軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

839話 食べる量

「美味しかったね。でも、私にはちょっと大き過ぎたみたい」

お腹を撫でなら「ふぅ」と息を吐き出す。

さっぱりした甘さだったので1個食べちゃったけど、間違いなく食べ過ぎた。

私の言葉に、お父さんが小さく笑って頷く。

「次に食べる時は、俺と分けて食べようか」

「うん、そうしてくれると嬉しい」

美味しかったから、また食べたいし。

それにしても、ロティスさんはこれを5個?

しかも、串肉もあるんだよね?

あの細い体のどこに入るんだろう?

「くそったれが!」

んっ?

男の人の声だけど……どこから聞こえて来たんだろう?

「なんだ?」

セイゼルクさん達が警戒した様子で、広場の外に視線を向ける。

「どけ! 邪魔だ!」

「なんで奴が!」

苛立った男性達の声が聞こえると、広場内が少し騒然とする。

「また、あいつ等か」

近くの男性の声に耳を傾ける。

「またこの村に来ていたのか。奴等の横暴な態度は目に余る」

「本当にな」

どうやら、かなり嫌われている者達のようだ。

バタバタと走る足音と苛立った男性達の声が、広場にどんどん近付いて来る。

「くそっ。なんであいつがこの村にいるんだ! 邪魔しやがって!」

「片付けるから心配ないと言っていたのに!」

片付ける?

なんだか物騒な言葉だな。

広場の前を、怒鳴りながら走る冒険者の服を着た男性達が通り過ぎていく。

「えっ? 冒険者なの?」

足音がしたから、冒険者だとは思わなかった。

男性達が広場の前を通ると、広場にいた多くの人が顔を歪ませるのが見えた。

本当に、凄く嫌われているみたい。

「あれが、有名な冒険者みたいだな」

ラットルアさんが、男性達が通り過ぎた方を見て言う。

あぁ、冒険者ギルドで騒いてたのは彼等だったんだ。

ロティスさん曰く「カシム町の冒険者ギルドで有名になりつつある……屑共」だっけ?

「あの足音はありえないが、それなりに鍛えているみたいだな」

セイゼルクさんの言葉に、ヌーガが頷く。

「だが、上位冒険者では無いんじゃないか? あの装備では、上位魔物は倒せそうにない」

えっ、ここから彼等の装備が分かったの?

走っていたから、姿が見えたのは数秒だったのに。

「あいつ等、いつもより苛立っていたわね」

「そうね」

先ほどとは違う村の人達の声が聞こえた。

そっと見ると、大通りを見ながら不安そうな表情をしている。

「あんなに苛立っていたら、また騒ぎを起こすかもしれないわよ」

「えぇ。巻き込まれないように、気を付けないと。前の時は、意味もなく殴らえて大怪我をした人がいたからね」

それって、周りに当たり散らすという事?

本当に救いがない者達なんだね。

「ジナルが来たぞ」

お父さんの言葉に視線を向けると、広場に入って来たジナルさんの姿を見つけた。

セイゼルクさんが合図をするように片手を挙げると、気付いた彼がこちらに来る。

「見たか? あの馬鹿どもを」

んっ?

もしかしてさっきの男性達の事?

「見たが……もしかして知っている奴等だったのか?」

お父さんの言葉にジナルさんが頷く。

「王都で少しやり合った事がある。声が聞こえた時に『もしかして』と、思ったが、まさか本当にあいつ等だとはな。騒いでいるから注意をしたら、俺の顔を見て逃げて行ったよ」

「奴等、気になる事を言っていたぞ」

シファルさんの言葉に、ジナルさんが視線を向ける。

「『片付けるから心配ないと言っていた』と。誰に聞いたんだろうな」

シファルさんの言葉に、ジナルさんが少し目を見開いた。

「へぇ。奴等がそんな話をねぇ。誰に聞いたのか、じっくり話を聞きたいものだな」

「あれ? 刺客を送った者は聞き出したんだろう? そいつと、さっきの奴等を使っている者は別なのか?」

ジナルさんの答えが思っていたものと違ったのか、シファルさんが驚いた表情に変わる。

「あぁ、違う。いや、分からないな」

「分からない?」

「今、貴族達の間では主導権を巡って攻防が繰り返されているんだ。そのせいで、貴族同士の繋がりが変わりやすくて、現在誰と誰が繋がっているのか分からない状態になっている」

