軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

673話 いないね

初心者用洞窟の2ヶ所目は、木々が鬱蒼と生える場所に出入り口があった。

「前の洞窟とは全然違うね」

確かに前の洞窟は、大きな岩にぽっかりと開いた大きな穴が洞窟へ続く出入り口になっていた。

今日の洞窟は、大木の幹に大人が四つん這いにならないと入れないぐらいの穴が出入り口のようだ。

「うわっ、これは中も狭いな」

「中もですか?」

リーリアさんと同じように穴の中を覗き込む。

確かにこれは狭い。

穴の奥は、四つん這いになって進むしかなさそうな空間が続いていた。

「許可をもらって来たぞ。誰から行くんだ?」

自警団員から、洞窟に入る許可を貰って来たお父さんが、私達を見渡す。

「今日は俺が先頭です」

「タンラスか。挑戦する前に、注意事項を言っておく。こういう狭い出入り口の洞窟では、広い場所に出た瞬間に魔物に襲われる可能性がある。だから、道の先で気配を感じたら十分気を付ける事。もし何かの気配を感じたら迷わず引き返す事。絶対に突っ込むなよ」

お父さんの言葉に神妙に頷いたタンラスさんが、四つん這いになって洞窟に入って行く。

しばらくすると、中から「大丈夫だった。次、いいぞ」という声が聞こえた。

「タンラス、次は私が行くね」

「リーリアか? 分かった」

タンラスさんの言葉に、リーリアさんが体を屈め中に入って行く。

「次の人どうぞ」

リーリアさんの言葉に、お父さんとアリラスさんを見る。

「アイビー、行っていいぞ」

「ありがとう。先に行くね」

お父さんの言葉に頷いて、体を少し屈めて穴に入った。

そのまま四つん這いで進むと、体が少し前に押されているような気がした。

ん?

「変な感覚だな。何だろう?」

あっ、この道、下り坂になっているんだ。

だから前に押されているような気がするのかな?

「よっ」

しばらくすると、少し広い空間に出た。

「お疲れ様。大丈夫?」

「大丈夫です」

リーリアさんの言葉に笑顔で返すと、外に向かって声を掛ける。

「次の人、どうぞ」

外に声を掛けると、ずずっと言う音が聞こえてきた。

しばらくすると、お父さんの姿が見えた。

「よいしょっと」

広い空間に出たお父さんが、背を伸ばす。

「お父さん、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。アリラス、良いぞ」

最後にアリラスさんが来ると、タンラスさんが洞窟の奥を指した。

「行こうか」

「そうだな」

お父さんの言葉にタンラスさんは、剣に手を掛けると洞窟の奥へ向かって歩き出す。

その後ろをリーリアさん、その次が私でお父さん。

最後はアリラスさん。

「「「「「…………」」」」」

歩き始めて15分。

魔物の気配が全くない。

それでも警戒しながら、洞窟の奥に進む。

「まさか、魔物が全くいないなんて」

タンラスさんの言葉に、全員が頷く。

洞窟に入って、約30分。

魔物が1匹も出ないなんて思わなかった。

「この洞窟は、これが普通なの?」

リーリアさんがお父さんに視線を向ける。

「どうだろう? 洞窟によって違うから、なんとも言えないが。ミッケがくれた資料には、魔物が出にくい洞窟だとは書いてなかったけどな」

ミッケさんのくれた資料は、洞窟の特徴が詳しく書いてある。

魔物が出にくい洞窟なら、そう書いてくれているはず。

もしかしてまた、洞窟に問題が起きているのかな?

