作品タイトル不明
706話 超レアのマジックバッグ
「ありがとう、助かるよ」
お父さんがウルさんからマジックバッグを受け取る。
「あと、このマジックバッグも付いてくるから」
ん?
マジックバッグもくれるという事かな?
「えっ? でも、このマジックバッグは……」
お父さんが驚いた表情でウルさんを見る。
どうしたんだろう?
「お父さん、そのマジックバッグに何かあるの?」
「あぁ、これは超レアのマジックバッグだ。容量が桁違いで、付与している機能が他の物とは別格なんだ」
えっ、そんなにいいマジックバッグを貰えたの?
でも、どうして?
「団長から、『洞窟内の事は極秘の為、謝礼金を渡す事が出来ない。だから、役立ちそうな物を贈らせてもらった。不要の場合は、金に換えてくれ。良い値になるぞ』と言う事だ。洞窟で起こった事は、かなり重要らしい。なんせ、上の数人と直属の部下しか情報を共有していないんだから。あっ、俺も知らされてないから、言わないでくれ」
そうなんだ。
ウルさんにも内緒なんだ。
でも、木の魔物が魔法陣を無効化する事は、そんなに極秘にしないと駄目なのかな?
「分かった。それにしてもどうして謝礼金で渡せないんだ?」
確かに、変だよね。
「昔、極秘に支払われた謝礼金を狙った自警団員や冒険者がいて被害が出たらしい。その事があってから、極秘にお礼をする場合は、物品で贈られるようになったんだ」
だから、マジックバッグなのか。
まぁ、超レアのマジックバッグみたいだから、充分過ぎるお礼な気もするけど。
「分かった。『ありがとう』と伝えておいてくれ」
「分かった」
お父さんがマジックバッグから、マジックアイテムを取り出して苦笑する。
「これは、本当にゴミなのか?」
ん?
お父さんが手に持っているマジックアイテムを見る。
大きな傷が付いているので、捨てられた可能性が高いけどな。
「この村の問題なんだよ」
ウルさんの言葉に、首を傾げる。
「この村の冒険者は、洞窟にいけば幾らでもマジックアイテムが手に入る。だから、まだ使えるのに捨ててしまう。まぁ、ひどい場合は洞窟への出入りが禁止されるんだけどな」
つまり、いくらでも手に入るからマジックアイテムを大事にしていないという事か。
確かにその問題は、洞窟をたくさん持っているこの村ならではだろうな。
「それで、足りそうか?」
ウルさんの質問に苦笑するお父さん。
「あぁ、問題ない。この1個のマジックバッグで今使用している全てのマジックバッグの容量より多いからな」
「えっ。そんなに?」
お父さんが使っている5個のマジックバッグより、その1個のマジックバッグの方がいっぱい入れられるの?
本当に桁違いの容量が入るんだね。
「アイビー、たぶん誤解をしている」
ん?
お父さんが持っている5個のマジックバッグでは無いの?
全てのマジックバッグと言ったよね?
「全てとは、俺とアイビーが持っているマジックバッグと言う意味だ」
……お父さんの5個のマジックバッグと私の5個のマジックバッグ?
「凄い。本当にそんなに入るの?」
「ほらっ」
お父さんから、団長から貰ったマジックバッグを受け取る。
マジックバッグの面白い所は、持つと中身がわかるところだよね。
あっ、本当に中に入っているゴミの量が凄い。
これだけあれば、ソルが大満足できる量をあげる事が出来るかも。
いつも、ちょっと我慢させているからね。
「ありがとうございます。とっても助かります。皆も喜ぶと思います」
「そうか。そう言ってくれたら、頑張ってゴミを拾って来たかいがあったよ」
あっ、そうか。
マジックバッグの容量が多いという事は、いっぱいゴミを拾わないと駄目という事だ。
手に持っているマジックバッグを見る。
中身は限界まで詰まっている。
かなり頑張ってゴミを拾ってくれたみたいだ。
「ウルさん。ありがとうございます」
大変だっただろうな。
「どういたしまして。あと4個あるから」
こんなに沢山入るマジックバッグが5個か。
これ1個、いくらの値が付くんだろう。
団長さんが「良い値になるぞ」と言うからには、凄い値段が付くんだろうな。
「本当に5個もいいのか?」
「団長から直接俺が受け取ったから間違いない。それだけ洞窟内での事が重要だったという事だ」
ウルさんの言葉に、少し疑問が浮かぶ。
本当に木の魔物の事だけで、このマジックバッグなのかな?
