軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

277話 とりあえず確認

「こちらの部屋を使ってください」

プリアギルマスさんに、簡単に事情を説明するとかなり驚かれた。

それをドルイドさんが何とか説得して、案内してもらった自警団詰所。

そこでタブロー団長さんに、少し2人にしてほしいとお願いして部屋を借りた。

「すみません、後でちゃんと説明しますので」

「いいですよ。ドルイドさんとアイビーさんがどういう性格なのかすこしは知っていますから。きっと何か重要な事なのでしょう。では、話が出来る状態になるまで待っていますので」

最初の頃とは全く違うタブロー団長さん。

その話し方や対応には、団長としての貫録さえ窺える。

人の成長って凄いな。

「ふ~、さすがにちょっと混乱してきた」

「大丈夫ですか? ドルイドさん」

椅子に座って大きなため息をつくドルイドさん。

心なしか先ほどより顔色が悪い。

「アイビーって胆が据わってるな」

胆が据わっている?

そうでもないと思うけど。

「いや、こんな事になっても落ち着いているから」

「それは、ドルイドさんもいるし、ソラたちもいるから。あっ、ソラたちを出しますね」

「あぁ、マジックアイテムを起動させるよ」

「お願いします」

この辺りの事はちゃんと2人とも覚えているようだ。

バッグの蓋を開ける。

「ぷっぷぷ~」

ソラ。

「にゃうん」

シエル。

「てりゅ~」

フレムは寝ぼけているな。

よし、3匹はちゃんと分かる。

ドルイドさんを見ても、しっかりと頷いてくれたので大丈夫と。

「くりゅ」

で、最後の……最後?

バッグの中を見る。

真っ黒の小さい、小さいスライム発見!

「今、声が聞こえたけど気のせいか? アイビー?」

「なんでしょう。この子」

バッグに手を入れてそっと掌に乗せる。

そしてドルイドさんの目の前に手を持って来る。

私のちいさな手の中に完全に収まってしまうスライム。

しかも真っ黒。

「「…………」」

どうして問題が後から後から。

「とりあえず、このスライムは問題ないかな?」

ソラたちに向かって黒のスライムを見せる。

ソラとシエルはプルプルと震えて、問題なしと教えてくれる。

そうと分かれば、後回し。

今は、魔法陣の方に集中しよう。

「よし、この子は後で。今は魔法陣による弊害です」

「やっぱり胆が据わってるよ」

ドルイドさんがどこか尊敬の眼差しを向けてくるけど、なんでだろう。

何か今のやり取りであったかな?

問題を後回しにしただけなんだけど。

「えっと、今話し合うことは」

「記憶のことだろう」

「えっ?」

「ん? 違うのか?」

それは別に今ではないと思うけど。

私の不思議そうな表情に、首を傾げるドルイドさん。

ちょっと沈黙が続き、ドルイドさんが少し笑って頭を撫でた。

「アイビーは何をする予定だった?」

「プリアギルマスさんとピス副団長さんが問題ないかソラに聞くつもりでした」

私の返答に驚いた表情を見せるドルイドさん。

「ドルイドさんは何をする予定だったの?」

「記憶が何処まで変わっているのか、消されているのか話し合うのかと思った」

それはそれで重要だとは思うけど。

「2人で話しても、一緒に忘れてしまっていたら気付かないよ?」

「確かにそうだな」

とりあえずソラに2人が安全か確かめよう。

どちらも揺れて安全だと判断されたので、これからの話し合いには2人の参加をお願いすることにした。

「えっと、ソラ、シエル。あっ、フレムおはよう」

「てっりゅりゅ~」

フレムが起きたのは丁度よかったな。

ふ~、ちょっと緊張する。

私としては、これからする質問がとても重要だと思うから。

「聞きたいことがあるから教えてね。少し前に森の中に入った事は覚えてる?」

3匹の答えは覚えている。

ドルイドさんも私が何をしようとしているのか気付いたようで、じっと3匹を見つめている。

「サーペントさんと会ったのは覚えている?」

答えは覚えている。

「魔法陣がサーペントさんを閉じ込めていたことは?」

覚えている。

「サーペントさんは解放された?」

解放された。

よかった。

「あっ、重要な事を訊き忘れてる」

「なに?」

「ソラたちが魔法陣の影響を受けている可能性はあると思う?」

「あるな。魔法陣は生き物すべてに影響を及ぼすことが出来るから。何か違和感を覚えることはないか? 頭が痛いとか?」

ドルイドさんがソラたちに聞くが『無い』らしい。

「あの魔法陣に皆は影響を受けた?」

揺れたということは、影響を受けたんだ。

どう言う風に受けたんだろう。

体に違和感はないみたいだけど、もしかして私たちのように記憶とかだったら。

「記憶に影響を受けた?」

揺れない、つまり記憶は大丈夫。

「今も影響を受けている?」

『受けていない』。

つまり、影響は受けたが問題は解決したって事なのかな?

「にゃうん」

「シエル?」

シエルがぴょんと膝に乗って、プルプルと揺れてくる。

「もしかして、シエルのあの巨大な魔力が俺たちを救ってくれたんじゃないか?」

ドルイドさんの言葉に、穴の中で感じた桁違いの魔力を思い出す。

「今思えば、アイビーを攻撃するような魔力をシエルがぶつけるはずがない。あれほどの魔力を持っているならコントロールがしっかり出来るはずだ」

「ぷっぷぷ~」

ソラが賛成をするように、ピョンピョンと鳴きながら跳ねまわる。

そうか、シエルの魔力が魔法陣の影響を消してくれたのか。

「あれが無かったら、あの洞窟から抜け出せなかったかもしれないな」

そっか。

あの穴……洞窟?

「ドルイドさん、魔法陣があったのは穴? 洞窟?」

「…………洞窟だな」

そうか、洞窟か。

いつの間にか穴になっていたな。

あんな巨大な魔法陣がある穴って普通は洞窟だよね。

記憶を変えられるって気持ち悪いな。

「とりあえず、3人に入ってもらって話をしようか」

「うん。ソラたちはこのままでいいかな?」

「……いいだろう。たぶん」

扉を開けて、タブロー団長さんを呼ぶ。

部屋の前にいたので少し驚いた。

プリアギルマスさんとピス副団長さんも一緒にどうぞというと、驚かれたけどなぜか喜ばれた。

2人は団長室にいたようで、すぐに呼んできてくれて部屋に入って来た。

そして、同時に固まった。

「どうしたんですか?」

「アイビーさん、隠し忘れてますよ」

「いえ、紹介しようかと思いまして」

私がそう言うと同時に、ピス副団長がすごい勢いでソラたちに近づく。

「レアスライム? こんなスライムは見たことがない。あれ? この柄、何処かで見たような気がするのですが。それにこの目つきの悪いスライム」

目つきが悪いなんて失礼な。

三白眼は目つきが悪いのではなくて鋭いんです。

まぁ、そこに眠い印象が加わってちょっと他よりきつめだけど。

可愛いのに。

「ピス副団長、落ち着け」

「しかし、レアが3匹も一緒にいるなんて。あり得ませんよ」

ここにいるんです。

ついでにもしかしたら4匹目もいるかもしれません、バッグの中に。

「いいから落ち着け」

タブロー団長さんがピス副団長の腕を引っ張って椅子に座らせる。

前に見た時はピス副団長の方が落ち着いていたのだけど、なんだか面白いな。

もしかしてピス副団長はレア好きなのかな?

クスって笑うと、ピス副団長が気付いたのか何度か咳き込み視線を逸らした。