軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

289話 連絡をしてみよう

魔石をプリアギルマスさんにお願いできたので、ギルドから直で宿に帰ることが出来た。

「ふ~」

小さくため息をついて椅子に座る。

「なんだか疲れているな? 大丈夫か?」

「フレムが奇跡とか言われたのでちょっと驚いたと言うか、そんな存在に見られているんだなって思ったら……」

なんて言ったらいいんだろうな。

言葉に出来ないな。

「あぁ、確かにあれには驚いたな。普段のフレムを見ているからな」

普段のフレムか。

……ものすごく寝汚い。

最近は魔石の復活を頑張ってくれているが、それ以外はとにかく寝る。

どこでも寝る。

気が付いたら寝ている。

しかも盛大によだれを垂らして。

あれを見ていると、奇跡と言われる事にものすごい違和感を覚える。

だからかな?

なんとなくモヤモヤした気持ちになるのは……自分の気持ちなのに分からない。

あっ、後でよだれの付いたタオル洗っておかないと、フレム専用のタオルが無くなってたな。

「そうだ、昨日は寝てしまったが確認しておいた方がいい事があったな」

確認?

あっ、記憶のことか。

「うん。記憶のことだよね。でも、2人で一緒に忘れている可能性があるからどうするの?」

「細かな事まで確認する必要はないと思ってる。たとえば生活と旅に必要な事だけでもいいかなって」

なるほど。

確かに細かな事は分かった時点で何とかすればいいもんね。

生活に必要な事で一番大切なのはお金かな。

「生活に必要なのはお金かな?」

「あぁ、俺たちは共同で管理しているお金があることは覚えているか?」

「うん。ギルドに預けている家族口座の事だよね?」

「そう、それさえ分かっていたらお金については良いだろう。あっ、個人の口座も大丈夫か?」

「うん。忘れてないよ」

お金は生活に一番影響がある。

これを覚えていたら、ある程度忘れて失敗しても何とかなるよね。

「あとは……ソラたちの事はしっかりと覚えているから大丈夫だし。あっ、ポーションと魔石」

「それだったらマジックボックスに入れたよね?」

「あ~……思い出した、ベッドの隣の棚にある奴だな」

よかった、一瞬ちょっとひやっとしてしまった。

ドルイドさんも慌ててたな。

あっ、でも思い出したよね、今。

「切っ掛けがあれば思い出すのかな?」

私の言葉に首を傾げるドルイドさん。

「いや、自警団の詰め所を2人で忘れた時、建物まで案内してもらったが俺は中に入っても思い出さなかった。アイビーはどうだった?」

あの時は確か……建物が見えてもそれが詰所だとは気付かなかったな。

中に入っても、見覚えなんてなかったし。

「まったく覚えてなかった」

「今思い出したのは、消え方が中途半端だったのかもな」

なるほど。

シエルが途中で魔法を切ってくれたから、記憶に何か残っていたのかもしれないって事か。

「まぁ、重要な事は忘れてなかったから充分だろう。あとはそれぞれの交友関係だな」

交友関係か、えっとラトメ村のオグト隊長さんとヴェリヴェラ副隊長さん。

相変わらずヴェリヴェラ副隊長さんはオグト隊長さんに振り回されているのかな?

オトルワ町では沢山の人にお世話になったよね。

炎の剣のセイゼルクさん、ラットルアさん、シファルさん、ヌーガさん。

雷王のボロルダさん、リックベルトさん、ロークリークさん、マールリークさん。

冒険者ギルドのギルマスさん……あれ?

名前……なんだっけ?

えっと次、次、バークスビー団長さんとアグロップ副団長さん、ロゼさんは紹介された時ちょっと怖かったな。

類を見ない強面だった。

後はフォロンダ領主さん、美味しいお菓子をいっぱいカゴに詰めて持って来てくれたっけ。

マカシャさんやカルアさん、皆元気かな?

「どうした?」

「あっ、今までお世話になった人たちが元気か気になって」

「連絡取ってみたらどうだ?」

「連絡?」

「あぁ、ギルドの『ふぁっくす』で連絡が出来るって話したことあるよな?」

あっ、そうだ。

ファックスがあるんだった。

でも、私が連絡をしても大丈夫かな?

