軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

408話 似た者親子

メリサさんとエッチェーさんが、大興奮で夕飯を作るために部屋から出ていった。

団長さんが目を覚ました事が、相当嬉しかったみたい。

ただ、目が覚めたばかりの団長さんはそんなに食べられないと思うのだけど……。

「ありがとう」

ナルガスさんが、団長と話すアーリーさんを見て笑みを見せる。

「いえ、アーリーさんと団長さん嬉しそうです」

「団長が倒れる少し前に大喧嘩して、それからお互い意地の張り合いで、顔も合わせないようにしていたんだ。倒れた時も駆けつけたいのに、変に意固地になって行けなくて。団長の方も顔を見たいくせに、どうでもいいみたいな態度でさ。そうしたらあっという間に意識不明だろ? アーリーの奴、かなり後悔してたみたいだから」

団長さんが助かって良かった。

ナルガスさんをちらりと窺う。

その視線に気付いたのか、首を傾げて私を見る。

「ジナルさんと、ちゃんと話しましたか?」

「……あ~、まだかな?」

「いつでも話は出来る」

「えっ?」

「そう思ってるならそれは間違いですよ。明日誰がどうなるかなんてわからないんですから」

私の言葉にちょっと目を見張るナルガスさん。

そして苦渋に満ちた顔をした。

「分かっているけど、なかなかな」

「どうしてぶつかっていかないんですか? せっかく話が出来る距離にいるのに。まぁ、それはお互い様なんでしょうけどね」

ナルガスさんが微かに笑う。

「アイビーは怖いと感じたことは無い?」

「何がですか?」

「ん~、関係が壊れる事かな」

「……ナルガスさんとジナルさんの関係は既に壊れてますよ? それは私も怖いです」

「アイビー、容赦がないね。まぁ、本当の事だから仕方ないけど」

ナルガスさんが隣で項垂れてしまう。

もう少し優しい言い方のほうがよかったかな。

お父さんとの関係が壊れる可能性を考えると、私も怖い。

すごく怖い。

でも、だからこそ毎日が大切だし、沢山話をして、沢山思い出を作りたい。

そしてそれを、何かあった時の力にする。

思い出にすがるのではなく、お父さんと向き合うための力に。

「ジナルさん、ナルガスさんが上位冒険者になったと話してくれた時、すごく嬉しそうでした。ソルの治療が終わって、でもまだ魔力の傷を癒していない時のあなたはまるで廃人みたいで」

「俺が?」

あれ?

言ってなかったかな?

「そうです、ナルガスさんがです。で、廃人になったナルガスさんを見た時のジナルさんの表情は無でした。目の前の現実を受け止められていなかったんだと思います。今のナルガスさんに戻った時のジナルさんの喜びは態度にはあまり出てなかったですが、本物でしたよ。大切にされてますよナルガスさんは」

ナルガスさんの視線が、団長さんに事情を説明しているジナルさんに向く。

彼を窺うと、口元が微かに上がっている。

この親子、何処までも似ている。

もう少し嬉しいという態度を表に出せばいいのに。

「ご飯できましたよ。食べましょう」

ジナルさんたちが団長さんに事情を説明し終わると、ちょうどエッチェーさんが部屋にやってきた。

団長さんには特別な食事が用意され、私たちにはメリサさんの自慢の料理が振る舞われた。

ちょっとしたパーティのようで、ソラたちも喜んでいる。

というか、すごく周りに可愛がられている。

「人気だな」

お父さんの視線の先には、団長さんの肩に乗っているソル。

いいのだろうか?

