軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

693話 3人の未来

木の魔物が通って出来た川を見る。

アバルさんが言ったように小さいけど、しっかりと水が流れている。

上流を見ると、壁に穴が空いてそこから水が出ていた。

どこに繋がっているのか気になって、壁の傍に寄る。

「アイビー、水と一緒に魔物が流れてくるかもしれないから気を付けて」

えっ、そんな事があるの?

慌てて壁から離れ、アバルさんを見る。

「知らなかった?」

「はい。でもこの川、深くないし横幅も広くないから大丈夫じゃないですか?」

アバルさんを見ると、首を横に振った。

「洞窟の中にいる魔物は、新種やまだ発見されていない種類も多い。その中に、小さい川でも生きられて攻撃的な魔物がいないとも限らないから」

確かに、そうだね。

洞窟の中では何が起きてもおかしくないからね。

「ぷ~」

「あっ、ソラが!」

お父さんの声に視線を向けると、小さな川の中を転がっているソラを見つけた。

「ソラ!」

どうしてそんな小さな川で、流されているの!

「にゃうん」

川の傍で休憩していたシエルがすぐに反応してくれて、ソラを水の中から救出してくれる。

「ぷっぷぷ~」

ソラがシエルを見て鳴くと、シエルがペロッとソラを舐めた。

「良かった。ソラ、大丈夫?」

「ぷっぷぷ~」

ぴょんと跳ねるソラをポンと撫でると、シエルの頭をゆっくりと撫でる。

「ありがとう。シエル」

「にゃうん」

もう一度シエルの頭を撫でてから、フレムとソルを探す。

ソラのように川に流されたという事は無いだろうけど、何処にいるのかな?

「あそこにいるぞ」

お父さんが指す方を見ると、フレム、ソル、トロンと並んでいる後ろ姿があった。

「何をしているんだろう?」

「川を眺めているんじゃないか?」

そう見えるけど、本当に?

そっと傍に寄って、3匹を見る。

「寝てる」

まさか並んで皆で寝ているとは、思わなかった。

「寝てる? 見たいけど、俺が近付くと起きるかな?」

アバルさんがそっと、フレム達に近付く。

そして3匹を見ると、嬉しそうに笑った。

「寝ているな。俺を警戒しなくてもいいと、思ってくれているんだな」

警戒していたら、起きるもんね。

……起きるよね?

