらいよ。だからテイマーだって、色々いるのが当たり前よ」

そう言われてみれば、そうかな?

「テイマーも同じなのよ。今までその事に誰も気付かなかっただけ。きっと探せば、今までの常識に当てはまらないテイマーがいるわ。うん。きっとそうよ」

ロティスさんの言葉に、ジナルさんがふっと笑う。

セイゼルクさん達は、最初は驚いていたけど途中からは笑い出した。

私もロティスさんの説明の途中で、笑ってしまった。

まさか、そんな考え方をしてくれるとは思わなかったな。