軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

450話 大っ嫌い!

「うわ~、すごい数のシャーミだ!」

シャーミの巣の近くまで来ると、木の上に多数のシャーミが姿を見せだす。

「あの洞窟で見た数より多くないか?」

周りの木を見渡す。

確かに、数が多いような気がする。

「どこかに隠れていたのかな? もしくは逃げていたのが戻って来たとか?」

「逃げ出していたのが、戻ってきた可能性が高いな。動物は、命を掛けて住処を守る事がほとんどないからな」

ん?

それは当たり前の事なのでは?

あっ、違う。

魔物は気に入った住処を、命を掛けて守る事が多いんだった。

動物と魔物の違いかな?

「まぁ、弱い魔物はすぐに逃げるけどな」

動物と魔物というより、強さの違いが正解かな。

魔物だって弱かったら、種を守るために逃げるよね。

「ハタカ村の人たちが、この数のシャーミを見たら安心するだろうね」

「そうだな」

今回の事で傷ついたハタカ村の人にとって、この森の状態はいい報告になるだろうな。

村の人たちは、シャーミの事が好きみたいだったから。

……それは良い事だと思うんだけど、

「ものすご~く睨まれてるね……」

威嚇する鳴き声すら聞こえてくる。

「くくくっ、敵と思われてるな」

上を見ると、睨みつける無数の視線。

助けたつもりだけど、シャーミからしたらシエルに脅されたりして怖かったんだろうな。

「仲良くなれずに残念」

村の人たちの話では、傍によって来てくれる事もあったらしいのに。

「そうだな。次に来た時は仲良くなれるといいな」

「そうだね」

シャーミが警戒の目を向けてくる中、住処となっている洞窟まで来る。

威嚇の鳴き声が聞こえる度に、シエルが視線を向けるのでいつの間にかそれも無くなっていた。

「洞窟の横に道があるらしいが……」

お父さんが、ギルマスさんから貰った地図を見ながら、シャーミの巣となっている洞窟の横を指す。

近付くと確かに細いが道があった。

「この道沿いに、歩いて行くといいの?」

「あぁ、危険な道を回避できるそうだ」

シャーミに手を振ってから、教えてもらった道を歩く。

細いがしっかりと道になっているため、歩きやすい。

「木の根が無いのがいいね」

あれは地面から突然飛び出しているから、気を付けていないと引っ掛かってしまう。

しばらく、無言で歩き続ける。

ギルマスさんたちの予定を狂わせるのは避けたい。

「村を出てから4時間も歩き続ければ、もう大丈夫だろう」

「そうだね。休憩しようか」

周りを見て、座れそうな岩を見つける。

「あぁ、それにしても結構歩いたな」

お父さんの言葉に足をくるくる回しながら頷く。

村にいた時、隠れていたりとなかなか動くことが無かったため、足の疲れがいつもよりひどい。

「久しぶりに4時間を早歩きで歩いたね」

「そう言えば、そうだな。ソラたちは大丈夫か?」

「ぷっぷぷ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

あれ?

フレムの声が聞こえない。

シエルに近付くと、ソラとソルはシエルから降りているが、フレムはまだシエルの背中に乗っている。

というか、寝ている。

「昔に比べると、起きてる時間は長くなったけどね」

フレムをそっと抱き上げる。

「てりゅ?」

「休憩しようか。まぁ、寝てたからずっと休憩中だったかもしれないけど」

「てりゅ~」

口を大きく開けて欠伸をするフレム。

相変わらずだ。

そっと地面に置くと、シエルがさっと立ち上がって毛を逆立てる。

「何かこっちに向かってきているな」

気配を探ると、かなり遠い場所にいる魔物を捉える事が出来た。

「どうする?」

「にゃ!」

お父さんの言葉に答えるシエル。

「……よろしくな、シエル」

「にゃうん」

尻尾をくるくると回すと、周りを見てぴょんと木の上に登っていくシエル。

その姿が木々で見えなくなる。

「どうするんだ?」

「さぁ?」

シエルが隠していた魔力を出すと、森が少し騒がしくなる。

「シエルは完璧に魔力を隠せるようになったな」

「本当だ。気にしてなかったから気付かなかった」

「にゃ゛~!」

「うわっ」

「おおっ」

いきなり底から響いてくるような低音が森に響き渡る。

数秒静寂に包まれる森。

次の瞬間、周辺の森の中にいた生き物たちが暴れ回りだした。

「すごいな」

「うん。すごいけど……」

やりすぎではないかな?

