軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

419話 シャーミの洞窟

「では、行きましょうか」

ナルガスさんが先頭に立ち、シャーミの住処となっている洞窟を目指す。

少し坂道があるらしいが、それほど険しい道ではないとのこと。

まぁ、少しぐらい坂が続いても、岩山が続いても平気だけどね。

隣を見ると、シエルが機嫌よさそうに歩いている。

私の視線に気付くと、こちらを見て「ぐるぐる」と喉を鳴らしながら、顔を私にこすり付ける。

何だかいつにもまして甘えてくる。

「久々に本当の姿で会えたから、嬉しいのだろう」

「確かに、久しぶりかな。もう、可愛い過ぎる」

歩きながらシエルの顔や喉を撫でると、もっとと要求するように、「ぐるぐる」という音が大きくなる。

その可愛さについつい手が出て頭を撫でてしまうので、ずっと同じことが続いている。

前を見るとナルガスさんとジャッギさんがちらちらと、後ろにいる私たちを気にしているのが分かった。

「すみません、煩かったですか」

「いや、すごく仲がいいのだなと思って」

ジャッギさんが、私とシエルを交互に見て感心したように話す。

「大切な仲間であり、家族でもありますから」

「ずっと思っていたが、本当にいい関係を築けているんだな。その関係は最初からなのかな?」

「そうですね。最初から仲良しです。あっ、でもシエルは最初はちょっと怖かったですよ」

後ろを歩いているアーリーさんの言葉に答えると、シエルが体をちょっと当ててきた。

「ごめんって、今は全然怖くないし大切な家族だよ」

「にゃうん」

怖かったという言葉が気に入らなかったらしい。

確かに、最初からシエルは私にやさしかったもんね。

「その関係は途中からでも出来るものなのかな?」

「えっ? もしかして、良好な関係が築けていないテイマーがいるんですか?」

「そうなんだよ。俺の幼馴染なんだけど、祖母が名の知れたテイマーだったから期待されてたんだが、テイムした魔物を上手く使いこなせないみたいで」

使いこなす、ね。

「私はソラやソルを使いこなしてはいないですよ」

「えっ?」

「何かあったらお願いはします。でも、ソラたちが嫌ならそれでいいと思ってます。家族の間で使いこなすなんて、おかしいでしょ? それともアーリーさんの家族はそうなんですか?」

「いや、すまない。言い方が悪かったな」

アーリーさんが慌てて謝るが、どこかにその考えがあるんだろうな。

そうでなければ、出てくる言葉ではないだろうし。

「助け合いだろう」

「助け合い?」

お父さんの言葉にアーリーさんが首を傾げる。

「普通の家族は助け合っているだろう? まぁ、例外は色々あるが」

お父さんの言葉にアーリーさんとナルガスさんがちょっと苦笑いした。

「助け合いか……そう言えば、マーシャさんも似たようなことを言っていた」

マーシャさん?

どこかで聞いたことがある名前だな。

何処でだっけ?

ん~、思い出せない。

「アイビー、ありがとう。幼馴染に伝えておくよ」

「いえ、関係改善はいつからでも始められると思います。時間はかかるだろうけど」

後は、幼馴染のテイマーのやる気次第。

助言は出来るけど、やるかやらないかは本人次第だからね。

いい結果になればいいな。

「それにしても、簡単に出られたな」

お父さんの言葉に、全員が微妙な表情をした。

緊急時は団長さんもしくはギルマスさんの許可証がないと森へ出る事は出来ない。

ナルガスさんたちも、森へ出る為に団長さんからの指示書を持っていた。

今回も、しっかりと団長さんから許可証を貰って来たが、門番さんたちはそれを確認することなく門を開けてくれた。

「あぁ、少しやばいな」

やばい?

「すでにその判断まで出来なくなっているという事だろうな。術の影響と考えていいだろう」

そういう事か。

術を解くための準備をしていると、団長さんは言っていた。

でも、まだ少し時間が掛かりそうだと。

間に合うといいけど。

「おかしいな」

「あぁ」

ジャッギさんとピアルさんが、周りの森を見て、足を止める。

ナルガスさんたちも周りを見て警戒している。

もしかして、私の予想が外れてしまったのかな?

