軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

504話 契約は慎重に

教えてもらった公園に行くと、親子連れやご夫婦が楽しそうに食事をしていた。

公園には珍しく、テーブルと椅子も完備されていたので空いている席に座る。

屋台で購入した物を広げていくと、お父さんが嬉しそうな表情になった。

「ガルガ肉の串焼きか~」

もしかして好きなのかな?

「「「いただきます」」」

ガルガ肉の串焼きをお姉ちゃんと半分にして食べる。

「久々に食べたが美味いな。いい店見つけたな。不味い店は肉が硬いから」

お父さんの言葉に、お姉ちゃんと顔を見合わせて笑う。

「村の人が、多く並んでいた屋台を選んで正解だったね」

「うん。お肉も小さめだったしね」

野菜たっぷりのスープも美味しい。

料理を作るのは楽しいけど、人が作る料理を楽しむのも大好き。

お父さんも満足そうなので良かった。

あっ、そう言えば気になる事があるんだった。

ちらりとお父さんを見る。

「あのねお父さん、あの2人は大丈夫なの?」

いつもと違い、お父さんの2人に対する警戒心が薄かった。

それがどうにも腑に落ちないんだよね。

お父さんを見ると、はっとした顔をしたと思ったら気まずそうな表情になった。

それを不思議そうに見ていると、視線が彷徨いだす。

「あ~、あの2人は俺を裏切れないから大丈夫」

ん?

裏切らないではなく、裏切れない?

首を傾げてお父さんを見ると、視線が合わない。

ジーっと見ていると、ちらりと私を見るお父さん。

「若かったから、酒の限界を知らなかったんだよ」

さっぱり意味が分からず、お姉ちゃんとじっとお父さんを見つめる。

しばらく何か考えていたお父さんは、ため息を吐くと私とお姉ちゃんを見た。

「昔一緒に仕事をして。まぁ、酒を飲んで深酔いして……あの2人が俺の知り合いにちょっとやばい事をしてしまって……で、俺が無料で仕事をする事で許してもらったんだ。たぶんその時に、なぜかそういう契約を交わしてたんだよ。うん。酔いに任せた勢いで」

何か縛りがあるのか、ちょっと言葉を探しながら説明するお父さん。

「お父さんを裏切れない契約?」

私の言葉に頷くお父さん。

「酒が抜けて、冷静になってさすがにどうかと思って、契約の破棄か作り直しを提案したんだが、別にこれで構わないと言われてしまって。俺から何か命令することは無いし。困らないからいいかと……」

何というか。

うん。

まさか契約で縛りのある関係とは……。

でも、さっきの雰囲気はそんな感じは無かったな。

本当に親しい印象を受けた。

「アイビーに言われるまで、すっかり契約の事を忘れていたな」

「えっ! そうなの?」

「あぁ、あの2人は絶対に大丈夫という認識があっただけで、その理由は完全に忘れてた。今、アイビーに言われて、どうしてここまで信頼しているのか考えて、思い出した」

お父さんがため息を吐いて手で顔を隠す。

裏切らないようにする契約か。

すごい縛りだよね。

「あの2人は何をしたの?」

そんな契約をしてもいいほどの事を、したんだろうか?

「契約で話せないから。2人にも訊かないでやってくれ。3人とも酒は怖いと、あの時に実感したよ」

すっごく気になるけど、話せないみたいだから仕方ない。

「師匠さんに、怒られたんじゃないの?」

そんな契約をするなんてと。

「あの師匠だぞ? 契約内容を聞いて大笑い。まぁ、内容が内容だったから誰かに言う事は無かったけどな」

あ~、そうだね。

師匠さんだもんね。

「契約ってすごい強制力があるんだね」

お姉ちゃんの言葉にお父さんが頷く。

「気軽に契約なんてするなよ。後になって悔やむからな。契約内容によっては一生を左右されるし」

すごく大切な事を言っているのに、説得力が……。

「経験者からの忠告だ」

それなら説得力があるね。

お姉ちゃんもそう感じたのか、笑いだした。

「ははっ。食べ終わったら、服と靴を見に行こうか」

「そうだね」

机の上を見る。

ガルガ肉の串焼きが4本残っている。

それをマジックバッグに入れる。

「6本も食べたんだ」

肉が好きなのは知っているけど、食べ過ぎじゃない?

