軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274話 懐かれた

サーペントさんを覆うように不気味な魔力が湧きあがる中、巨大な体がピクリと動くのが見えた。

もしかして目を覚ましたのかな?

「サーペントさん!」

「どうした?」

「今、動いたような気がして」

よく見ようと少し近づくと、灰色の何かがサーペントさんを覆ってしまい姿を隠してしまう。

「なにこれ? 魔力?」

魔力に色はないはずだけど、これが現れた時から肌を刺す魔力が力を増したのを感じた。

とりあえず、少しでもサーペントさんの姿が見える場所がないかと移動する。

全体を見ていると、ほんの少し灰色が薄い場所を見つけた。

その場所まで行き、中の様子に目を凝らす。

すると、サーペントさんの目がうっすら開いている事に気が付いた。

「ドルイドさん、目が開いてる」

「本当か? でもこの不気味なモノはなんなんだ? 魔力のような気もするが、色があるなど聞いたことがない」

ドルイドさんもこの灰色の何かを魔力だと感じているようだ。

肌を刺すような嫌な魔力。

サーペントさんから湧き上がっているように見えるけど、サーペントさんの魔力ではない。

彼の魔力は温かくて、こんな冷たい嫌な魔力ではなかった。

「ぐぁ~」

不意に痛みをこらえるような叫び声が、近くから聞こえた。

一瞬ドルイドさんに何かあったのかと彼を見るが、彼も私を見ていた。

違うと判断した瞬間、サーペントさんを見る。

灰色の何かで見えにくいが、体を少し浮き上がらせ左右に揺らして苦しんでいるのが分かった。

「どうしよう」

ドキドキと不安が押し寄せる。

何をすればいいのか、まったく分からない。

「に゛ゃ~」

聞いたことがないシエルの声が洞窟に響く。

次の瞬間、シエルの魔力が洞窟内を満たすのが分かった。

あまりに濃い魔力に頭がふらつき、座りこんでしまうが何とか視線をシエルに向ける。

そこにはサーペントさんに向かって毛を逆立てて怒りをあらわにしているシエルがいた。

しばらくすると灰色の何かがどんどん消えていく。

それと同時に肌を刺す、嫌な魔力も消えていった。

やはり灰色の何かは魔力であっていたのかな?

全て消えると、サーペントさんがどさりと地面に倒れピクリとも動かなくなってしまう。

サーペントさんに近づきたいが、足に力が入らない。

「ふ~、凄い魔力だったな。アイビー、大丈夫か?」

「それが、立てません」

「強力な魔力に体が拒絶反応を起こしたんだろう。俺も足がガクガクだ。危ないからそのまま座って落ち着くのを待て」

「うん」

ドルイドさんがゆっくりとサーペントさんに近づく。

今度はソラも止める事はなかった。

「死んじゃったんですか?」

少し声が掠れてしまう。

ドルイドさんは手をそっとサーペントさんに当てると、目を閉じる。

しばらくすると、私に向かって笑みを見せた。

「大丈夫、弱っているようだけど息をしているよ」

全身から力が抜ける。

スッと視線を地面に向けると、何かが目に入る。

「ドルイドさん、足元! それ魔法陣だ!」

「えっ?」

ドルイドさんの視線が下を向く。

私も魔法陣を確認すると、自分も魔法陣の上に乗っていることに気が付いた。

「かなり巨大な魔法陣だな。あの不気味な魔力をうみだしたのはこれか?」

「にゃうん」

シエルがドルイドさんの声にこたえるように鳴く。

もしかして知っていたのだろうか?