「シャーミですか?」

「いや、違うよ。この周辺にいるはずの魔物が、まったくいないんだ」

アーリーさんの言葉に首を傾げる。

「この辺りが住処だし、上に巣があるのが見える」

ナルガスさんが見ている方を見ると、木の上に確かに小枝で作られた塊が見えた。

あれが、おそらく巣なのかな?

「今の時期は子育て中だと思うんだが、それがいない。1匹もいないのは異常だ」

気配を探るが、この近くに魔物の気配はない。

シャーミが何かした可能性があるかもしれないな。

「先を急ごう。ここの魔物について今は調べている時間は無い」

お父さんの言葉にナルガスさんが頷く。

シャーミの住処になっている洞窟まであと少しだと、ピアルさんが教えてくれた。

「あそこだ」

異変があった場所から少し歩くと、大きな洞窟の出入り口が見えた。

「俺たちは中の様子を見てくるから、待っていてくれ」

ナルガスさんとジャッギさんがそう言うと、洞窟に向かって姿勢を低くして行ってしまう。

ドキドキしながら2人を視線で追うと、無事に洞窟に近付けたのが分かった。

しばらくすると2人の背中が見えなくなってしまった。

それにどきりとするが、じっと待つしかない。

「本当にここまでシャーミが1匹もいなかったな」

ピアルさんの言葉に、確かにと思う。

シエルに怯えているといっても、1匹もいないのはおかしい。

消えた魔物に、おかしくなったシャーミ。

何だろう、気持ち悪いな。

「帰って来たぞ」

アーリーさんの声に視線を向けると、ナルガスさんとジャッギさんが姿勢を低くしてこちらに走り寄ってきた。

「どうだった?」

「それが……」

「どうした? いないのか?」

ピアルさんの言葉にジャッギさんが首を横に振る。

「洞窟の中に確かにシャーミの姿を確認できた。それと、ゴミが大量にあるのが確認できた」

ゴミ!

やっぱり、ここで合ってたのか。

そうなると、ゴミの魔力でシャーミがおかしくなった可能性が高いって事だよね。

「ゴミはどれくらいあったんだ?」

アーリーさんの言葉にナルガスさんが、眉間に皺を寄せる。

「大量にだ。奥まであってどれくらいあるのか全く分からない」

「そうか」

「シャーミの様子はどうだった? 近くまで行って来た割には洞窟内は静かだが」

お父さんの言葉に頷く。

本当に静か過ぎる。

魔物がいる森の動物は、気配に敏感だし耳もいいと聞いたことがある。

それなのに、まったく動きがない。

「丸くなって眠っていた。少し岩を蹴って音を出してしまったんだが、反応が無かった」

眠っている?

音がしても眠っているなんて、おかしい事だよね。

「洞窟内を調べよう」

お父さんの言葉に、ナルガスさんたちが私を見る。

「一緒に行ってもいいなら、行きたいです」

「アイビーは大丈夫だ。シエル、何かあったらアイビーを乗せて安全な場所へ運んでくれ」

シエルはお父さんの言葉に、1回大きく頷く。

「行くぞ」

見守るはずのお父さんが、先頭に立ち、歩き出そうとする。

いいのかな?

ナルガスさんたちを見ると、特に違和感を覚えないようだ。

……いや、駄目だよね。

まぁ、後でお父さんに注意するかな。

「アイビーは俺の後ろに来てくれ」

「分かった」

すぐにお父さんの後ろに移動すると、シエルがすっと隣に来てくれた。

「寝ていると言っても、何時起きるか分からないから、警戒は怠るなよ」

「うん。お父さんも気を付けて」

「あぁ」

お父さんは返事をした後、私の後ろにいるナルガスさんたちを見る。

そしてちょっと苦笑を浮かべて洞窟へ向かった。