軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

697話 特殊な鍵

「ふふっ。さてと、今からあなたをどうしようか?」

楽しそうに笑いながら、男性を見るミッケさん。

男性は、笑って見られているだけなのに、恐怖からなのか震えている。

ガバリ団長さんの家族を狙っている以上は、それなりの覚悟を持っているのだろうと考えたけど違うようだ。

「これも……どうする?」

「あっ! 返せ。それは俺の家が代々受け継いでいる大切な家宝だ! お前ごときが手にしていい物ではない!」

ミッケさんが持っている物に手を伸ばす男性。

恐怖に震えているのに手を伸ばすという事は、ミッケさんが持っている物は彼にとってかなり大切な物らしい。

「家宝ね。それはそうよね。これは家のある場所に入るために必要な鍵。あの扉の向こうにはいったい何があるの? 今まで犯してきた犯罪の証拠? それとも、村や町から連れ去った子供たちの遺体? 確か2代前の当主は、収集家だったよね。遺体の」

えっ、本当に?

傍にいるガバリ団長さんを見ると、視線に気付いたのか頷いてくれた。

うわぁ。

「気持ち悪いな」

アリラスさんの小さな声に、全員が無言で頷く。

「な、な、な……」

知られているとは思っていなかったのか、男性が目に見えて狼狽えだす。

さっきまでは、ミッケさんが持っている扉を開ける鍵?でいいのかな。

それに手を伸ばしていたのに、今では逃げようとしている。

でも、ガバリ団長さんもいるから逃げられないと思うよ。

あれ?

森の中に、周りと同調していて分かりづらいけど人の気配がする。

男性の仲間が来たのかな?

あっ、ミッケさんが囲まれている!

「大丈夫だ」

周りを見回していると、ガバリ団長さんに軽く肩を叩かれた。

彼を見ると、誰かに合図を送っているのが分かった。

その合図とともに、周りで動いていた気配が止まる。

もしかして、ミッケさんを囲うようにいる気配はガバリ団長さんの仲間?

「自警団員か? それにしても、気配が薄いな」

お父さんが感心したように、ガバリ団長さんを見る。

「俺の部下だ。俺が直々に鍛え上げた奴らだ」

自警団員さん達だったのか。

それにしても気配が本当に読みにくい。

「団長直々に?」

お父さんが、少し驚いた表情でガバリ団長さんを見る。

普通は、無い事なのかな?

「そう。奴らは鍛えればもっと強くなると思ったからな」

つまり、ガバリ団長さんが認めた人達という事だね。

どんな人達がいるのか、気になるな。

「俺は知らない!」

ん?

気配に気を取られて、話を聞いてなかった。

いったい、何があったんだろう?

ミッケさんと男性に視線を戻すと、男性が頭を抱えている姿が目に入った。

「俺は知らなかった。そうだ、俺が当主になったのは2年前だ。だから俺は関係ない!」

「あははっ、嘘つきだね。この2年で、君の領地から子供14人が忽然と消えたよね。その子供達は何処にいったんだろう?」

「そんな事は知らない! 俺は関係ない!」

かなり焦っている様子だから、関わりがあるのだろうな。

14人の子供か。

嫌な予感がする。

「はぁ、2年の間に金を使いまくって国に納める金にも手を出したお馬鹿さん。奴隷商に子供たちを売ってお金を作ったよね。もしかして覚えてないのかな? 自分のやった事なのに?」

お金のために、子供達を奴隷商に売ったんだ。

なんて奴だろう。

「知らん、俺には関係ない」

「奴隷商の方に、売買書類が残っているから知らないでは済まされないよね。しっかり君の署名付きだったし。そうだ! まずは私の仲間にあの扉の向こうに行ってもらわないとね」

「えっ?」

バキッ。

ミッケさんの手の中にあった鍵から、潰れる音が聞こえた。

男性は、唖然とミッケさんの手を見つめている。

「壊れちゃったね。これで、扉は開いたかな。もちろん、扉の奥にある証拠は全部貰っていくね」

「なんで? なんで壊れたんだ? いや、どうして触れたんだ?」

ミッケさんが持っていたのは、もしかして特殊な機能の付いたマジックアイテムだったのかな?