「シエル、ここにサーペントさんが捕まっていた事を知ってたの?」

「にっ」

それは知らなかったのか。

「あの不気味な魔力を感じたの?」

「にゃうん」

「凄いなシエル。こんな森の奥の魔力に気付いたなんて」

そっか。

あの不気味な魔力に気が付いたから、おかしな行動をとっていたのか。

原因が分かってよかった。

「アイビー」

「どうしたんですか?」

おっ、足が動かせる。

そろそろ立ち上がっても大丈夫かな。

「これって報告する必要があるよな」

「あっ」

そうだ、こんな魔法陣を使った人を放置しておくわけにはいかないよね。

誰が関係しているのかは不明だけど。

それにあの不気味な魔力も気になるし。

「どうしましょう?」

「ん~、タブロー団長に頼るか?」

それが一番だろうな。

自警団の団長さんだし。

「いろいろ大変なのに、迷惑かけちゃいますね」

「まぁ、仕方ないよ。団長だから」

確かに、この村の問題だから報告は必要だけど、忙しく仕事している人に頼るのって気が重いな。

他に思いつくのはプリアギルマスさんだけどあまり良く知らないし、彼も忙しいだろうし。

やっぱりタブロー団長さんって事になるんだよね。

「てっりゅりゅ~」

フレム?

そう言えば、何処にいるんだろう?

声のした方を探すと、サーペントさんの子供、黒の球体たちに囲まれていた。

ゆっくりと立ち上がって、足にしっかり力が入るか確かめる。

よし、大丈夫だな。

まだ少しふらつくけど、気を付けて歩けば問題なく歩ける程度には復活してくれた。

「大丈夫なのか? 無理はするなよ」

「たぶん大丈夫。それにしてもシエルの魔力、凄かったですね」

「あぁ、さすがアダンダラだけはあったな」

いつものシエルからは想像できないぐらい濃くて綺麗な魔力だったな。

ゆっくり慎重に歩いてフレムに近づく。

「フレム、どうしたの?」

黒の球体たちが私に気付いて、フレムの場所まで道を開けてくれる。

「ありがとう」

ぽんっ!

ん?

ぽんって何?

音がした方向を見る。

フレムの目の前に、水色に銀色が混ざった透明の少し大きな魔石が転がっているのが見えた。

あぁ、魔石が出来た時の音か。

というか、魔石を作っていたの?

ちょっと不思議に思いながら魔石を取ろうとすると、黒の球体の1匹が器用に魔石を持ち上げて移動する。

それを目で追っていると、どうやらサーペントさんの方へ持って行くようだ。

ドルイドさんも魔石を持つ黒の球体に気づいて、唖然と見ている。

止めて良いのか、見ていた方がいいのか良く分からず様子を窺っていると、その魔石を持った黒の球体はサーペントさんの口の中にその魔石を放り込んでしまった。

「「………………」」

えっと、ドルイドさんと視線を交わして2人で首を傾げる。

これはどう反応したらいいのか、正直困る。

「あの魔石は?」

「フレムが作った魔石です」

「そうか」

「うん、水色に銀色が混ざった綺麗な魔石でしたよ」

「水色に銀色?」

ドルイドさんの様子から、フレムはまたかなりレアな魔石を作ったと気付く。

「その魔石」

ドルイドさんが何かを言おうとした時、サーペントさんが水色と銀色の綺麗な光に包まれた。

先ほどのようにその光に魔力を感じるが、先ほどとは違いその魔力には温かさが感じられた。

スーッとその魔力が消えていくのをただただ見る。

「あ~、えっと今のは?」

ドルイドさんの困惑した声が聞こえるがどう答えたらいいのか分からない。

とりあえず……何だろう。

ちょっと2人で困惑状態でいると、倒れ込んでいたサーペントさんの体が持ち上がった。

「おっ」

「サーペントさん、大丈夫?」

声をかけると、ふわりとサーペントさんの魔力が広がるのが分かった。

そしてその魔力がスーッと消えていく。

何があったのか分からず首を傾げて、サーペントさんを見る。

すると目の前にサーペントさんの顔が。

「うわ、びっくりした」

じっと視線が合うと、にゅるっと舌で頬を舐められた。

何度も何度も。

えっと?

「懐かれたな」

ドルイドさんの一言に、やっぱり? と思う。

懐かれるのはうれしいけど……頬がよだれでべとべとです。

これは止めても良いかな?