確かにこちらに向かってきていた魔物は逃げていったけど……。

それ以外の動物たちと魔物たちが、大混乱で逃げまどっているのが気配から分かる。

「にゃうん」

木の上から颯爽と降りてくるシエル。

その満足そうな表情に、笑ってしまう。

「ご苦労様。周りが落ち着くまでここで休憩しようね」

ソラとフレムが楽しそうにシエルの周りを跳び回っている。

ソルは、少し離れたところで明後日の方向を見ている。

「ソル、気になる魔力でも感じた?」

「…………」

ソルの場合は、感じていないから無反応なのか、魔力を探るのに必死で聞こえていないのか分からないな。

「そうだ。ギルマスに聞いたんだが。はい」

お父さんにメルメの漬け焼きとおにぎりの載った皿を渡される。

出来立ての美味しい匂いが、空腹のお腹にくる。

「いただきます。何を聞いたの?」

メルメの漬け焼きを食べながら、お父さんを見る。

「俺たちがどうやって魔法陣の術に掛かったか」

あっ、そう言えばまだ分からないって言われていたんだった。

いったん食べるのを止めて、お父さんの方に体を向ける。

「サリフィー司祭が原因だったみたいだ」

サリフィー司祭?

確か、体に刻まれた魔法陣が動き出してギルマスさんが呼び出された原因になった人だったよね?

「体に刻まれた魔法陣を団長が調べて分かったんだが、あれは周辺にいる人物を洗脳するための魔法陣だったらしい」

「周りにいた人?」

「そうだ。広範囲に影響を及ぼすことは無いそうだが。気付かれないように術をゆっくりとかけていくそうだ」

「サリフィー司祭という人に会った事があるのかな?」

「無いと思うぞ」

無い?

それで、どうやって私たちは術に掛かったんだろう?

近くにいる必要があるんだよね?

「夜中に広場を歩き回っていたらしい」

……なるほど。

寝ている間に術に掛かっていたのか。

「すごく怖いね。そんな事が出来るなら、被害が増えそう」

「それが、洗脳の魔法陣を体に刻んで生き残れるのは、ほんの一握りらしい」

「えっ?」

「ほとんどの者は、体に魔法陣を刻んだ瞬間に気が狂うそうだ」

「……そんな怖い事を、サリフィー司祭はやってたんだ。確かグピナス司教も体に魔法陣が刻まれていたと聞いてるけど」

「あれは、守りの魔法陣だったらしい」

守りの魔法陣?

「自分に害を与えようとする者が近くにいると、姿を隠すことが出来る魔法陣だったらしい」

自分に害を与える?

それって、捕まえようとする人から姿を隠せるという事?

「1人で、逃げるつもりだったという事なのかな?」

「そうだろうな。捕まった日は必死に隠したそうだが、2日経っても魔法陣が発動しないから混乱して自ら魔法陣の力がどういうモノか話したらしい。まぁ、教会では司教の地位についていたが小物だな。ペラペラ聞いてもいない事を話したらしいから」

発動してたら、逃げられていた可能性があるんだ。

良かった、魔法陣が動かなくて。

「サリフィー司祭は?」

「彼から話を聞くことは、もう出来ないそうだ」

それって、気が狂ったという事?

もしくは既に亡くなってしまったとか?

「はぁ、すっきりしない」

「そうだな」

おにぎりを頬張る。

塩おにぎりは、漬け焼きのお肉と相性がいいと思う。

「美味しい」

イライラ、ムカムカするけど、もうどうする事も出来ない。

グピナス司教という人に会って思いっきり罵倒したいけど、それも無理だし。

前世の記憶がある事で、狙われてるみたいだし。

でもだからと言って、前世の記憶が無かったらよかったとは思わない。

だって、前世の記憶が無かったら、今ここに私はいないと思うから。

お皿に載っている2個目のおにぎりにかぶりつく。

……食べ物に当たったら駄目だよね。

「ふぅ~。魔法陣と教会なんて大っ嫌い」

「俺もだ」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

「へっ?」

気持ちを切り替える為の行動に返事があり、驚いてお父さんとソラたちを見る。

「なんだ、お前たちも同じ気持ちか?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

お父さんの言葉に、はっきりと返事をするソラたち。

見ると、ソラとフレムは頬が膨れているしソルは目が吊り上がっている。

シエルに至っては、背中の毛が逆立っている。

皆の姿に唖然とし、次の瞬間笑ってしまった。