ジナルさんの言葉に、シファルさんが呆れた様子を見せた。

「教会の連中が持っていた利権を手に入れるための主導権争いか。くだらない」

「あぁ、本当にくだらないよな」

呆れた様子なのに、2人とも目つきがちょっと怖い。

「さっきの奴等、捕まえに行くのか?」

ラットルアさんの言葉に、ジナルさんが首を横に振る。

「奴等に協力している者が、この村にいるそうだ。そいつらをあぶり出したいと、ロティスが言っていた。既に何かしけているみたいだから、数日は様子を見ようと思う。まぁ、動きがなかったら、俺から吹っ掛けるつもりだ」

「楽しそうだから、協力するよ」

ジナルさんがシファルさんの言葉に、ニヤッと笑う。

それを見てシファルさんも笑った。

「2人とも、笑顔なのに怖いね。きっと考えている事が表情に出ているんだろうね」

私の隣に座っていたラットルアさんが、私の言葉に笑い出す。

「あぁ、あれはろくでもない事を考えているからだろうな」

「ラットルア」

シファルさんが、笑顔でラットルアさんを見る。

「なぜだ? アイビーが言い出したのに!」

不服そうなラットルさんに、シファルさんが苦笑する。

「なんでだろう。アイビーが言うと気にならないのに、ラットルアだとイラっとする」

ラットルアさんが呆れた様子でため息を吐く。

「シファルらしいな」

「ロティスの用事が終わったみたいだ」

セイゼルクさんの言葉に、広場の出入り口に視線を向けると笑顔で手を振るロティスさん達の姿が見えた。

「ごめん。お待たせ。あっ、ありがとう。どうだった? 美味しかった?」

セイゼルクさんの前に置いてあったズワンを見て、嬉しそうな表情になるロティスさん。

「美味しかったよ。少し大きかったが」

「大きい? まぁ、ちょっと他の甘味より大きいかな? いただきます」

座る事なくズワンを食べるロティスさん。

その表情を見ていると、自然と笑みが浮かぶ。

「美味しそうに食うよな」

フィロさんの言葉に、ガガトさんが頷く。

「ロティスが食べている所を見ると、食べたくなるんだよな。悪い、俺達の分もある?」

セイゼルクさんが、ガガトさんにズワンの入ったカゴを渡すと嬉しそうな笑みを見せた。

買っておいて良かった。

「ありがとう」

「ごちそうさま」

え、もう?

ズワン5個を食べきったロティスさんに視線を向ける

「んっ?」

「いえ、お腹は大丈夫ですか?」

私の質問に不思議そうな表情を見せるロティスさん。

「全く問題ないけど、どうして?」

「いえ、問題ないならいいんです」

大丈夫なんだ。

ロティスさんのお腹を見る。

「あぁ、食べる量が気になるの?」

「はい」

「ふふっ。トールスをテイムしているからよ」

「えっ?」

テイムしているトールスと大量に食べる事に関係があるんあろうか?

ロティスさんの言葉に首を傾げると、ロティスさんも首を傾げた。

「えっと、テイムした子に魔力を渡すでしょう?」

あっ。

「私がテイムしているトールスは大量に魔力が必要な魔物なの。だから沢山食べて魔力を生み出す必要があるんだよね。アイビーもテイマーだから、知っているよね?」

本では読んだ事があるけど、関係なかったから完全に忘れてた。

「あぁ、ロティス。あとで説明するよ」

お父さんの言葉に、ロティスさんだけでなくフィロさんとガガトさんも不思議そうな表情を見せた。