軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

278話 レア好きなので

興奮した事が恥ずかしかったのか、さっと席を立つピス副団長。

チラリとシエルを見たが、すぐに視線を逸らして部屋を出て行ってしまう。

それを見たタブロー団長が苦笑を浮かべる。

しばらくすると、ローズさんのお店で会ったような落ち着いたピス副団長さんがお茶を持って来てくれた。

「失礼しました」

「いえ」

ドルイドさんが、ピス副団長さんの変わりように少し驚いている。

プリアギルマスさんは視線を逸らしているが、肩が微かに揺れているので笑いを抑えているようだ。

「えっと、少しギルマスに話を聞きました。記憶が 曖昧(あいまい) になっているとか」

タブロー団長さんが、気持ちを切り替えたのかドルイドさんに話しかける。

ドルイドさんもそれに頷いて、今日経験したことを話し始めた。

「とりあえず、最後まで話を聞いてから質問をお願いします。途中、アイビーと記憶が異なる事があるかもしれませんが、そこは気にしないで下さい」

机に人数分のお茶が置かれたので、ピス副団長に頭を下げる。

にこりと笑ってくれた彼は、ちらりとシエルを見る。

やはりかなり気にしているようだ。

先ほどシエルの柄を見て、どこかで見た事があると言っていたからアダンダラを思い出すかもしれないな。

「今日、我々は森へ出かけました。ここから30分ぐらいの場所です」

あれ?

そんなに近かったかな?

「ドルイドさん1時間半ぐらいの場所だったよ?」

「そうだったか?」

「うん」

ドルイドさんが首を傾げる。

「すみません、場所については後にします。えっと、森の奥で洞窟を見つけました。その洞窟は入口だと思われる部分が崩落して入れない状態でしたが、最近出来た新しい入口がありました」

「洞窟」

プリアギルマスさんが洞窟に反応した。

魔石が採れていた洞窟が崩落したと言っていたから、新しい場所が発見されたとなれば嬉しいだろうな。

確かあそこには魔石が……あったような、無かったような……どっちだったかな?

「その洞窟の中には、この村の守り神だと思うのですが巨大なサーペントが横たわっていました」

「「えっ!」」

「はっ?」

3人の驚いた表情。

さすがに守り神の話が出るとは思わないよね。

「ですが意識が無く、心配になり傍に寄ろうとしたら……なんだっけ?」

違和感はあるが思い出せないようだ。

えっとあの時は、

「不気味な灰色の……確か魔力を感じる灰色の何かがサーペントさんを覆い隠してしまったんですよ」

そう、そんな感じだったはず。

「ソラ、あってるかな?」

「ぷっぷぷ~」

あってるみたい、良かった。

「その魔力のせいで近づけないし、サーペントさんも苦しみだして」

「そうだったな。俺たちでは手も足も出なかったんだよな。そんな時、シエルが魔力で問題の魔力を消してくれたんですよ」

2人で記憶を合わせながら話していると、3人の眉間に深い皺が。

「灰色の魔力が消えてからサーペントさんは元に戻って……その前に何かあったような」

私が思い出そうとすると、ドルイドさんが思い出した。

「フレムの魔石だ。フレムが新しい魔石を作って、それでサーペントが目を覚ましたんですよ」

あぁ、そうだった。

フレムのあの綺麗な魔石が、サーペントさんの目を覚ましてくれたんだよね。

「それで」「ちょっと待ってください」「……はい?」

タブロー団長さんがいきなり話を止めて、部屋を出て行く。

どうしたのかと扉をじっと見ていると、数分で戻ってくる。

その手には3枚の紙。

どうやらマジックアイテムの紙のようだ。

そして、何やら書き込みだしそれをプリアギルマスさんとピス副団長さんに渡す。

2人はそれを確認して、すぐに何かを書いてタブロー団長さんに渡した。

「えっと話を続けても?」

「ドルイドさん、少し記憶の混乱で警戒心が薄れているようです」

警戒心が薄れている?