ちょっと不安に思いながら、洞窟の奥へ歩き続ける。

「あっ、いた」

タンラスさんの言葉に、リーリアさんが嬉しそうな表情をした。

前方、まだ少し先だが確かに魔物の気配を感じる。

洞窟に入ってから約1時間10分。

長かった。

「ようやくだね」

「気を抜かないようにな」

嬉しそうな声を出すリーリアさんに、お父さんが声を掛ける。

それに彼女は頷くと、「よしっ」と気合を入れていた。

「ん? 1匹じゃないな……えっ? 何匹だ? 10匹以上か?」

タンラスさんが剣を鞘から抜くと、構える。

「そう、みたいだな。タンラス、上にも注意しろ」

アリラスさんが後方から声を掛ける。

「分かった」

少し前のゆったりした雰囲気が、一気に緊張する。

ようやく魔物の気配がしたと思ったら、その数がどんどん増えている。

今、分かるのは多くの魔物がいるという事だ。

私も深呼吸して、雷球を手に持つ。

「俺達に気付いたみたいだ」

タンラスさんの緊張した声が、洞窟内に響く。

確かに、魔物の気配が速度を上げてこちらに向かって来ているのを感じる。

深呼吸をして、洞窟の奥を見据える。

ガウガウガウ。

ガウガウガウ。

鳴き声と共に姿を現したのは、10匹以上の魔物。

気配から数を探るが、なぜか正確な数がわからない。

なぜだろう?

「13匹以上だ、気を付けろ!」

お父さんの声が響く中、タンラスさんとリーリアさんに魔物が襲いかかった。

「リーリア、やられるなよ」

「当たり前でしょ!」

タンラスさんとリーリアさんが、襲って来る魔物を次々と倒していくのを見ながら魔物の様子を窺う。

「来たぞ」

前の2人を避けた魔物が、後方にいる私たちに向かって来るのが見えた。

アリラスさんが、私の前に出て剣を構える。

初日と同じように、お父さんはぎりぎりまで手を出さない。

アリラスさんが、襲って来た魔物を倒していくが1匹、倒し損ねてしまう。

その魔物が、私に向かって来る。

「アイビー」

「大丈夫です」

雷球を握って、狙いを定める。

今だ!

距離を詰めてきた魔物に、雷球を勢いよく投げつける。

雷球は魔物の顔面に当たったようで、魔物の叫び声が洞窟に響いた。

喜びたいが、今はそんな時間は無い。

既に次の魔物が迫ってきている。

アリラスさんが更に6匹は倒してくれたが、2匹が私に向かって来た。

2匹同時に雷球をぶつけるのは無理だから、順番に投げるしかないけど……どうしたらいいの?

魔物の動きを見る。

右から襲って来る魔物の方が、足が速いみたい。

という事は、倒すなら右の魔物から。

待っているだけでは駄目。

私からも向かって行って、雷球を当てて、すぐに下がって次の魔物に対応しよう。

少し前に出るが、既に魔物が近い。

慌てて、雷球の狙いを定め投げつける。

「ギャン」

ドサッ。

よしっ、成功。

次!

すぐ傍まで迫っている魔物に向かって、雷球を投げる。

狙いを定める時間が無かったけど、どうだろう?

「ギャン」

ドサッ。

よかった。

上手くいった。

次は?

「最後だ!」

タンラスさんの言葉に視線を向けると、最後の魔物がタンラスさんの剣で倒されていた。

「終わったぁ。確かに魔物は来て欲しかったけど、一気に襲って来るなんて……。あ~しんどい」

最後の1匹がタンラスさんに倒されると、リーリアさんは近くの岩に腰を下ろした。

「ドルイドさん、ありがとうございます。俺達だけじゃ無理でした」

アリラスさんの言葉に、お父さんを見る。

剣を抜いているという事は、助けてくれたみたいだ。

「一気に35匹も襲って来たんだから、しょうがないよ」

「35匹! そんなにいたの?」

35匹もいたんだ。

これは、リーリアさんが驚くのも当然だね。

「洞窟の問題は解決したんだよな?」

タンラスさんの質問にお父さんが首を傾げる。

「分からない。ただ、この洞窟の魔物の出方は少し気になるな」

まだ、問題は収束していないのかもしれないな。

「とりあえず……落ちている魔石を拾うか」

お父さんの言葉に、周りを見る。

魔石自体のレベルは低いが、商品券になる。

屋台で使えるので、魔石は全て拾っていきたい。

皆、大食いだからね。