軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

620話 教会にあった書類

「まだ、トロンは起きてるか?」

「うん。今日はまだ起きてるよ」

トロンを見ると、シエルの頭の上でのんびり寛いでいる。

シエルは、ソラ達にもよく体の上に乗られているけど怒った事がない。

本当に面倒見がいいよね。

トロンは、洞窟で大量の栄養を取った後ぐらいから、起きている時間がどんどん減っていった。

元々よく寝ていたが、今では1週間に3時間も起きていない。

カリョの花が原因かと思ったが、前の時はこんな事は無かった。

心配したが、ソラ達が気にしていないので大丈夫なんだろうと理解した。

でもやはり、ずっと寝ていると心配になる。

原因が分からないのも、一因だろう。

そしてトロンに関しては、もう1つ心配な事がある。

寝る時間が増えていくと、徐々に成長が止まってしまったのだ。

トロンの成長は早くはなかったが、ゆっくりとだが確実にあった。

それが、今では完全に止まっている。

トロンは、ソラ達以上に分からない事が多すぎる。

スライムの情報は、ソラ達には当てはまらないが本にもなっている。

だが木の魔物の情報は、「どの村や町に出現した。被害は……」という物ばかりで、木の魔物と一緒に生活するための情報は皆無。

なので、今回のトロンの状態がさっぱり分からない。

「にゃうん」

ん?

「どうしたの、シエル? あっ、トロンが寝ちゃったんだね。ありがとう」

シエルの頭の上から、毛と根が絡まないようにそっと抱き上げる。

そのまま、トロンのために用意したカゴの中に入れると、布をかけておく。

抱き上げた時にトロンの表情を見たが、とても穏やかだった。

「もう寝たのか?」

罠を作っていたお父さんが、視線をトロンの入っているカゴに向ける。

「うん。今日は1時間ちょっと起きてたよ」

「そうか。食事量は減っていないんだよな?」

「うん、紫のポーションの減りを確認したけど、それは大丈夫」

お父さんは、テーブルの上にある紫のポーションを見ると頷いた。

コンコン。

「アイビー、此処にドルイドはいるかな?」

「いますよ。どうぞ」

ウルさんは、ソラたちの事を既に知っているので部屋の中へ招く。

部屋に入ってきたウルさんの表情が、ソラ達を見ると崩れた。

すぐに元に戻ったが、ちょっと笑ってしまう。

「にやけ過ぎだろう。それよりどうしたんだ?」

ウルさんが1枚の書類をお父さんに渡す。

その後、近くにいたソルに手を伸ばすが、なぜかソルは逃げてしまった。

あっ、悲しそう。

「契約書か?」

首を傾げながら書類を受け取ったお父さんは、中身を確認すると険しい表情を見せた。

契約書ではないみたい。

「これは?」

「少し前に、サフサがこれを持ってきた。ジナルから、ドルイドに見せておいてほしいと言われたそうだ」

ジナルさんから?

お父さんを見ると、真剣に考えこんでいるのが分かる。

「その元の書類は教会の隠し部屋にあったんだ。しかもかなり難しい暗号で書かれてあったのか、解読するまでに時間がかかっている」

暗号を使っているなら、かなり極秘の情報だよね。

教会にとって、絶対に漏れては駄目な情報。

そんな重要な情報を、どうしてお父さんに見せるんだろう?

冒険者も辞めた、今のお父さんに必要な情報?

