軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

765話 1ヶ所だけ

朝食の時、予想よりも雪が積もらなかったとシャンシャさんが教えてくれた。

その情報にホッと安心する。

今日は仕掛けた罠を見に行く予定だから、雪の積もり具合が心配だったのだ。

積もった雪の上を歩いた事はあるけど、あれは本当に大変だったから。

朝食後の休憩中に、宿「バーン」にクラさんが来た。

罠を見に行くからなのか、いつもよりちょっと興奮した様子のクラさんにシャンシャさんが驚いていた。

宿を出ようとすると、シャンシャさんに手袋を着けるように言われた。

確かに、今日のように寒い日には必要だ。

森に向かっていると、いつもより歩く速度が早い事に気付く。

少し前を歩くクラさんの速度が、いつもより早いようだ。

罠の結果が、早く知りたいんだね。

村から出て、一番近い場所に仕掛けた罠を確かめる。

「「やった~」」

罠に掛かったバトを見て、クラさんと一緒に叫んでしまった。

「まさかバトが罠に掛かるとは思わなかったな」

お父さんが、罠のカゴからバトを出して絞める。

本当だよね。

ノットを狙ってバトが狩れるなんて、嬉しい誤算だね。

「バトは珍しい。狩った日は特に美味しい」

狩った日は美味しい?

どういう意味だろうとクラさんを見ると、彼はお父さんを見ていた。

なんだか、凄く期待した目をしているような気がする。

「このバトを、食べたいのか?」

「うん。狩った日のバトは、食感が違う」

そうなの?

バトの煮込み料理を食べたけど、肉がトロトロで美味しかった。

あの食感とは違うの?

「確かに気になるね」

「うん」

私とクラさんに見つめられたお父さんが苦笑する。

「分かった。今日の夕飯に食べようか。バト1匹ぐらいなら、増えても食べきれるだろう」

いや、いつもの夕飯に足すのはどうだろう?

かなりしっかりした量の夕飯が出ているんだけど。

「夕飯にバトを食べたい事は、夕飯の準備をする前に言った方がいいと思うよ」

作っている側からすると、急に増やされるのは嫌な気分になるかもしれない。

「それもそうか。村に戻ったら一度宿に戻ろうか」

「うん。それが良いよ」

村に戻ったら、そのまま道具屋に行くつもりだったけど予定変更だね。

「他の罠も見に行くか。その前に、このカゴだけどまだ使えそうだよな」

お父さんが、バトが掛かった罠に使ったカゴの強度を確かめるため、カゴをぐっと抑え込む。

ギュッと音がするが、特に凹むような事もなく、まだ十分使えそうな強度の様だ。

「これなら、もう一度使えそうだな」

雪が降っても積もらない場所を探すと、折り重なった岩の間に適度な空間を見つけた。

地面にはノットの足跡もある。

「いい場所だな。ここにしよう」

お父さんの言葉に、皆で罠を仕掛けていく。

小枝や葉が雪で濡れていたので、罠を隠すのに少し手間取ったけど、無事に完成。

「よしっ、出来たな。それじゃ、次に行こうか」

お父さんの言葉に、シエルが先頭になって罠がある場所へ歩き出す。

しばらく歩くと、罠を仕掛けた場所に着いた。

「あ~、駄目だ」

クラさんの落ち込んだ声に、ポンポンと肩を軽く叩く。

視線の先には、雪に埋もれてしまった罠が見えた。

「この場所は、風の影響で周りの雪を集めたみたいだな」

お父さんの言葉に、罠を仕掛けた場所と周辺を見比べる。

確かに、罠を仕掛けた場所に雪が一番積もっている。

冬は、風の流れも考えて罠を仕掛けないと駄目なようだ。

難しい。

「カゴが大丈夫だったら、新しく罠を仕掛けようか」

お父さんが、雪の中から罠を出すとカゴをぐっと押した。

「大丈夫、使えそうだ」

クラさんがお父さんからカゴを受け取ると、同じようにぐっと押している。

使えるカゴの強度を、覚えようとしているのかな?

