軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

407話 自慢したい!

「ちょっと待って。あのアダンダラというのは? シエルという子はスライムよね?」

メリサさんが困惑した表情でシエルを見ている。

周りを見ると、エッチェーさんやアーリーさんたちも困惑した表情になっている。

そう言えばメリサさんたちには、まだ何も話してなかったな。

あれ?

ナルガスさんやアーリーさんたちにもまだ話してなかったっけ?

駄目だな。

気持ちに余裕がないからなのか、どこまで話したのか曖昧みたい。

とりあえず今必要な事だけは話しておかないと。

「この子は本当はアダンダラという魔物なんです。今はフレムが作った魔石でスライムに変化してますが」

「「「「「「…………」」」」」」

あれ?

皆、黙ってしまった。

「少しだけ聞いていたから衝撃が少ないけど、後半すごい事をさらっと言ったな」

「ジナルにも聞こえたんなら、聞き間違いではないんだな」

「フィーシェ、聞き間違いではないから安心しろ」

「どこに安心する要素があるんだ? 契約しておいて良かったよ」

「そうだな。どうしたんだ? ガリット?」

「フィーシェの言う通り契約のありがたみを実感してた。あの契約方法だと、不味い事を言いそうになったら警告が発せられるからな。うん、間違っても馬鹿な事をしなくて済む。というか、彼女は話している内容の重要性を認識してるのか?」

「どうだろうな。でも、ドルイドが周りを警戒する理由がようやくわかったな。ジナルの最初の行動は間違いなく警戒されるわ」

「思い出させるな。あれは失敗だったと後悔してる」

ジナルさんたちが、こそこそと何か話しているが声が小さくて聞こえない。

なぜか3人とも、安堵しているような雰囲気だけど何かあったのかな?

心配になりお父さんを見るが、にこりと笑ってくれたので気にしなくてもいいのだろう。

「なんというか、すごいのね」

メリサさんが表現しづらい顔をしながら小声で言う。

確かにフレムたちはすごいよね。

そうだ、後は簡単に皆を紹介しておこうかな。

契約している人たちだから、ソラたちの事を話しても大丈夫だよね。

「えっと順番に紹介していきますね。ソラは青色のポーションを瓶ごと食べるんです。剣も食べて新しい剣を作れるんです。すごいでしょ? で、フレムは赤のポーションを、この子も瓶ごと食べられるんですよ。魔石を色々作る事が出来て。すごいでしょ?」

「えっ、有機物と無機物?」

誰かの声が聞こえたけど、自慢したくてたまらないからちょっと無視させてもらおう。

だって、すごい子たちなのに誰にも言えないんだもん。

「ソラとフレムはポーションも作ることが出来るんです。で、シエルはアダンダラが本当の姿で、この子すごく強いんです。森の中でもシエルがいたらすごく安全なんです。しかも森に詳しくて、魔石が採れる洞窟とか教えてくれて。可愛くてすごい能力を持ってるんです。ソルはゴミから魔力を吸収出来るんです。少し前に、ゴミの魔力で凶暴化した魔物の亡骸からも魔力が吸収できる事を知って驚きました。で、今回は魔法陣による術から解放する能力があることも分かって。やっぱりすごいですよね。あっ、言い忘れてた。ソラはね」

「待った!」

「どうかしましたか? ピアルさん?」

もっと自慢したいのに……違った、皆を紹介したいのに。

疲れた表情で私を見つめるピアルさん。

なぜか大きなため息を吐かれた。

「えっと、急にすごい事を色々言われると困るというか整理が追いつかないというか」

「それは、すみません」

一気に説明したのが駄目だったのか。

でも、ソラたちのすごさを知ってほしかったんだよね。

ここにいる人たちは、マジックアイテムの紙で契約してくれた人たちだから大丈夫だと思ったら止まらなかった。

「えっと、とりあえずすごいレアスライムたちという事は分かりました。あっ、1匹はアダンダラですね」

ピアルさんの言葉に頷く。

確かにソラたちはすごいレアだろうな。

シエルはきっとそこにいるだけで驚かれるほど、珍しい魔物だ。

「アイビーさん」

メリサさんが私の前に来るとじっと見つめてくる。

その真剣な表情に緊張してしまう。

「はい」

「アイビーさんが、契約した私たちに真摯であろうとすることは分かりました。でも、契約しているからといって信じすぎるのは駄目です。マジックアイテムでの契約はどちらかが死ぬまで、もしくはお互いが納得した場合は無効になります。そして今のところ、契約を妨害するようなマジックアイテムはありません。ですがそんな妨害アイテムが生まれないとも限りません。だからマジックアイテムの紙を使用した契約でも、相手をしっかり見て判断しないと駄目ですよ」

「はい」

真摯と言うより自慢なんだけど……ごめんなさい。

それにしても、私は本当に巡り合わせがいいと思う。

真剣に注意してくれるという事は、それだけ心配って事だもんね。

「大丈夫ですよ。アイビーは無意識に人をちゃんと選んでいますから」

人を選んでいる?

お父さんの言葉に首を傾げる。

そんな事をした記憶はないですが。

「そうなんですか?」

エッチェーさんが私を見る。

私はした覚えがないので、首を横に振る。

「無意識だから、アイビー自身は気付いてないですけどね」

「そうなの? お父さん」

「あぁ」

知らなかった。

いつそんな事したんだろう。

「ぷっぷぷ~」

部屋に響いたソラの声に全員がベッドへと視線を向ける。

ソラはちょうど団長さんから離れたところのようで、団長さんの頭の隣で縦に伸びていた。

「お疲れ様、ソラ。もう団長さんは大丈夫?」

「ぷっぷぷ~」

ぴょんと飛び跳ねて私の腕の中に飛び込んでくる。

正面だったので、危なげなく腕の中に納まるソラ。

その表情を見ると、なんとも満足そう。

ソルの時も思ったけど、術から解放する事や魔力の傷を癒すことは疲れないんだろうか?

ソラも含めて、元気になっているような気がする。

「あっ、父さん!」

「団長!」

ソラを撫でていると、団長の様子を見ていたアーリーさんたちから声が上がる。

そしてそれぞれが安堵の表情を浮かべた。

無事に団長さんの意識が戻ったみたいだ。

良かった。

ホッとしてソラを見ると、ソラも満足そうにしている。

本当にすごい子たちだよね。

やっぱりもう少し自慢したかったな。

「お疲れさん」

傍に来たお父さんがソラの頭をポンと撫でる。

そう言えば、術によって魔力が傷ついたからソラが治療したのに、術からの解放は必要なかったのかな?

ソルは団長に何もしてないよね?

術は関係なかったという事かな?

となると、毒?

毒の治療をフレムとソラの2匹で行ったのかな?

……駄目だ、どれも想像でしかない。

魔法陣の情報がないと、身動き取れないな。

魔法陣では何が出来て、何が出来ないのか。

それが分かれば、対処も出来るかもしれないんだけど。

「アイビーさん」

名前を呼ばれたので、下を向いていた顔を上げる。

前には目元が赤いアーリーさん。

「ありがとう。助けてくれて」

アーリーさんをじっと見る。

この家に来てから、ずっと強張っていた顔から力が抜けて笑みを浮かべている。

張り詰めていたような空気も感じない。

「ソラたちがお役に立ててよかったです。お父さん、目が覚めてよかったですね」

私の言葉に少し恥ずかしそうに頷くアーリーさん。

その表情を見ていると、嬉しくなる。

彼は私の腕の中にいるソラをそっと撫でる。

「ありがとう」

アーリーさんの声が、微かに震えた。