軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

805話 さて、下りよう

「ジナル、病気の子供達は何人だ?」

セイゼルクさんの質問に、ジナルさんが少し考えこむ。

それに首を傾げる。

「俺が知っているのは、11人だ。でもあの時は、子供達の情報が全て集まっていなかったからな。もう少し多いかもしれない」

「そうか、それなら少し多めに収穫していくか」

「あぁ、そうしよう」

2人の会話を聞きながら、ホリュスの実を見つめる。

皆がいるから、私が収穫する必要は無いみたい。

でも、1個ぐらいは採りたいな。

「アイビー、持ち上げるぞ」

「えっ?」

ラットルアさんの言葉を理解する前に体が持ち上がる。

慌てて、腰を支えるラットルアさんの腕を掴む。

「大丈夫だと、落とさないから」

「うん。分かっていはいるんだけど」

「ふふっ」

「えっ? 何?」

「いや、話し方が少しずつドルイドと同じになっているのが嬉しくてさ」

あっ、そういえばいつの間にかお父さんと同じような返し方になっているかも。

「まだ、前の言い方と混ざっているけどな。ほら、それを収穫するんだろう?」

ラットルアさんが見ている方向には、私が見ていたホリュスの実。

「うん。ありがとう」

手を伸ばし実を掴んで、少し捻る。

ヌーガさんの話では、それで実が採れるらしいから。

「……んっ?」

捻ったけど、採れない?

反対に捻ってみようかな。

……全く採れる気がしない。

「あはははっ。ヌーガだから採れたんだな」

悔しい、力が足りない!

ヌーガさんの腕を見る。

はぁ、無理だ。

「ラットルアさん、私には無理みたい。採って下さい」

「良いぞ」

ラットルアさんは私を下ろすと、ホリュスの実に手を伸ばしプチっと採った。

やっぱりラットルさんも簡単に採るよね。

「はい」

ホリュスの実を受け取ると、上から抑えられた笑い声が聞こえた。

見ると、ラットルアさんが笑いながら謝って来た。

「笑ってごめん。いや、アイビーが凄く悔しそうな表情をしていたから」

頬を押さえる。

確かに、簡単に採ったからちょっとだけ、そうちょっとだけ悔しいなって思ったんだよね。

「まぁ、すぐに採れるようになるよ」

「そうかな?

ラットルアさんの腕を見て、自分の腕を見る・

……すぐには無理かな?

「おっ、アイビーも採ってくれたんだ」

ジナルさんが、私の手に握られているホリュスの実を見る。

「採ったのは、ラットルアさんだけど」

「いや、一緒に採ったよ」

ラットルアさんの言葉に笑みが浮かぶ。

「はい」

ジナルさんにホリュスの実を渡すと、クシャっと頭を撫でられた。

「ありがとう」

ホリュスの実を30個収穫し、少し休憩する。

「あれ? ソラ達は?」

休憩を始めると、セイゼルクさんが私の周りを見渡す。

「今はバッグの中です。ここの崖は高いので」

私の説明に、首を傾げるセイゼルクさん。

「あの、ソラとフレムがきっと崖から飛び出すので」

あの2匹は、遊び出したらちょっと無謀な事でもやってしまう。

前も崖から、楽しそうに飛び出しそうになってお父さんと私が慌てて止めた事がある。

だから、崖の上ではバッグから出さないと決めた。

あの時は、本当に怖かった。

「そうか。ソラとフレムか。確かにあの2匹は色々やらかすからな」

ラットルアさんの言葉に、バッグが微かに動いた。

話を聞いて、ソラかフレムが怒っているのかも。

それに小さく笑って、ポンポンとソラ達が入っているバッグを軽く撫でる。

「さて、ここでの用事も終わったし……崖を下りようか」

そうだった。

この崖は登ったら、下りないといけないんだ。

周りの森と繋がっていないからね。

全員がため息を吐くと、準備を始めた。

登りよりは、くだる方が楽かな?