「レア物か」

お父さんの言葉にガバリ団長さんが、頷く。

「奴の家に代々伝わる、隠し部屋の鍵となるマジックアイテムだ。あの鍵のせいで、部屋に入る事が今まで全く出来なかった。しかもあの鍵は、持ち主の方から触れた者にしか触る事が出来ないから、無理やり奪う事も出来なかったんだ」

えっ、触れない?

ミッケさんはたった今、握りつぶしたけど。

……あっ、倒れていたミッケさんに向かって男性は手を出していた。

私からは、見えなかったけど手を取っていたのかも。

「だから病弱設定だったのか?」

あぁ、なるほど。

「いやそれは、たまたま」

……たまたまなんだ。

それにちょっと驚くね。

「奴の母親は、本当に頭が良くて全く尻尾を掴ませない人物だった。それでも何とか奴らを追い詰める証拠を集めてきたが、家を完全に潰すだけの証拠が掴めなかった。本当に頭の回る人物で、絶対に逃げ道を作っていた。しかも重要な証拠や歴代の当主の犯罪の証拠は、あの鍵で守られた部屋にある。どうにか鍵を壊したいが、触る事も出来ないからずっと機会を待つしかなかった。あの鍵、持ち主の意識が無くても、触れなくなるんだ。本当に厄介な機能だよ」

凄いマジックアイテムだったんだ。

「母親を処理……じゃなくて、急死したから機会は来ると思った。当主になった息子は想像以上に残念だったからな」

うん、聞こえなかったです。

母親の急死で、新しい当主になった彼はとても残念だった。

「子供達は?」

「奴が奴隷商と接触をもった事が分かったから、見張らせた。子供たちは全員保護して、親と一緒に隠れてもらっているよ。奴隷商は違法に子供を手に入れた事で、既に奴隷落ち。まぁ、奴が捕まると同時に捕らえられる事になっているから、今は内緒だけどな」

良かった。

子供たちは、無事なんだ。

それにしても、凄い準備万端だね。

「うわぁ」

あっ、逃げた。

「あぎゃ」

そりゃ、すぐに捕まるよね。

目の前まで、自警団員が来ていたんだから。

というか、見えてなかったの?

彼らは、隠れる事を止めて姿を見せていたのに。

「あれは次男なんだ。母親は長男を当主にする予定だったんだが、奴が当主の座を欲しさに長男を殺した。母親はそれを知っていながら、目をつぶって知らないふりをした。さすがに我が子を始末する事は出来なかったみたいだ。そのお陰で、奴らの家を潰せる。親子の絆を優先させたのが、母親の最大の失敗なんだろうな」

親子の絆か。

ちょっと複雑な気持ちになるな。

「離せ! 俺を誰だと思っている」

男性の声に視線を向けると、自警団員に捕まっている姿が見えた。

「俺は伯爵だぞ。こんな事をしてただで済むと思うなよ」

なんというか、情けない姿だな。

病弱に見えたミッケさんには凄く横暴だったのに。

「お父さん! 隠れてないで出て来たら?」

あっ、ガバリ団長さんが隠れている事をミッケさんは気付いていたのか。

ガバリ団長さんと一緒に、隠れていた場所から出ていく。

「お疲れ様です」

私の言葉に、嬉しそうに手を振るミッケさん。

ガバリ団長さんだけでなく、私達がいる事も気付いていたのかな。

頑張って、気配を周りに同調させて隠れていたのにな。

「くそっ。離せ!」

男性はまだ諦めていないのか、自警団員から逃げようと暴れている。

押さえている自警団員を見ると、呆れた表情をしているので力は弱いんだろう。

暴れている姿を見ていると、ジロッと睨まれた。

と思ったら、すぐに視線を逸らした。

なんだろうと思ったら、隣にいたお父さんが……目が全然笑ってない笑顔で男性を見ていた。

うん、これは怖いね。