「次の罠はどこがいいかな?」

周りを見て雪が積もっていない場所を探すが、全体的にこの場所は雪が多い事に気付く。

どうやら、雪が集まりやすい場所のようだ。

「この場所は諦めて、他の場所を探そうか」

お父さんの言葉に、罠を仕掛けた次の場所に移動する。

途中で、雪の上にノットの足跡を見つけた。

しかも、足跡の数から数匹分だと分かる。

「この近くに……あそこは、どうかな?」

お父さんが、周りを見て大木を指した。

見ると、大木の枝が雪を防いでいる場所があった。

「あっ、ノットの足跡がある」

クラさんの傍に寄って、足跡を確かめる。

「雪の上で見た足跡より、多いね」

「うん」

この場所は、ノットの通り道になっているみたいだ。

前回は見つけられなかったけど、罠を張るのに最適な場所だと思う。

「ここで、大丈夫そうだな」

足跡の向きなどから、罠の向きを決めて仕掛ける。

「完成。指先は大丈夫か?」

お父さんの言葉に、手袋をはめた指先を動かす。

手袋のお陰で寒くないし、冷えで痛みに襲われる事もない。

「大丈夫」

「うん」

クラさんも指を動かしながらお父さんを見た。

「よしっ、次に行こうか。あっ、雪が積もると景色が変わるから、目印になる紐を結んでから行こうか」

お父さんの言葉に、罠を仕掛けた傍の木に赤い紐を結ぶ。

あれ?

最初の罠には、目印を結んでないよね。

「お父さん、最初の罠はどうするの?」

「帰りに結んで行こうな」

お父さんを見ると、笑って肩を竦めた。

どうやら、目印をつける事を忘れていたみたい。

「ここで最後だな」

3個目の罠は、雪に埋もれて失敗。

最後の罠は、大きな動物か魔物が通ったのか潰されていた。

「最初の罠だけだったね」

クラさんが残念そうに言う。

「仕方ないさ。バトが狩れただけ良かったんだよ」

お父さんがポンとクラさんの頭を撫でる。

クラさんは、ちょっと残念な表情をしながらも頷いた。

「バトを解体してから、帰ろうか」

お父さんの言葉に、川を探す。

まだ川は凍ってはいないと思うけど、この時期の水は本当に冷たい。

そのため、解体作業がつらい時期でもある。

それでも、解体しないと美味しく食べられないから、頑張ろう。

「いた~い」

なんとか解体を終わらせたけど、指先が痛い。

さすがに解体中は手袋を外すからね。

指先に息を吹きかけるが、痛みが引かない。

手袋をはめても、指先は冷えてしまっているので、なかなか温まらない。

「アイビー、こっち」

解体場所から少し離れた場所に火を起こし、マジックバッグから飲み物を出す。

冬の解体は寒いので、すぐに飲めるように温かい飲み物を準備してきたのだ。

温めたミルクを飲む。

少し甘味を入れているのが、今は嬉しい。

「「「はぁ」」」

その温かさに、皆でホッとする。

「体が温まったら、戻ろうか」

「「うん」」

焚き火にあたっていても、寒いからね。

温めたミルクを飲み終わると、火を消し村に戻った。

途中、最初の罠の傍に目印の赤い紐を結んだ。

忘れていたけど、帰り道だったので思い出す事が出来た。

良かった。

「お帰りなさい」

「「「ただいま」」」

門番さんに挨拶をして、村に入る。

今日はかなり冷えるので、大通りも人が少ないみたいだ。

宿に戻ると、店主のバトアさんが迎えてくれた。

「お帰り、早いな。寒かったのか?」

「ただいま戻りました。少し夕飯の時に追加して欲しい物があって、戻って来たんです」

お父さんの言葉に、バトアさんが首を傾げる。

「これを、今日の夕飯に出してもらえますか?」

マジックバッグから、パナの葉で包んだバトの肉を出す。

バトアさんは、中を確かめると少し驚いた表情をした。

「これはバトの肉だな? 罠に掛かっていたのか?」

凄い。

肉を見ただけで、分かるんだ。

「うん。掛かってた」

クラさんが嬉しそうに報告すると、バトアさんが優しい目をしてクラさんを見る。

「良かったな。今日の夕飯という事は、食感を生かした料理が良いな」

バトアの言葉に、クラさんが何度も頷く。

その行動に笑ったバトアさん。

「任せとけ。バトの料理は得意だ」

今から楽しみだな。