軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

259話 町の雰囲気

シエルが満足そうに帰って来た姿にホッとする。

冬になると動物は冬眠してしまうため、魔物を狩ることになる。

魔物は動物より強いけど、どうしても心配なのだ。

「シエル、お腹いっぱいになった?」

「にゃうん」

はは、表情が満足そうだ。

シエルにスライムに変化してもらい、バッグに入れる。

あの大きさがスライムの大きさになるのだから、何度見ても不思議だ。

村に戻って、ローズさんのアイテム屋へ向かうため大通りを歩いていると、村の人たちの様子がいつもよりピリピリしていることに気が付く。

「何かあったのでしょうか?」

「あぁ、なんだか嫌な雰囲気だ、ローズさんのところへ急ごう」

少し足早にローズさんのお店に行く。

「こんにちは」

「いらっしゃい。おや」

「すみません、連日」

「寒さが堪える日は客が少ないから、来てくれると嬉しいよ」

良かった、迷惑にはなっていないみたい。

ローズさんの前に、フレムが復活させた魔石を置く。

昨日の今日だったので、ローズさんが少し心配げな表情を見せる。

「フレムは大丈夫なのかい。あっ。このレベルの魔石は駄目だから返すね」

全ての魔石を1つの袋に入れてきたので、レベル1か2の魔石も混ざっている。

中を確認したローズさんが2個の魔石を布に包んで返してきた。

それを苦笑いでドルイドさんが、バッグへ仕舞う。

「フレムには無理をしないように言っているので、大丈夫だと思います」

「そう、今は?」

「熟睡中ですね」

バッグを開けるとソラとシエルが元気に飛び跳ねてバッグから出てしまう。

「あっ、ソラ! シエル! 今日は駄目だよ」

「いいよ、休憩中の札でも下げておけば少しぐらいお店を閉めたって」

そう言うと、ローズさんは扉を閉めて休憩中の札を出してしまう。

お店の邪魔をしてしまっているな。

ちょっと落ち込んでいると、ポンとローズさんに頭を撫でられた。

「気にしすぎ」

笑っているローズさんに、もう一度バッグを開けてフレムを抱き上げる。

口元を確認するが、今日はまだよだれが流れ出てはいないようだ。

あっ、シミが消えている?

バッグに入れる時に気になったシミがフレムから消えている。

何だったのだろう?

「よく寝ているね~」

「フレムは1日中寝てますよ。食事以外ずっと寝ている日もたまにあるくらいです」

ドルイドさんの言葉にローズさんが少し驚いた表情をする。

「アハハハ、それは凄いね」

「でしょ?」

「あぁ。羨ましいけど、私だと1日で飽きるね」

確かにローズさんには合わない生活だろうな。

なんと言うかローズさんは、めんどくさいと言いながら率先して動いている印象がある。

「そう言えばローズさん。何かあったのですか? 村がピリピリしている気がするんですが」

「あぁ、ヒサザの奴が、旅をしている若い冒険者から魔石を強引に回収した事が表ざたになってね。まったく馬鹿だよ。なのに一部の村人が、奴は自分たちのためにやった事で悪くないとかほざきやがって」

悪い事はいつか必ずばれるものだよね。

それにしても、自分たちのためにやった?

それは違う、こんな事が他に洩れたら村の人たちが苦しむことになるのに。

「大馬鹿野郎どもだ。ギルマスの地位にいる者が罪を犯したってだけでも一大事なのに、それを村の奴らが擁護するなんて。こんな情報が他の村や町に伝わったら、この村の信用度が落ちる。そうなれば村の存続すら危うくなるのに」

村の信用度が落ちたら、冒険者や行商の人の出入りが少なくなる。

そうなると、村はどんどん廃れていってしまう。

どんな大きな町でも信用度はとても大切なのだ。

それを村の人たちは知らないのだろうか?

「危ない状況ですね」

「……やはりそう思うかい?」

危ない状況って何?

村の人たちが罪を犯したギルマスさんを擁護しただけじゃないの?

もっと何かあるということ?

「はぁ、あの2人にはまだ早かったのかね?」

2人……タブロー団長さんと、プリアギルマスさんのこと?

えっと、意味が分からない。

「「…………」」

どうしよう、2人とも黙り込んでしまった。

えっと、何かこの村にとって良くないことが起きているということだよね。

たぶんトップの存在によって問題が悪化している?

「これを乗り越えないと、駄目だろうね」

この緊張感苦手だな。

「信じるしかありませんよ」

「ドルイドさんは、誰か知り合いがトップにいたのかい?」

「えぇ、冒険者ギルドのギルマスです。今も頑張ってますよ」

「そうか。ん? 悪いねアイビー、そんな顔をさせちまって」

えっ?