病み上がりなのに。

「そう言えば、団長さんはすごく元気ですね」

意識不明から目が覚めたとは思えない状態に首を傾げる。

「それはきっとソラの力だよ。俺も片腕を失った時に思ったんだが、回復がすごいんだ」

「回復?」

「あぁ、片腕を失って倒れていたから相当な出血があったはずだ。なのに、その日に自分の足で町に戻ることが出来た。普通は無理だから」

そうなんだ。

ソラの力は傷を癒すだけに留まらないんだね。

「あっ」

視線を団長さんから部屋の中に移すと、ジナルさんとナルガスさんが一緒のソファに座って食事をしていた。

どちらも居心地悪そうな表情で、なんだか笑えてくる。

様子を見ていると、ぽつり、ぽつりと会話しているのが分かった。

「あの親子は似てるよな。家族以外の問題には強いのに、家族の問題には弱いところとか、ほら、あれも一緒」

「ぷっ、くくく」

どんな話をしたのかは分からないが、お互いがそっぽを向いているのにどちらも少し嬉しそうな表情をしている。

まぁ、何とか納まるところに納まったのかな。

良かった。

食事がある程度終わると、これからの事が話し合われることになった。

「ドルイドさん、アイビーさん、この度はありがとうございます」

ベッドの上で団長さんが頭を下げる。

それを見て少し顔が引きつった。

どうしてソルは肩から団長さんの頭に移動して、ふんぞり返っているの?

「いえ、気にしないで下さい。くくく、目が覚めてよかったです。ぷっ」

お父さんが何とか返事をするが、時々笑いが混じっている。

それを不思議そうに顔を上げた団長さんが見るが、頭の上でソルが落ちそうになって慌てている。

「ごめん無理。あははは。団長さん、頭の上にソルが」

「えっ? あぁ、なぜかここで落ち着いていたから」

少し緊張感が漂っていた部屋が、ソルの行動で緩む。

もう、わざとなんだろうか?

謝りながらソルを団長さんから受け取る。

「ソル、大人しくしててね」

「ぺふっ?」

ジナルさんが、軽く手をパンと叩く。

「話を戻そう。次にどうするか団長と決めたんだが、アイビーたちに協力を願いたい」

「分かりました」

団長さんが、2枚の紙をお父さんに渡す。

間違いなく契約書だね。

この村だけで大量だな。

お父さんと私の名前を書いて、それぞれが1枚ずつ持つ。

「ありがとう。申し訳ないんだが、ギルマスと補佐を術から解放してもらえないだろうか」

団長さんの話にソラたちの様子を見る。

目がキラキラして、団長さんを見つめている。

「大丈夫そうです。協力できます」

私の言葉に安堵の表情を見せる団長さん。

「それと、王都にいるある人物に協力を仰ぎたい。ジナルたちには既に話したが、ドルイドさんとアイビーさんの許可を貰いたい」

それに首を傾げる。

どうして私たちの許可が必要なんだろう?

団長さんが必要だと思うのなら、連絡を取ればいいと思うのだが。

「魔法陣が関わっている以上、その人物の協力がどうしても必要なんだ。この村にいる冒険者たちを守るためにも」

「大丈夫ですよ。連絡を取ってください」

お父さんの言葉に団長さんが小さく頭を下げた。

私は、ずっと気になっていた事が解決できそうなのでホッとした。

ソルとソラでは助けられる人に限界がある。

この村の冒険者たち全員は救えない。

だから、どうするのか不安だったのだが、どうやら解決できる人がいるらしい。

「どうやって連絡を? ギルドでは止めた方がいいと思うが」

確かに誰が敵なのか分からないからね。

「問題が起きた時の予備として、団長とギルマスには『ふぁっくす』が支給されている。それを利用してこの家から送る事になる」

良かった。

それなら安心だ。

王都にいる人か……フォロンダ領主に連絡とってみようかな。

そうだ、師匠さんに問題になっている魔物について質問していたんだった。

商業ギルドに取りに行きたいけど、大丈夫かな?

まだ、こちらの動きを察知していないかもしれないけど、知られていたら?

「あの~、ファックスを私も使用できますか?」

「ん? 誰に連絡を?」

「お父さんの師匠さんに魔物について訊いていたんですが、ギルドに取りに行くべきか迷ってしまって。あとフォロンダ領主に連絡を取りたいです」

「フォロンダ領主様? 知り合いかい?」

「はい。団長さんも知り合いですか?」

だったら話が早いんだけどな。

「いや、彼は王家からの覚えもいい貴族の1人だから、有名なんだ」

そうなんだ。

それは知らなかったな。

いや、王家……何か聞いたような?

まぁ、いいか。

「フォロンダ領主様か、彼に協力を仰げば……。申し訳ないが、フォロンダ領主様に俺を紹介してもらえないだろうか?」

「はい。分かりました」

大丈夫だよね。

きっと。

そう言えば、緊急の時の連絡先を聞いているんだけど、それを使っていいのかな?

緊急だよね、たぶん。