ほんの少し一緒にいただけだからな。

「アイビーが何を考えているのかなんとなく分かるけど、送ったら皆喜ぶと思うぞ。絶対」

ドルイドさんが私の頭をゆっくりと撫でる。

少し不安を覚えるけど、無事に旅を続けていることを伝えたい。

ファックス使ってみようかな。

「ドルイドさん」

「何?」

「費用は?」

「……アイビーらしいよな、その質問。お金は送る時だけ必要で1回500ダル」

500ダル、ちょっと高いな。

でも、皆が元気なのか気になるし。

私が元気だとも伝えたい。

「あっ、忘れてた」

「何ですか?」

「『ふぁっくす』を使ってゴトスに連絡しただろう。返事が返ってきているか、ギルドで確かめないと駄目だったんだが、すっかり忘れていたよ」

そう言えば、そうだったな。

私もすっかり忘れていた。

「よし! 明日、確かめに行くことにしよう、ついでにアイビーがお世話になった人達に『ふぁっくす』を送ろうか?」

「うん」

ここでグダグダ悩んでいても仕方ない。

ファックスで元気な事を伝えよう。

もしかしたら、返事をくれるかもしれないし。

なんだか、今からワクワクしてきたな。

………………

う~、今日の事を考えていたらなかなか寝付けなかった。

でも、仕方ないよね。

初めての事だし。

それにしても何を書こうかな?

今の事をそのまま伝える?

他には?

「アイビー、もっと気軽に考えて大丈夫だから。ちょっと緊張しすぎ」

「だって、初めてだし。なんだか色々考えちゃって」

「知ってる。昨日何度も寝返りうってたよね?」

「あっ、ごめん。寝るのに邪魔だったよね」

隣で何度も動かれたら熟睡できないよね。

失敗した。

「いや、それは大丈夫だけど。そんなに緊張することか?」

「えっ~と……忘れていたりしないかなっとか、ファックス送ったら迷惑にならないかなっとか色々考えちゃって。そうしたらどんどん不安な気持ちが大きくなって」

「大丈夫だって、話を聞いた限りでは絶対そんな事はないから」

ドルイドさんの言葉に首を傾げる。

どうしてそう自信を持って言えるのだろう?

確かにかなりお世話になったから、忘れられているなんて思っていないけど。

それでも、迷惑には思うかもしれないって思ってしまって……。

「アイビーの保証人になってくれた人たちだろう? それにアイビーが人を信じようとした切っ掛けを与えてくれた人たちだ。そんな人たちなんだからもっと自信を持って。そうでないと彼らに失礼だよ」

そうか、私のこの不安は彼らにとても失礼だ。

今思い出しても、本当に私の事を心配してくれていた。

「そうだよね、うん。私の大切な人たちをもっと信じないと駄目ですよね!」

頭をゆっくりと撫でるドルイドさんを見る。

凄く嬉しそうな表情で私を見つめている。

それに私も笑顔を返す。

もう大丈夫。

冒険者ギルドに入ると、ドルイドさんは迷わず部屋の隅に置かれている机へと向かう。

そしてその前に座っている男性に、話しかけた。

「『ふぁっくす』の返事を確認しに来ました」

「ギルドカードをお持ちですか?」

「これです」

「お待ちください」

男性がギルドカードをマジックアイテムに翳すと、後ろの四角い形のアイテムが動き出した。

そしてしばらくすると、2枚の紙がドルイドさんに手渡された。

「ありがとう。あと、数ヶ所に送りたいのだが、紙を貰えますか?」

「はい。ではこちらにお願いします」

男性が紙をドルイドさんに渡す。

「はい。アイビー、『ふぁっくす』には専用の紙が必要だから」

紙を受け取り、近くに置いてある机に向かう。

えっと、最初はなんて書けばいいのかな?

お久しぶりですからでいいのか?

それともお元気ですか?

「……なんて書こう……」

送って大丈夫かなという不安は随分小さくなったけど、書き方が分からない。

どうしよう。