軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

830話 すぐに行こう!

木の魔物が傍に来るので、手を振ってみる。

それに気付いたのか、細い枝が左右に揺れた。

なんとなく、可愛い。

「凄いな」

「まあ、前からこんな感じだ」

ジナルさんとお父さんが、私の後ろで何か言っているけど今は気にしない。

だって、目の前に来た木の魔物から、小さな動物が顔を出したから。

「ココリス?」

本に乗っていた、小さな動物の代表のそうな存在だ。

たしか大人でも15㎝も無く、とても弱い動物だと書かれていたと思う。

それが木の魔物から顔を出した。

生い茂っている葉っぱの間から顔を出したココリスは、周りを見ると顔を引っ込める。

でも私達が気になるのか、また顔を出した。

「可愛い」

木の魔物は優しいけど魔物。

だから、動物は避けていたのを知っている。

なのに、どうしてこの木の魔物にはココリスが一緒なんだろう?

「数匹いるみたいだな」

「えっ?」

お父さんが指す方を見ると、別のココリスが顔を出していた。

そしてそのココリスの近くに、また別のココリスが顔を出してはすぐに引っ込んだ。

「本当だ。何匹いるんだろうね?」

「その2匹の傍にもう1匹いたから、最低4匹はいるな」

「4匹も!」

家族かな?

「それにしても、魔物の中でも強い木の魔物と動物の中で弱いココリスが、どうして一緒にいるんだろうな?」

それは不思議だよね。

いや、本当にそうかな?

「弱いココリスにとって、強くて優しい木の魔物は理想的な相手なのかも」

だって木の魔物と一緒にいたら、動物や魔物からは守ってもらえるもんね。

うん、考えたら木の魔物と一緒にいるのは、弱い動物にとっていい方法かもしれない。

「優しい木の魔物か」

「ぎゃ、ぎゃ」

木の魔物が鳴くと、傍で様子を見ていたジナルさんが少し下がる。

それにちょっと笑ってしまう。

「大丈夫ですよ。『喜んでいるみたい』なので」

「えっ?」

木の魔物に近付くと、そっと手を伸ばす。

「撫でていい? ついでにココリスとも、遊びたいな」

言ってみたけど、それは無理かな。

「ぎゃ」

撫でるのは。いいのかな?

「ありがとう」

そっと木の魔物の表面を撫でる。

うん、凄く硬くてごつごつしてる。

これは気を付けないと、私の手が傷つきそう。

「ぎゃ、ぎゃ」

んっ?

なんだろう?

「ぎゃ、ぎゃ」

「ごめん。よく分からない。でも撫でさせてくれてありがとう」

「ぎゃ、ぎゃ、ぎゃ」

「アイビー」

「どうしたの。お父さん?」

お父さんを見ると、なんとも言えない表情で私を見ていた。

それに首を傾げる。

「あ~、いや。手は大丈夫か? この木の魔物は、長生きしているようだから」

お父さんが木の魔物を見る。

きっと木の魔物の表面がゴツゴツしているから心配してくれたんだろうな。

「大丈夫。見て分かったから、そっと撫でたよ」

木の魔物は長生きすると、木の表面が硬くなりゴツゴツしてくる。

今、目の前にいる木の魔物はかなり長生きなのか、表面はかなり硬い。

「そうか。それならいいんだ」

お父さんを見る。

本当に、それが聞きたかったのかな?

「それにしても、どうしてここにいるんだ?」

セイゼルクさんが、そっと木の魔物に近付く。

でもちょっとだけ、間が空いている。

やっぱり怖いのかな?

「ククククッ」

セイゼルクさんの言葉に、反応するサーペントさん。

見ると、亡くなった仲間がいた方を見ていた。

「もしかして、さっきの子の魔法陣を解除しに来たのか?」

「ククククッ」

「ぎゃ、ぎゃ」

ラットルアさんの言葉に、鳴いて答えるサーペントさんと木の魔物。

「そうだったのか」

ジナルさんが、そっと木の魔物を撫でた。

「ありがとう」

ジナルさんの言葉に、木の魔物が枝を揺らす。

さわさわと動く葉っぱに、ココリスが驚いたのか顔を引っ込めた。

「ぎゃ?」

少し不安そうに鳴く木の魔物を見る。

「ぎゃ?」

ゆっくり枝を動かす様子に、ココリスが葉っぱから顔を出した。

「大丈夫。ココリスならちゃんといるよ」

「ぎゃ、ぎゃ」

おそらく、急に枝を動かしてしまったから、ココリス達を心配したんだろう。

本当に優しい子だな。

「ごめん、少しいいかな?」

シファルさんが、サーペントさんと木の魔物を見る。

「ぎゃ?」

「ククッ?」

「サーペントと木の魔物は、魔法陣を刻まれたサーペントの為にここに来たのか?」

「ククククッ」

「ぎゃ、ぎゃ」

あの子がここにいる事を知っていたのかな?