大丈夫かな。

「さすがに体が重いよ。でも、久しぶりに食べたら止まらなくなって」

お父さんはガルガ肉の串焼きが好きなんだ。

ハタハ村を出る時に、ちょっと買い溜めして行こうかな。

「さて、そろそろ服と靴を見に行くか?」

「うん。お姉ちゃん行こう」

食べた後を片付けて公園を出る。

お薦めの店をエガさんに訊いていたようで、最初はその店に行く。

公園からも近く、それほど歩く事もなさそうだ。

「ここだな。冒険者の靴と服と小物系ならここがお薦めらしい」

外観は質素で、中を覗かないと何を売っているのか分からなかった。

店に入ると、靴の種類も多くバッグや帽子などもそろっているのが分かる。

「とりあえず、靴だな。サイズを測って見繕ってもらおう」

お父さんが店の人に声を掛ける。

「いらっしゃいませ。店主のルーベトと言います」

30代半ばぐらいの男性が、私たちに向かって頭を下げる。

「よろしく。すまないが、彼女の足のサイズを測ってほしい。あと旅にお薦めの靴を教えて欲しい」

「分かりました。旅は長くなりそうですか?」

ルーベトさんがお父さんに話しかける。

お父さんは少し考え、頷いた。

「予定はあまり決めていないが、長くなるだろうから強度のある靴をお願いしたい」

「分かりました」

「アイビーもどうだ? 靴が窮屈になったりしていないか?」

お父さんの言葉に、意識しながら数歩だけ歩いてみる。

そう言えば、確かに小指の部分が靴に当たっているな。

紐を結び直してもう一度歩く。

やっぱり小指の部分が靴に当たる。

「買い直した方がよさそうだな」

私の表情で気付いたお父さんが、ルーベトさんに私のサイズ測定も依頼してしまう。

もうちょっと履けると思うけど。

「靴で足を痛めると、旅がつらくなるから早めに対処した方がいい」

お父さんの言う通りなので頷く。

1人で旅をしている時は、無理をして小指の爪が割れてしまった事があった。

劣化版のポーションで少し治しても、靴を履くと悪化するためかなり辛かった。

なので靴だけは、安い物から探すが無理はしないようにしている。

「お薦めはこちらの5足となります」

ルーベトさんがお薦めだと持って来てくれた靴を見る。

お姉ちゃんに3種類、私に2種類だ。

どれも底の部分がしっかりとした作りになっている。

「お姉ちゃん、ちょっと履いてみたら?」

「履き心地も大切だからな」

私とお父さんから言われて、靴を履くお姉ちゃん。

履いて歩いて、ちょっと驚いた表情をしている。

「すごく履きやすい。それに軽いの」

かなり気に入ったのか、興奮気味に歩き回るお姉ちゃん。

ルーベトさんもその様子を見て嬉しそうにしている。

私もお薦めしてくれた靴を見る。

手に取って、紐の部分や中を覗きこむ。

「確かに軽いよ。お父さん」

お父さんに渡すと、手に持って微かに目を見開いた。

今までの靴より明らかに軽い。

「お父さんも買ったら? 軽い方が疲れにくいでしょ?」

「そうだな。これは替える価値があるな」

それにしても、今までのと軽さが違うのはどうしてだろう?

靴底を見ると、弾力性のある素材が目に付く。

「初めて見る素材だ」

私の言葉にルーベトさんが、靴底になっている素材だけを持って来てくれた。

「新しく見つかった洞窟に出る魔物からドロップする素材なんですよ。加工が少し大変なんですが、この村の職人たちが見事に活用してくれました」

「弾力が今までのよりありますね」

「そうなんです! それのお陰で長く歩いても疲れにくいと評判なんです」

そうとう自信のある素材なのか、ちょっと声が大きくなる。

それに驚いてるお姉ちゃん。

ルーベトさんはそのお姉ちゃんを見て、ちょっと恥ずかしそうな表情をした。

「すみません」

ルーベトさんの言葉にお父さんと笑って首を横に振る。

2足のうちの1足の値段を見てちょっと固まる。

いつもの靴のほぼ1.5倍の値段。

これは……。

「よしっ、これからの旅の安全のためにも皆で買おう。俺のもお薦めがありますか?」

慌ててお父さんを見るが、その表情を見て苦笑する。

決定みたい。

「ありがとう。お父さん」

「私も、ありがとう」

「ふふっ。ほら服も、選ばないと俺が選ぶぞ」

お父さんの言葉に、慌ててお姉ちゃんと服を決める。

お父さんに任せると、やたらかわいい柄を大量に選ばれる可能性がある。

何とかお父さんには待っていてもらい、お姉ちゃんと服を選ぶ。

選び終わると、すぐにルーベトさんが会計してくれた。

そう言えば、魔石がいくらになったのか聞いていない。

靴の値段もあるため、かなり足が出た可能性がある。

「大丈夫? 魔石代だけで補える?」

「大丈夫。1個、追加で売ったから」

1個、追加?

それってもしかして、高レベルの魔石を1つ売ったという事かな?

あれ?

私とお姉ちゃんが選んでいない服が2枚、混ざっている。

「これ……」

「可愛いだろ?」

確かに可愛い。

旅には絶対に不釣り合いだけど。

ちらりとお父さんを見ると、満足そうな表情。

決定みたい。