軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

374話 何もわからなかった

あっと言う間にお皿の中の肉とサラダは無くなり、気が付けばスープも完食。

いつの間にお代わりしたのか、気付かなかった。

「どうぞ」

お父さんがお茶を 淹(い) れてくれたので、ジナルさんが持って来てくれたお菓子をお皿に並べる。

机の上にのせると、ガリットさんが嬉しそうな表情をした。

「ジナルさん、いただきます」

「どうぞ」

フィーナを一口食べると、ふわっと柔らかい味が口に広がる。

優しい味で美味しい。

甘さもしつこくなく、ホッとする。

「そんな表情で食べてくれると、買ってきたかいがあるな」

ど、どんな表情してたんだろう。

ちょっと恥ずかしくなって視線を 逸(そ) らす。

「あ~やっぱり美味いな」

ガリットさんが2個目のフィーナに手を伸ばそうとして、ジナルさんにその手を叩き落とされる。

「お前は遠慮しろ」

「だからって叩くなよな」

ガリットさんが手をさすりながらジナルさんを睨む。

それを無視してフィーナを美味しそうに食べるジナルさん。

その態度に諦めたのか、ガリットさんはお茶に手を伸ばした。

「どうぞ?」

まだお皿の上にはフィーナが残っているので、ガリットさんに勧める。

それにジナルさんが首を横に振る。

「いえ、それはアイビーさんに買ってきたので。ガリットは自分で買えばいいから」

さわやかな表情なのに、どことなく怖い。

ジナルさんはきっと腹黒さんだ。

「準備しますね」

お父さんの言葉にガリットさんが、不思議そうにお父さんを見る。

テントに入り、戻ってきた手にはマジックアイテム。

周りに話が漏れないようにするものだ。

それを見て3人が少し驚いた表情をする。

あれ?

特に聞かれても問題ない内容だったのかな?

「いりませんでしたか?」

お父さんの言葉にジナルさんが首を横に振る。

「いや、助かるよ。まだ発表前の情報だから」

お父さんはマジックアイテムのボタンを押すと、それを机の真ん中に置く。

今使用しているテーブルは、秘密の話をする予定が無かったから機能の無いテーブルだった。

「そうですよね。はい、起動したので話していただいて大丈夫ですよ」

「分かった。結果から言うが、調査隊では調べきれなかった」

「「えっ!」」

調査隊が調べられなかった?

村の噂では無事に調査が終わったが問題があったという感じだったけど、違ったんだ。

それにしても、どうして調べきれなかったんだろう?

調べるのが苦手な人が集まったとか?

それは無いか。

上位冒険者たちが集められたんだから。

「原因は何ですか?」

「森の奥に行く事は出来たらしい」

「はい」

「森の奥へ行って原因や魔物の痕跡を探したらしいんだが、どちらも分からなかったそうだ」

どちらも?

違法な捨て場がなかったという事?

だったら、問題になっている魔物は変化していないという事になる。

「分からないという事は結果は出ていないんですね」

「あぁ、調査途中に襲撃があって怪我人が出たため、帰って来たらしい」

ジナルさんの言葉にお父さんが頷く。

つまり、調査の途中という事なのかな?

「調査を続ける必要はありそうですが、そのためには討伐隊も同時に組む必要がありそうですね」

お父さんの言葉に、ジナルさんが首を横に振る。

「無理だ。上位冒険者にしか感じられない魔物だ。討伐隊もそれ相応の者たちが必要となるが、人数が揃わない。旅の冒険者を集めても限界があるからな」

確かに調べるにも、討伐するにも、人手が足りないよね。

上位冒険者はもともと人数も多くないし。

「上位冒険者にあと1歩の中位冒険者や、旅の上位冒険者に参加を呼び掛けるかもな」

フィーシェさんの言葉にジナルさんが頷く。

正体不明の魔物か。

違法な捨て場がないとは限らないけど、今のところは無し。

という事は、もともといた魔物という事になるよね。

でも、ハタカ村の人たちは知らない魔物。

何処からかこの村にやってきた魔物とか?