ドルイドさんと顔を見合わせる。

「なので、ここで聞いた話は他言無用という契約をします。これがその契約書です。確認してください」

タブロー団長さんが持ってきた紙は契約を結ぶための物だったらしい。

ドルイドさんがそれを確認している。

私にも1枚、渡される。

1つ、ドルイド、アイビー両名の話したことについて他言しない。

1つ、レアスライムについて他言しない。

1つ、上記の違反をした場合は奴隷落ちとする。

また、賠償金を相手の言い値で支払うモノとする。

また、村にとって重要な情報は情報源を隠して使用するモノとする。

私たちよりの契約内容だけど、いいのかな?

まぁ、3人とも既に名前を書き込んでしまっているので、良いのだろうけど。

ドルイドさんがお礼を言って名前を書き込む。

次に私も自分の名前を書き込んだ。

「タブロー団長、ありがとうございます。確かにフレムの魔石については言う必要がなかったですね」

そうなのかな?

「えっと、話を続けますね。そこでサーペントを大きく囲う魔法陣が出現しました。その後、確か雨が雪に変わった事に気が付いて、魔法陣のことを話そうと急いで村に戻ってきたんです。で、合ってるよな?」

ドルイドさんが私に同意を求める。

思い出す限りではあっているので頷く。

だけど何か忘れているような気がするな、何だっけ?

「村に戻ってきてから、記憶が変わっている事。ところどころ記憶が抜け落ちていることに気が付き困っているところを、プリアギルマスに助けられました」

ドルイドさんが話を終えると、静寂に包まれる。

前の椅子に座っている3人は、険しい表情で考え込んでいる。

なんだか空気が重い。

「大丈夫ですか?」

あまりに沈黙が続くので、心配になり声をかける。

私の声にプリアギルマスさんが、笑って頷いてくれた。

「ありがとう、大丈夫です。あまりの事に、頭を整理するのに時間がかかっただけなので」

プリアギルマスさんが、冷めてしまったお茶を飲む。

そして小さく深呼吸をした。

「質問、良いですか?」

「はいどうぞ」

プリアギルマスさんが、真剣な表情でドルイドさんを見つめる。

「洞窟の正確な場所を教えて頂けますか? もちろん洞窟の発見者なので、魔石が見つかればその1割をお支払します」

やはり冒険者を束ねるギルマスさんだけあって、洞窟が気になるのかな?

それにしても、魔石の1割って何だろう?

「すみません。先ほどのアイビーの話から、俺では洞窟にはたどり着けません。記憶がおかしいので」

「そうですか」

プリアギルマスさんが残念そうな表情をする。

「アイビーか、シエルたちなら場所が分かるかも知れませんが」

私も自信がないな。

なのでそんな期待の眼差しを向けられると、ちょっと視線が泳いでしまいます。

「分かりますか?」

「それが、私も今の自分の記憶に自信がありません。シエル、洞窟まで案内できる?」

「にゃうん」

シエルの元気な声にホッとする。

「出来るみたいです。よかった」

シエルなら間違いなく洞窟に辿りつけるだろう。

プリアギルマスさんを見ると、何故か私とシエルを交互に見て驚いていた。

「俺も質問良いですか?」

ピス副団長が手をあげる。

ドルイドさんが頷く。

「そのシエルと呼ばれるスライムですが。本当にスライムですか? その柄がどうしても気になってしまいまして。本で見ただけで、実物は知りませんが、アダンダラの柄にそっくりなんです」

「ピス副団長、今その質問なのか?」

タブロー団長さんのちょっと呆れた声。

「私はレアに目が無いんです!」

そんな宣言されても。

ほら、タブロー団長さんもプリアギルマスさんも頭を抱え込んでるし。

ドルイドさんは苦笑を浮かべている。

そして、ちらりと私に視線を向けた。

どうやら言うか言わないかの判断は、私に任せてくれたみたいだ。

ん~、ソラが大丈夫だと判断したし。

「シエルはスライムでは無くアダンダラです」

「「…………」」

「なっ、やっ、そっ」

うん、ピス副団長さん興奮しすぎだ。

「ふ~、すまないちょっと休憩しよう。お茶を淹れるよ。で、その間にピスは落ち着け。何でもいいから落ち着け!」

タブロー団長さんが、立ち上がると同時にピス副団長さんの肩を思いっきり叩く。

「痛い!」

「頭を冷やしてくれ。ピスがその状態だと話が進まない」