軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オグト隊長さんへ

「オグト隊長! どこに行っていたんですか! 探したんですよ」

部下の叫ぶ声に、耳を塞ぐ。

相変わらず元気だね~。

そっと視線を向けると、睨まれた。

あっ、これは本気だ。

そんなに仕事が溜まっていたかな?

……そう言えば、ここ一週間ほど隊長室に入っていない……。

「お久しぶりですね」

……これはやばい。

「そうだな。あ~、さて仕事をしようか。ヴェリヴェラ」

目が据わってる。

いや、まさか一週間もかかってしまうとは。

「はぁ。それで、奴らの尻尾は掴めたんですか?」

はははっ、さすがだ。

何も言ってないのに気付いていたか。

「証拠の隠し場所は確認できた。ちょっと予想外の者が関わっている事が分かったから、後で調査を頼むよ。それと20名ほど集めといてくれ。証拠を押収するから」

「分かりました。準備は全て整えておくので書類をとっとと終わらせてください。今すぐに!」

「怖いぞ」

「ふっ」

まぁ、一週間放置したのだし、仕方ないか。

「あっ、オグト隊長、『ふぁっくす』が届いてますよ」

『ふぁっくす』?

また何かのお願いか?

面倒くさいな。

「ありがとう」

部下の1人が持って来てくれた『ふぁっくす』を受け取り名前を確認する。

「アイビー?」

「えっ? 彼女ですか?」

ヴェリヴェラの驚いた声に、頷く。

「どうやら近況を報告してくれる手紙のようだ」

少年の格好をした少女。

周りに気を張って、いつも怯えていた。

少しでも手助けできればと様子を見ながら近づいたら、かなり可愛い性格をしていて驚いた。

あの時に出来る限りの手は尽くしたが、生きているか心配だった。

森は、子供が1人で耐えられる世界ではないから。

「仕事……まぁ、ちょっと休憩後でもいいでしょう」

ヴェリヴェラの珍しい言葉が聞こえる。

それに笑いそうになるが耐えて、隊長室に急ぐ。

ソファに座ると、前にヴェリヴェラが座る。

「えっと、『オグト隊長、ヴェリヴェラ副隊長、お久しぶりです。覚えているでしょうか? 少しの間ですがお世話になったアイビーです。迷惑かなと思ったのですが、元気な事を知らせたくて送ります』」

「相変わらず彼女は丁寧ですね」

ヴェリヴェラが嬉しそうに笑う。

そうとう彼女の事を気に入っていたからな。

「『私は今、ハタウ村にいます。旅を一緒にしてくれる人も出来ました』他人と過ごせるようになったんだな」

あの時のアイビーに、子供の1人旅が危険だと言うのは簡単だった。

だが、他人を怖がり拒絶している彼女にそれを伝えて大丈夫なのか分からなかった。

どう見ても、他人と一緒に過ごすことが出来ないだろう精神状態。

伝えたところで改善が出来ないなら、言うべきではないと判断した。

不安を煽るだけになりかねないからな。

ただそれが、正しかったのかずっと不安だった。

「彼女、ハタウ村に行くまでにいい人たちと巡り合えたようですね」

ヴェリヴェラの言葉に頷き続きを読む。

「あぁ。えっと『仲間はオール町のドルイドさんと言う方です』……ん? オール町? ドルイド?」

「……ギルドの隠し玉ですか? 冗談ですよね? あの冷酷非道と有名な?」

『ふぁっくす』を見る。

「えっと『ドルイドさんはとても優しく、いつも助けてくれる』とある。別人か?」

俺の知っているドルイドとは随分とかけ離れている。

俺の知っているオール町のドルイドは、非情な判断を下す時も顔色1つ変えず、それを実行する時でさえなんの感情も浮かばない表情に周りにいる者たちが震えあがるとか。

こういう話は大きくなりやすいが、俺はこの目で仕事をこなす彼を見ている。

確かになんの感情も浮かんでいない目を恐ろしいと感じた。

「別人でしょう」

ヴェリヴェラの言葉に、そうだよなと頷く。

が、なぜかギルドの隠し玉である彼がアイビーの隣に並んでいる想像が出来てしまう。

「まぁ、人は変わるし本人でも別人でもアイビーが良いなら問題ないだろう」

と言っても不安だ。

後で確認だけ取っておこう。

「えっと、『私のスキルはテイマーなんですが、その事をあの時は言えませんでした。ごめんなさい』」

「テイマーだったんですね。隠した理由は書かれてますか?」

ヴェリヴェラの不思議そうな表情に、『ふぁっくす』の続きを読む。

「『私が話さなかった理由は、スキルのせいで村に居られなくなったからで怖くて言えませんでした』。村に居られなくなった? テイマーは重宝されるスキルだよな? どういうことだ?」

ヴェリヴェラと首を傾げる。

「『私のテイムしたスライムは可愛くて、得意な事は形を崩す事です。横にびよーんと伸びている状態の崩れていた時に出会いました。すっごく崩れてたんですよ。本当に綺麗に崩れます』。スライムをテイム出来るって事は星1つだよな」

テイマーの星1つで居られなくなる?