「あの」

私の声にお父さんが視線を向ける。

「魔物が住む場所を変える事はあるの?」

魔物は住み慣れた場所からあまり離れないと聞いた。

でも、もし例外がいたら。

それが今回問題になっている魔物の可能性もある。

森の最奥から出てきた魔物とか。

「そうだな、あまり聞かないがない事は無い。だが、魔物にも縄張りがあるからな」

そうか、魔物同士の縄張り争いがあるか。

「この村周辺で見かける魔物に変化は無いか?」

ガリットさんがフィーシェさんに視線を向ける。

「調べたが問題は見つけられなかった。数が極端に減った魔物の報告は無いし、縄張りが侵されて興奮しているという報告もない」

すごいな調べてるんだ。

「となると、他の場所から移動してきた線は考え辛いな」

「あぁ」

そうなると、やっぱり魔力による突然変異なのかな?

でも、違法な捨て場は今のところ見つけられなかった。

何処を探したんだろう?

今までの違法な捨て場は、洞窟や魔物が現れやすい場所の近く。

比較的見つけやすい場所にあったよね。

もしも、見つけにくい場所にあったら?

「違法な捨て場が、見つけにくい場所にある可能性はありますか?」

「見つけにくい場所? もしあったとしてもそれほど規模は大きくないだろう」

そうだよね。

見つけにくかったら、冒険者たちが利用することは無い。

利用されないのだから捨て場の規模は小さくなる。

魔物を変化させるほどの魔力は集まらないか。

「はぁ、明日も話し合いか。ゆっくりして~」

フィーシェさんの言葉にガリットさんも頷く。

「時間がないから無理だろ。問題の魔物が増えている可能性もあるしな」

魔物が増えている?

「どういうことですか?」

お父さんの質問にガリットさんが眉間に深いしわを作る。

「調査隊が森へ入ったら、すぐに何かを近くに感じたらしい。その時の感じた数と、森から戻ってきた時に感じた数が倍ぐらい違ったそうだ。冒険者によっては見られている数が増えていると感じたらしい。まぁ、それも感覚的な事だから、絶対にそうだとは言えないんだけどな」

でも、上位冒険者が感じた事。

無下にできる情報でもないよね。

それに魔物が増えるのは駄目。

増えた魔物は村を襲う可能性が高い。

そうか、この村は危ないんだ。

その事実にちょっと恐怖心がわく。

不意に隣に座っているお父さんの手が、私の手をギュッと握る。

視線を向けると、「大丈夫」と頷いてくれた。

「それともう1つ、問題の魔物は少し知能が高いようだ」

知能が高い?

何か根拠があるのかな。

「なぜ、そう思うのですか?」

「冒険者たちの弱点をつくような攻撃を、数回受けたらしい。おそらく冒険者たちを見つけて後を追って探っていたんだろう」

なるほど追跡して、弱点を探したのか。

「厄介だな」

ぽつりとお父さんが素で言葉を口にする。

それだけ厄介という事なんだろう。

そうだ、突然変異を起こすのに必要な魔力ってどれくらいだろう。

本来の能力を凶暴化させて強くするのに必要な魔力も結構な量だったよね?

「あの、突然変異を起こすために必要な魔力量とはどれくらいですか?」

「ん? 必要なのは量ではないよ」

ジナルさんの言葉に、首を傾げる。

量ではない?

「凶暴化に大量の魔力が必要なのは確認されている。だが、突然変異はそこまで大量の魔力はいらないんだ。必要なのはマジックアイテムに残っている魔力」

マジックアイテムに残っている魔力か。

あれ?

そんなに大量に魔力がいらないなら、規模の小さな捨て場でも十分では?

「ギルマスと団長は、近隣の村に協力を仰ぐと言っていた」

「だが、難しいだろう」

「そうだな」

協力は仰げないという事?

どうして?

「さて、明日は早いからそろそろ戻るぞ」

あっ、終わっちゃった。

「そうだな、長居しても悪いしな」

ガリットさんが椅子から立ち上がり、腕を上に伸ばす。

「いえ、情報をありがとうございます」

お父さんの言葉に3人が首を横に振る。

マジックアイテムのボタンを押して起動を停止したジナルさんが、マジックアイテムをじっくり見つめている。

「どうしたんですか?」

「いや、しっかり整備されているみたいだったから」

「大切な物なので、道具屋の店主さんに整備をお願いしています」

「大切……そうか。アイビーさん、何か困った事があったら相談に乗るから」

ん?

困った事?