どんな顔?

ローズさんが頭をそっと撫でてふんわりと笑ってくれる。

「ローズさん。冬用の手袋ってここに置いてますか?」

ドルイドさんの急な話の変化に驚いて彼を見ると、ニッと笑われた。

どうやら気を使われたようだ。

いったい、どんな顔をしてしまっていたんだろう。

「冬用の手袋? 剣から手を守る手袋に夏も冬もないだろう?」

「違いますよ。アイビーの手が冷えやすいので、どこかで冬専用の手袋があると聞いて」

「あぁ、そういうことか。それだと服屋だね。外套を売っている店だとあるんじゃないかい?」

「そうですか、だったら『シャル』ならありそうかな?」

「あそこだったら最新の服も揃えているからあるだろう。それより、買いに行くのなら早めの方がいいんじゃないかい?」

ローズさんが外を見る。

気付かなかったけど、少し雲行きが怪しい。

もしかしたら雪が降るかも?

「そうですね。アイビー、行こうか?」

「うん。ソラ、シエル、行くから戻ってきて?」

私の言葉に遊んでいた2匹がぴょんと腕の中に飛び込んでくる。

何度も何度も経験したので、もうこれにも慣れたモノ。

ときどき落とすけど、今日は2匹とも抱き留めることに成功。

「凄いね~」

「あの2匹は、面白い事や驚かすことが好きみたいで大変ですよ」

「驚かすのは私も好きだよ。あれは良いよ~」

確かに最初の日に驚かされたな。

いきなり腕が……思い出すのは止めよう。

あれは本物に似すぎてて嫌だ。

「ほどほどにしないと、怖い目にあいますよ」

「既に何度もあってるよ」

「……止めると言う選択はしないんですか?」

「あたりまえだろう、楽しいのに」

「「はぁ」」

「ちょっと、タブローと同じ反応は止めてほしいのだけど」

「団長さんは元々苦労性なんですね」

ドルイドさんの言葉に笑ってしまう。

ローズさんに振り回される彼が想像できてしまった。

「ふん」

「ハハハ。アイビー、そろそろ行こうか?」

「うん」

「あぁ、魔石はありがとうね。感謝するよ。フレムには無理をしないように言っておいてほしい」

「はい、言っておきます。では、またって忘れていた。ローズさん当分店にいますか?」

「あぁ、いるけどなんだい?」

良かった。

「前に『こめ』を使ったおにぎりを一緒に作ろうと約束をしたんですが……」

すっかり忘れちゃってたな。

「あぁ! そうだったね」

「ローズさんは、いつ頃だったら大丈夫ですか?」

「そうだね、明日でも大丈夫だよ。明日ならデロースもいるからね。楽しみだ」

「では、また明日お邪魔します」

本当に連日お邪魔することになったけどローズさんが笑顔なので大丈夫なのだろう。

大まかな明日の予定を決めて今度こそお店を後にする。

お店を出て『シャル』に向かっていると、顔に冷たい風があたって痛い。

今年の冬は攻撃的だ。

「いらっしゃいませ。おや、お久しぶりですね」

「おじゃまします。少し聞きたいことがありまして」

お店に入るとすぐにバルーカさんが対応してくれた。

お店にはあと2人ほどお客がいるようだ。

「なんでしょう?」

「冬専用の手袋があると聞いたんですが、置いてますか?」

「ありますよ。2、3年前から出回る様になった商品ですね」

バルーカさんに連れられてある棚の前に来る。

そこには色とりどりな手袋が並んでいる。

手を守るための手袋とはかなり印象が違う。

「へぇ~、おっ、これなんてどうだ?」

ドルイドさんが手に取ったのは、何とも可愛らしい桃色の花柄手袋。

ちょっと可愛らしすぎると思う。

「いえ、私にはちょっと」

「そうですか? 可愛らしいと思いますが」

「コートに浮くかと……」

私のコートは薄めの青なので、桃色だとどうしてもちょっと違和感が出る。

特に選んでくれた手袋は明るい桃色だ。

「「あぁ」」

ドルイドさんとバルーカさんは時々とても似ていると感じる。

どうして2人ともそんな残念な表情をするのか。

「では、コートに合わせるならこちらの3種類がお薦めですよ?」

見せてもらったのは白と水色と濃い青の3種類の手袋。

こちらには刺繍などは無く、すっきりした印象だ。

「……もう少し可愛いのはないのかな?」

ドルイドさんの質問にバルーカさんが少し残念そうに『売れてしまいまして』と答える。

「もう少し早く買いに来るべきだったな」

ものすごく残念そうに言われたけど、私としてはこの3種類の手袋のどれかで十分。

寒さを防げたらそれでいいと言いたいけど、言ったら何か駄目な雰囲気が……。