「……崩れていたスライム?」

ヴェリヴェラの言葉に、脳裏に何かがかすめる。

崩れていたスライム?

「あぁ、崩れスライムの事か? 最弱の」

「でも、あれは星1つでもテイム出来ないほど弱い魔物だ。無理だろう」

「そうだよな」

『ふぁっくす』を読み直す。

ん?

なんでこんな何回も「崩れた」を繰り返しているんだ?

まるで、重要だと言っているみたいだな。

もし、これを伝えたいとしたら……崩れスライムはどうやってもテイム出来ないのか?

星1つでも、魔物が弱すぎて魔力を渡すと死んでしまう。

だったら、

「星1つより弱かったら、崩れスライムでもテイム出来るじゃないか?」

「星1つより弱い? まさかアイビーが星なし?」

「だから、『ふぁっくす』でも濁して伝えてくるのか?」

ヴェリヴェラが複雑な表情をした。

星なしか。

もしこの考えが当たっているなら、ラトミ村に居られるわけがない。

あの村は閉鎖的な村で、教会の教えが色濃く残っている。

教会は星なしを「神様から見捨てられた存在」としているのだから。

「もしかしたら、殺されそうになったのかもな。あの村ならありえそうだ」

「そうですね。続きは?」

「待て、なんだか嫌な予感がする」

テーブルの上にあるマジックアイテムのボタンを押す。

これでこの部屋の中の声は外に漏れることは無い。

「続きを読むぞ、『ヴェリヴェラ副隊長さんが忠告してくれたんですが、旅の途中で言っていた犯罪組織と関わってしまってと言うか、ちょっと狙われちゃって』……はっ?」

「アイビー」

ヴェリヴェラが額を押さえる仕草をする。

「『そのおかげで、炎の剣と雷王のメンバーの方たちと知り合え、仲良くしてもらいました。彼らに助けられ、無事にその問題も乗り越えられたので安心してください』。このメンバーって、あの犯罪組織を潰した功労者じゃなかったか?」

「ですね。そう言えば、興味が無かったので確認しませんでしたが、団長が功労者の中に子供がいたとか言っていたような……」

「あぁ、確かあの時名前を聞かれたなアイビーの……」

「あとで功労者の名前を確認しておきます」

「頼む。続きだな『忘れてました。ラットルアさんたちに会う前に、仲間が出来たんです。すごく強くてかっこいい仲間です。ドルイドさん曰く、3番目に強くてかっこいいそうです。3番目です。1番目になってほしいけど愚か者になりたくないので3番目で満足です。この仲間はまるで夢のようです』。ん?」

「また何か正直に書けない事があるみたいですね。こんな『ふぁっくす』初めてですよ」

ヴェリヴェラが面白そうに笑いだす。

それにつられて俺も笑ってしまう。

「今度はなんだ? 仲間? テイムとは違うのか? それに3番目?」

「テイムしていないけど一緒にいるから仲間でしょうか? という事は人? いえ、それは無いですね。それなら人と書くでしょうし。この3番目というのも気になりますね」

ヴェリヴェラの言葉に頷く。

3番目、そう言えば1番を目指すと愚か者になるのか?

「強くてかっこいい……3番目。強さが3番目? いやいや、えっ?」

「愚か者って『手を出すものは愚か者』の事ですか? それで3番目……アダンダラ?」

ヴェリヴェラが驚いた表情をして首を横に振る。

「それはあり得ないですよ」

「そうだが。『この仲間はまるで夢のよう』と書いてあるし、星なしに崩れスライムにアダンダラ?」

「なんというか、えっと、深読みし過ぎでは?」

「そうだよな。その可能性もあるよな」

あるか?

間違いなく、色々隠して書かれてあるし、気にして欲しいところは何となく強調されてる。

「この『ふぁっくす』、パッと読まれたぐらいでは意味が分かる事は無いと思いますが、気を付けないと駄目ですね」

何だヴェリヴェラも、何か意味があると思っているんじゃないか。

「でも、これ以上隠されると読み解けるか?」

「……まぁ、そんなに隠さなければいけない事が続く事は無いでしょうから……無いですよね?」

「俺に訊くな。ふ~さて、『あっ、最初に書かないと駄目なのに、また忘れてました。実は私は女性です。旅をするのに男の子の方が安全だと聞いて騙してました。ごめんなさい。えっと、最近は身長もちょっと伸びて、嬉しいです』」

別に騙されていなかったから気にする事ないんだがな。