「もしかして、まだいるのか?」

えっ?

シファルさんを見ると、真剣な表情をしている。

「ククククッ」

「ぎゃ、ぎゃ」

今の鳴き方は、シファルさんの言った言葉を肯定しているよね。

つまり、魔法陣を刻まれたサーペントはまだいるんだ。

今もまだ、苦しんでいる子が。

「そうか。まだいるんだな」

「ククククッ」

「ぎゃ、ぎゃ」

「奴等は、それについては何も言わなかったな」

ヌーガさんが、サーペントの上にいる刺客達を見る。

「もう一度、聞くか?」

お父さんの言葉に、ジナルさんが少し考えこむ。

「いや、仲間を呼ぶよ。こんな場所より、道具が揃っているから」

道具か。

聞かなかった事にしよう。

「奴等から情報を聞けたら、サーペント達にも知らせたいな。何か方法は無いか?」

「ククッ?」

お父さんの言葉に、首を傾げるサーペントさん。

「そうだな、一番その情報を求めているのはサーペント達だろうからな」

ジナルさんの言葉に、木の魔物が枝をゆっくりと揺らす。

「カシム町に行って、情報を速やかに聞き出して、彼等に伝えるしかないだろう」

セイゼルクさんの言葉に、ジナルさんが苦笑する。

「まあ、その方法しかないか」

ジナルさんが、サーペントさんと木の魔物を見る。

「もしかしたら、何らかの情報があるかもしれない。でも、何も知らない可能性もある。それでもよかったら一緒にカシム町まで行かないか?」

「ククククッ」

「ぎゃ、ぎゃ」

サーペントと木の魔物の鳴き声で、ジナルさんに笑みが浮かぶ。

「ありがとう。となれば、すぐに仲間に連絡を入れるよ。村道に行こう。あそこで繋げた方が、安定するんだ」

ジナルさんが、村道に向かって歩き出す。

その後を、お父さんと私が。

その後ろをサーペントさんと木の魔物。

と言っても、サーペントさんは木の上を移動しているけど。

最後にラットルアさん達。

「なんだか……最強の集まりだね」

私の言葉に、ジナルさんが振り返り私達を見る。

そして笑い出した。

「最強というか、ありえない集まりだろう」

そうかな?

上にいるサーペントさんと、横をゆっくり移動している木の魔物を見る。

反対側にいるお父さんと、後ろにいるラットルアさん達も見る。

「ありえないかな?」

「いつか皆で一緒に旅をしたいな」と、思っていた。

だから、ありえなくはないと、思う。

村道に着くと、ジナルさんがカシム町にいる仲間に連絡を入れた。

移動に適した魔物をテイムしているテイマーがいるそうで、2日後に合流できる事が決まった。

あんなにのんびり移動していたのに、急ぐとなると6日後にはカシム町に着けるらしい。

「俺達もカシム町に向かって行くから」

「クククッ」

ジナルさんの言葉に、サーペントさんが彼を鼻で軽く押す。

そして、自分の背を見た。

「乗せてくれるのか?」

でも、既に刺客が乗っている。

大丈夫なのかな?

「ぎゃっ」

んっ?

「木の魔物も、乗せてくれるの?」

「ぎゃっ!」

私の言葉に、嬉しそうに鳴く木の魔物。

「合流は明日になりそうだな」

やる気を見せるサーペントさんと木の魔物に、ジナルさんが楽しそうに笑う。

「あっ、仲間にサーペント達の事を言い忘れた」

ジナルさんの言葉にセイゼルクさんが呆れた表情をする。

「それは、大丈夫なのか?」

確かに、迎えに来てもらってサーペントさんと木の魔物がいたらビックリするよね。

「まぁ、大丈夫だろう」

ジナルさんの言葉に、苦笑するセイゼルクさん達。

たぶん、大丈夫じゃないだろうな。