「ジナルから、『それについて話がしたい』と伝言を預かっているんだが、今日の夜は大丈夫か?」

「大丈夫だ」

お父さんの返事を聞くと、ウルさんは書類を受け取り部屋を出ていった。

何が書いてあったんだろう、気になるな。

「内容は聞いても大丈夫?」

いつもなら書類を見せてくれるのに、今日はそれが無かった。

しかも、ちょっとピリピリしている様子が分かる。

「悪い。ちゃんとした事が分かったら、話をするから」

真剣な表情でお父さんが言うので、頷く。

きっと大変な内容だったんだろうな。

「無理ならいいからね」

私は子供だから、言えない事も多いはず。

無理に聞き出すつもりは無い。

「分かった」

バタンッ。

「忘れてた!」

部屋を出ていったウルさんが勢いよく扉を開ける。

それにお父さんの表情が引きつる。

「おい」

ウルさんはお父さんの表情を見ると、慌てて部屋に入ると扉を閉めて頭を下げた。

「悪い。今のは俺が悪かった」

「はぁ、もういい。それで?」

「契約内容の事でガルスが話をしたいらしいんだ。今から、大丈夫か?」

決まり悪そうにウルさんが謝ると、お父さんが苦笑した。

「契約書か、分かった。アイビーも一緒に来るか?」

コンコン。

ウルさんが遅いから、ガルスさんが来たのかな?

「アイビーさん、アルスです。話がしたいんですが、いいですか?」

アルスさん!

もちろん。

「あっ、どうしよう」

ソラとフレムとソルは部屋の中で遊んでいるし、シエルはアダンダラの姿でベッドで寝ている。

「契約をするし、アルスも秘密があるから部屋に招いても大丈夫だろう」

お父さんの言葉に頷くと、急いで扉を開ける。

廊下には、申し訳なさそうな表情をしているアルスさんがいた。

「えっと、仲間を紹介しますね。どうぞ」

部屋に入ってきたアルスさんはソラを見て嬉しそうな表情になったが、ベッドを見て固まった。

あっ、夢にはスライムしか出てきてないのかも。

そうだよね、夢にアダンダラが出てきたら話題に出すはず。

言わなかったという事は、アダンダラがいる事を知らなかったという事だ。

「何も知らずに会ったのに、叫ばなかったのは凄いな」

ウルさんの言葉に、確かにと頷いてしまう。

いや、私が頷いていたら駄目だよね。

「アルスさん、ごめんなさい。ベッドの上の子は、アダンダラのシエルで大切な家族なんです。襲ったりはしないから安心して下さい」

「そう、そうですか。アダンダラ……シエル。ちょっと驚いて……」

心臓の辺りを押さえて話すアルスさん。

叫ばなかったのは、驚き過ぎて声が出なかったのかもしれない。

本当に悪い事をしてしまった。

「ごめんなさい。先に言っておけばよかったですね」

無言で首を横に振るアルスさん。

シエルが気になるのか、ちょっとベッドに近付いた。

アルスさんの行動が気になったのか、起き上がって彼女に向きなおるシエル。

「わっ。本物だ。本物が目の前にいる!」

そんなシエルの行動に、喜びだしたアルスさん。

もしかして驚いただけで、実はレア好き?

「大きい、可愛い。凄いかっこいい!」

うん、私もそう思う。

「くくっ。大丈夫そうだな。アイビー、俺はガルス達と契約書について話をしてくるから」

そうだった、忘れてた。

「うん、お願い」

お父さんはアルスさんに一言声を掛けると、ウルさんと一緒に部屋を出ていった。

「アイビーさん、触ってもいいですか? 許可を出してもらう事は出来ますか?」

興奮しているアルスさんに笑ってしまう。

「私の許可は必要ないですよ。シエル本人に聞いて下さい」

えっ?と驚いた表情をするアルスさん。

「シエルもソラ達と一緒で、一般的ではないんです」

「そうなんだ。えっと、シエルさん。触っていいですか?」

アルスの言葉にすっと頭を下げるシエル。

それを見てパッと笑顔になると、そっと手を伸ばすアルスさん。

もう少しというところで、止まってしまったので首を傾げる。

「どうしました?」

「なんだか、緊張してしまって……。よしっ、触るね。触らせてね」

そっとシエルの頭を撫でるアルスさん。

小さな「うわぁ」という声が聞こえた。

「凄い、サラサラ。もっと硬いのかと思いました」

シエルの毛は、固そうに見えるけどふわふわだもんね。

「あっ、違う。私、アイビーさんに謝りに来たのに」

アルスさんがシエルから手を離すと、私を見た。

それに首を傾げる。

アルスさんに謝って貰う事なんて、無いはずだけどな。

「えっと、私の勝手な行動に巻き込んでしまい、ごめんなさい。それに、嘘も色々とついてしまって、すみませんでした」

あぁ、その事か。

別に気にしてないのに。