3匹を見る。

たぶん、アバルさんは信用できると思っているから起きないんだろう。

「アバルは、アリラス達を勧誘する事を知っていたのか?」

お父さんが、簡易テーブルを出してお茶の用意を始める。

「ここに来る前に、団長から聞いたよ」

「そうか」

「これ、一緒に」

アバルさんが、マジックバッグから白い団子が入ったカゴを出す。

「俺の奥さんの手作りなんだけど、中にタレが入っていてうまいから。どうぞ」

奥さんがいるんだ。

しかも、手作り。

「「いただきます」」

白い団子は一口サイズ。

口の中に入れて噛むと、中から甘いタレが溢れてきた。

甘さが優しくて、おいしい。

2個目の団子に手を伸ばしながら、そっと後ろを見る。

ガバリ団長さんとアリラスさん達は、魔法陣があった空間にいる。

そして、これからの事を話し合っている。

その中には、組織の事も含まれているので私とお父さんは彼らから離れた。

さすがに部外者である私たちが、組織の事を聞くのは駄目だからね。

「大丈夫だよ」

アバルさんが私の肩をポンと軽く叩く。

「そうですよね」

お父さんは、アリラスさん達の傍から離れる時にガバリ団長さんにお願いをしていた。

3人の決定を尊重する事と、たとえ組織に入らなかったとしても守ってほしい事を。

ガバリ団長さんは「もちろんだ」と力強く頷いてくれたので、きっと3人を悪いようにはしないだろう。

川が流れる音をのんびりと聞いていると、ちょっと眠くなる。

昨日は、いろいろあったわりにちゃんと寝られたんだけどな。

「ぷ~!」

ソラの声に視線を向けると、木の魔物の枝に乗っているのが見えた。

そう言えば、静か過ぎて忘れていたけど木の魔物も一緒にここに来ていたんだった。

木の魔物を見る。

ジッとしていると、本物の木にしか見えないよね。

「ぎゃっ」

ソラに反応するように鳴く木の魔物。

「ぎゃっ?」

木の魔物の声に、トロンが目を覚ましたのか眠そうな鳴き声を上げた。

「ぷっぷ~」

ソラはのびのびと体を縦と横に伸ばすと、木の魔物の枝を包み込んだ。

「今日、2回目だな」

「うん」

ガバリ団長さんが話している間、ソラはずっと木の魔物を治療していた。

昨日から合わせて2回目。

でも黒く変色した部分が元に戻る事は無かった。

それを見て悔しそうなソラと慰める木の魔物。

2匹で何か話していたけど、今の様子からもう一度治療する約束だったのかもしれないな。

「ちゃんと治療が出来たらいいけど」

「うん」

ソラがあれだけ頑張っているのだから、元に戻って欲しい。

「お待たせ~」

リーリアさんの元気な声に視線を向けると、すっきりした表情の彼女がこちらに駆けてきた。

「いい話し合いが出来たみたいだな」

お父さんの言葉に頷く。

何を話し合ったのかは分からないけど、リーリアさんだけじゃなくアリラスさん達の表情も明るい。

3人とも満足そうなので、笑みが浮かぶ。

「そうなの」

リーリアさんが嬉しそうに笑うと、お父さんも嬉しそうに笑った。

「アリラス達は組織に入る事になった」

ガバリ団長さんの言葉に、3人が頷く。

「そうか。無理しない様にな」

お父さんの言葉に、アリラスさん達がお父さんに頭を下げる。

「今の問題が片付いた後なんですが、正式に組織に入って戦い方を学びます。で、次は俺達が守る側になる事にしました」

守られる側から守る側にか。

なんだか、かっこいいなぁ。

「ぷぷ~!」

洞窟に響くほどの大きな声を出したソラに、慌てる。

治療中に何かあったのだろうか。

「どうしたの?」

木の魔物に走り寄って、ソラを見る。

ソラは、木の魔物の枝の上で、かなり興奮しているようだった。

「ぷっぷぷ~! ぷっぷ~! ぷっぷっ!」

何かを伝えたいみたいだけど、分からない。

木の魔物に何かあったのかと思ったけど、見た感じ特に変わりはない。

「あっ、アイビー。黒く変色した部分が、無くなっている」

「ぷっぷぷ~」

お父さんの声に、嬉しそうに答えるソラ。

あぁ、つまり治療がうまくいった事を伝えたかったのか。

木の魔物の黒く変色していた部分の枝を見る。

少し前まで真っ黒だった部分が、完全に無くなっている。

「ソラ、おめでとう。凄いね、完全に治っているよ」

「ぷっぷ~。ぷっぷ~! ぷぷぷ~」

興奮して、私の周りをぴょんぴょん飛び跳ねるソラ。

そして今回も、何を伝えたいのか分からない。

もう少し冷静になって欲しいけど、これだけ喜んでいるので抑えるのも可哀想だし。

パキン。

バサッ。

パコン。

「ぷっ!」

なぜかソラの上に、枝が落ちてきた。

木の魔物を見ると、スッと視線を逸らす。

ん?

枝を落としたのは、わざとなのかな?

「わざと、ソラの上に落としたの?」

私の言葉に、木々がざわざわと揺れる。

まるで焦っているように感じる。

「失敗してソラの上に落ちたの?」

「ぎゃっ」

失敗して、ソラの上に落ちたんだ。

それはそれですごいかも。

「ぎゃっ」

木の魔物の視線が地面に落ちた枝に向く。

お父さんが枝を拾うと、少し驚いた表情を見せた。

「どうしたの?」

「たぶんこれ、黒い蜜だ」

黒い蜜?

お父さんが私の方へ見せた枝には、小指の先ぐらいの大きさの黒い丸い物が一杯ついていた。

「これが黒い蜜なんだ」

アバルさんも興味深そうに枝を見つめる。

彼は、黒い蜜が何かを知っているみたいだ。

「ポーションの効果を高めてくれる物なんだ。ポーションと一緒に飲むといいらしい」

そうなんだ。

……ソラやフレムのポーションの効果を高めると、凄い事になりそうだな。