でも、他に思い当たる事は無いし。
いや、もしかして魔法陣かな?
誰もいないのに魔法陣が描かれた問題に、何か進展があったのかもしれない。
そしてそれが、凄く重要だったのかも。
……その可能性が、あるような気がしてきた。
でも、これはきっと聞かないほうがいい事だろうな。
「どうした?」
ウルさんが不思議そうに私を見るので、笑みを浮かべる。
「さっそく皆に、いっぱいご飯をあげようかなって思って」
うん、すぐに皆にいっぱい食べてもらおう。
特にソル。
ちょっと量を減らしていたからね。
「そうか」
同じような笑みを浮かべたウルさんが、私の頭を撫でる。
あっ、誤魔化したのがバレてるね。
「ウル。仕事はいいの?」
「あぁ、昨日のうちに終わらせてきた。ミッケも何か依頼を受けていたよな?」
「そうだ、聞いて! どこかの馬鹿な貴族が、頭のちょっと足りない冒険者の噂話を鵜呑みにして、リュウの子玉を狙ったのよ」
あれ?
それって、この村に来る前に関わった問題だよね?
「実はね。この村から森の奥にずっと行くと、リュウの住処があるのよ。いつからそこに住んでいるのかは全く不明なんだけど。で、下手に関わって怒らせでもしたら、村が滅ぶから見守る事になっているわけ。それなのに! リュウの子玉を持ち去ったらしいのよ。持ち去った冒険者達は全員死亡が確認されたんだけど。子玉は割れていて、中の子供がどうなったのかは分からないのよね」
あれ?
リュウの子供は親のリュウと飛び去ったよね?
ウルさんとアリラスさんが、冒険者ギルドにちゃんと報告をしているはずだけど。
お父さんを見ると、情報が正しくないからか険しい表情をしている。
「その子供なら、無事に親のリュウと合流して森の奥に帰っていったぞ」
「えっ?」
ウルさんの言葉に、驚いた表情を見せるミッケさん。
「報告は冒険者ギルドにしたんだが」
「それは、本当?」
ミッケさんがお父さんを見る。
「あぁ、ウルとアリラスが報告している」
お父さんが頷くと、ミッケさんがニコリと笑った。
「こっわ」
ウルさんの小さな言葉に、つい頷いてしまいそうになるが、耐える。
でも、本当に凄い迫力がある。
「ふふっ。そう。情報が途中で変わったみたいね。ふふっ、誰が変えたんだろう? すっごく気になるよね。ウル?」
「そ、そうだな」
ウルさんがお父さんを見るが、そっと視線を逸らされている。
うん、その気持ちは凄く分かる。
「ウルさん。誰に報告をしましたか?」
ミッケさんの今の笑顔で丁寧に聞かれると、なんだかぞくっとした寒気に襲われる。
しかも、ウルさんの事を「さん」付けしたよね。
こんな怖いさん付けは初めてだな。
「冒険者ギルドの受付に軽く話したら奥に通されて、詳しく説明した。その時に、死んだ冒険者の事を詳しく聞かれたので、死んだ奴が持っていた契約書を渡したんだ」
「そう、なるほど。ふふっ、受付長かな? それとも冒険者ギルド1階の管理室長かな? どっちが貴族に跪いたんだろう? 私、ちょっと2人に聞いてくるわね」
聞いてくる?
ミッケさんを見ると、本当に楽しそうに笑っているのが分かった。
「さてと、どうやって話を聞こうかな? やっぱり最初は、素直になってもらう事から始めないとね」
どうやって?
いや、知りたくないし知る必要はないです。
「行ってきます」
「「「行ってらっしゃい」」」
誰かは知らないけど、すぐに素直になった方が良いよ。
絶対に。