いや、落ちないように縄を掴む手は酷使するから楽では無い。

「頑張ろうな」

「うん」

お父さんの言葉に頷くと、気合を入れて縄を掴んだ。

崖下の地面に足が付くと、全身から力が抜けその場に座り込む。

登りも怖かったけど、下りはもっと怖かった。

「まさか、途中で強風が吹くなんてな」

シファルさんの言葉に、全員が無言で頷く。

崖を下り始めてしばらくすると、風が吹き出した。

そして、崖の真ん中あたりで風が強風に変わって、体が風に何度も浮き上がった様な感覚に襲われた。

あまりの恐怖に、手から力が抜けそうになって慌てて縄を握り直した。

そんな経験を何度かして、ようやくついた地面。

足が地面についている事が、こんなに幸せだなんて。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃない。全身が震えてる」

「そうか。でも、ここから移動しないとな」

お父さんが私の前に手を差し出す。

それに掴まて立ち上がると、息を吐きだした。

「そうだね」

ここは森の最奥。

魔物の気配があちこちでする危険な場所だ。

「もう少し頑張れるか?」

ジナルさんの言葉に頷くと、笑みを見せる。

大丈夫。

まだ歩ける。

「行こうか」

セイゼルクさんの言葉に、シエルを先頭に歩きだす。

ソラ達は、もう少し安全な場所になってからバッグから出そう。

「げっ」

ジナルさんの声に、視線を向けると木の魔物が見えた。

全員が、さっと木の魔物から距離を取る。

「森の奥の魔物は異様な強さを持っている物がいるが、この魔物はそれだな」

私達を助けてくれた木の魔物とは違う事は、見てすぐに分かった。

なぜなら目が真っ白で、全身から黒い煙のような物が溢れていたから。

セイゼルクさん達が武器を持って、構える。

私は邪魔にならないように、周りを見て安全な場所を探す。

ただ、ここは森の最奥なので安全な場所が何処か分からない。

しかも森全体を魔力が覆っているため、魔物の位置も把握しづらい。

「に゛ゃ~」

シエルが威嚇すると、木の魔物が少し体を引いた。

でも逃げようとはしない。

やはりこの木の魔物は、相当に強いんだ。

バタン、バタン。

シエルが苛立ったように尻尾を地面に叩きつける。

すると、微かに地面が揺れたような気がした。

まさかと思ったが、周りの木々から葉っぱがハラハラと落ちてくる。

バタン、バタン。

シエルの苛立った気配に気付いたのか、木の魔物がそっと後退し始める。

それに気付いたシエルが、1歩木の魔物に近付く。

ずずっと、交代する木の魔物。

また1歩前進するシエル。

「これは勝負があったな」

「そうだな。良かった」

ジナルさんの言葉に、セイゼルクさんが安堵の息を吐きだした。

「さすがにあの木の魔物は、俺達ではかなり大変だったから」

やっぱりそうとう強いんだ。

その木の魔物が、シエルに怖がって逃げているけど。

「に゛ゃ~」

さっきより低い威嚇の鳴き声に、木の魔物が森の奥に逃げて行く。

それを追うシエル。

「追いかけて大丈夫かな?」

「まぁ、大丈夫だろう」

私の言葉にお父さんが答えてくれるけど、あの木の魔物も強いみたいだし。

もしもという事が。

「に゛ゃ~」

「にゃ~」

んっ?

鳴き方が変わった。

「追い掛け回して楽しくなったんだな」

ジナルさんの言葉に、やっぱりと思ってしまう。

だって最後の鳴き方は、機嫌がいい時によく聞く鳴き声だったから。

しばらくすると尻尾を楽しそうに揺らしたシエルが戻って来た。

その満足そうな表情に、ジナルさん達が笑ってお礼を言う。

「シエル、助かったよ。ありがとう」

「にゃうん」

シエルが傍に来たので、ギュッと抱きしめる。

強いと分かっても、やっぱり心配だったから。

「おかえり」

「にゃうん」