軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 引き継ぐ者2

―ガバリ団長視点―

大切な娘、ミッケ。

この子は、小さい頃から周りとは少し違った。

それを実感したのは、5歳の娘が言葉巧みに大人から欲しい情報を聞き出していたのを見た時だ。

そんな娘を褒めながら、俺は怖くなった。

いずれ彼女が、俺の入っている組織に入り、そして魔法陣に関わる事になるのではないかと。

本当なら6歳を迎える頃に、病弱の設定は終わるはずだった。

でも、俺の勝手な判断で引き延ばした。

少しでも、魔法陣から引き離したくて。

それなのに彼女は、限られた中で最大限の力を発揮し続けた。

病弱である事を上手く利用し、村を守り仲間を守った。

いつの間にか組織の存在に気付き、気が付けば仲間の1人になっていた。

驚く俺に「これが、私の人生よ!」と力強く言われた時は、苦笑してしまった。

やはり、こちら側に来てしまったと。

それでも魔法陣の事を話す勇気は無かった。

魔法陣はこの世界にとって、悪だ。

魔法陣のせいで、どれだけの人間が命を落としたか。

魔法陣に魅入られ、壊れた者達の最後がどれほど悲惨か。

娘だからではなく、若い世代を巻き込みたくなかった。

魔法陣に関わって壊れた仲間を、沢山知っているから。

でも、そろそろ話さなければならないとは思っていた。

ミッケはそれほどに有能すぎた。

組織が隠している事さえ、いつの間にか調べ上げているんだからな。

しかも、組織の人間にさえ知っている事を悟らせないのだ。

これほど出来る部下はいない。

だから、この村が最も警戒している事が何かを教えなければならない。

そのためには魔法陣の事を理解し、教会が隠している「化け物」の事を知る必要がある。

「魔法陣の事を調べなかったのか? ミッケなら調べられただろう?」

ミッケの調査能力は、異常だ。

調査スキルは持っていないのにも拘わらず、スキル持ち以上の事をしてしまう。

そんな彼女だから、組織が隠している魔法陣の事も実は知っているのではないかと思っていたのだが。

どうやら、本当に知らないみたいだ。

いや、ミッケが隠すと決めた事なら俺には見破れないかもしれない。

「父さんが本気で隠そうとしていた事だから、調べなかった」

俺の態度で、そう判断したのか。

「そうか」

でも、調べようと思えば調べられたんだな。

なんというか、俺の娘ながらちょっと恐ろしいよな。

「それより父さん。出来ない事は無いってどういう事?」

「そのままの意味だ。魔法陣を使えば、ほんとになんでも出来てしまうんだ。ただし、世界の理に反する事をする場合は、代償が必要となる」

真剣に考えているミッケを見て、ホッとする。

魔法陣に興味を持たれては困る。

これまでの経験上、そういう者は魔法陣に囚われやすい。

「前に組織は、『この平和を守る事を目的にしている』と言ったんだけど覚えているか?」

数時間で魔法陣の事を説明するのは無理だから、とりあえず組織の目的について話そう。

あと、奴の事も。

「うん。覚えている」

組織を完全に隠す事は不可能。

多くの者が関われば、必ず情報は洩れてしまう。

だから、もしもの時に必要な大義名分。

つまり表立った理由が「平和を守る」だった。

「でも組織の目的は、平和な世界を守る事ではない。まぁ、結果的にはそうなるが」

俺の言葉に静かに頷くミッケ。

何かを知っているのかもしれないな。

「組織の本当の目的は、教会に隠れている『化け物』を殺す事。そして魔法陣をこの世界から排除する事だ」

俺の言葉に首を傾げるミッケ。

「化け物って?」

ん?

化け物の事は、知らないみたいだな。

まぁ、教会の事を調べても簡単には出てこないからな。

「教会を裏で牛耳っている人物だ。その人物の指示で、事件が起こっている可能性が高い。俺は、奴が人だとは思っていない」

俺の言葉に眉間に皺を寄せるミッケ。

それに苦笑して、指で眉間を押す。

可愛い顔が台無しだ。

「人じゃないの?」

「奴は、魂を移動させる魔法陣を利用して、遥か昔からずっと生き続けている。そんな事をする者を人だとは思えない」

「魂を移動?」

「そうだ。今の体が限界に来ると、魔法陣の力で若い体に魂を移動させるんだ」

「えっ…………何それ」

俺の言葉に顔を歪めるミッケ。

「そんな事が、本当に出来るの?」

神妙に頷く俺に、ミッケが嫌そうな表情をする。

「気持ち悪いね」

「そうだな。人の体を乗っ取るなんて気持ち悪いよな」

「想像以上に、魔法陣は色々な事が出来てしまうみたいね。……待って、理に反する事には代償が必要だって言ったよね? 魂を移動させた時の代償は何?」

「人の命だ。奴の命を繋げるために、どれだけの命が失われたのかは不明だ」

魔法陣が理に反する事に使われれば使われるほど、犠牲になるのは全く関係のない者達の命だ。

これまで、どれだけの命が魔法陣によって失われたか。

「魔法陣は、使用する者だけが狂う訳ではないんだ」

「あぁ。組織は、この化け物を殺す事を最も重要だとしている。奴が死ねば、教会はかなり弱体化するだろうから」

ただし、奴の後釜がいない場合なんだよな。

今までの調査では、奴に子供はいないしそれらしき後継者もいないとなっているが。

そこだけが心配だ。

あと、魔法陣。

研究が思うように進んでいないらしい。

なるべく早く、魔法陣を排除する方法が見つかればいいが。

「組織の目的は分かった。魔法陣の恐ろしさも少し分かったと思う」

ミッケの様子を窺う。

今までの話で、魔法陣に異様な興味を抱いてはいないかどうか。

大丈夫みたいだな。

良かった。

「今はゆっくり話す時間は無いんでしょう? また時間を作って組織や教会、魔法陣について教えて」

ミッケの言葉に首を傾げる。

今は、時間が無い?

まぁ、組織や教会の事を説明するには、長い時間が必要だからな。

「分かった」

俺が頷くと、ミッケが嬉しそうに笑った。

「えっと、そうだ! 空間移動の事だ!」

あっ、そうだった。

ミッケに言われるまで忘れているとは、失態だな。

空間移動が使われている可能性があるから、早急に調べる必要があるのに。

「えっと、とりあえず……全ての洞窟内を調べる必要がある。ただし、内密にだ」

空間移動を成功させるためには、出現させる場所を決める必要がある。

それを決めていないと、ありえない場所に出現させてしまう事があるらしい。

「内密に何を調べるの?」

ミッケが首を傾げる。

「この紙に描かれている魔法陣と似た魔法陣が、洞窟の壁に無いか確認したいんだ」

ミッケから返してもらった、座標を確定する魔法陣が描かれている紙を机の上に置く。

「もしかしてこの魔法陣がある場所に、移動してきた空間は出現するの?」

「そうだ。今の空間移動がどうなっているかは不明だが、前はこの魔法陣が必要だった」

組織から、特に変更の連絡は来ていない。

細かい違いはあるようだけど、今も座標を確定する魔法陣が必要のはずだ。

「洞窟を全部か……全部かぁ」

ミッケが嫌そうな表情をする。

そうなるのも分かる。

洞窟の数が数だからな。

しかも、洞窟内では襲って来る魔物の対応をしながら魔法陣を探し回る事になる。

凄く、面倒だ。