軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

248話 寒い冬の対策

食堂に入ると、多くの人は既に食べ終わったのかゆっくり談笑をしていた。

いつもの席に座ると、ドラさんがお茶を持って来てくれる。

「ありがとうございます」

温かいお茶をゆっくりと楽しむ。

この宿のお茶は、私がいつも飲んでいるお茶より少し甘さがある。

今度どんなお茶なのか訊いてみよう。

視界の隅に揺れている何かが映る。

そちらに視線を向けると、先ほど出会ったグッティ君が手を振っていた。

それに手を振りかえすと、ものすごい笑顔で手の振りが激しくなった。

同い年ぐらいだと思っていたけれど、もしかして私より下なのかな?

しばらくするとサリファさんが、食堂に姿を見せた。

「今日は集まってくれて、ありがとうございます」

彼女は食堂を見渡して小さく深呼吸をしたように見えた。

そして、

「本日ギルドからこの冬に対しての注意事項が来ました。皆さんは既に気が付いているでしょうが、今年の冬は既に異様な寒さとなっております。またギルドには、多くの冒険者から『スノー発見』の報告が寄せられています」

スノーの話が出た時、食堂が少しざわついた。

「スノーが多くみられる年は、異常な寒さとなる冬の到来を意味します。過去の経験から、この村では出来る範囲での準備を行って来ました。ですが、実際にどれだけの対処が出来るか不明です」

食堂が静寂に包まれる。

「今使用している宿の暖房アイテムは過去の経験を踏まえ、強化されています。ですが、これから訪れるであろう寒さに対応できる保証はありません。この村の過去の出来事ですが、異常な寒さが訪れた年、暖房を点けた建物内にも関わらず凍死者が出たという記録が残っています」

建物の中で凍死?

暖房では、寒さを防げなかったという事?

どんな寒さなんだろう、怖いな。

「命を守るために、皆さんに協力を仰ぎたいです。夕方、各部屋の前に暖房アイテムを置いておきました。それは赤い魔石を使い部屋を暖めるモノです。使い方が分からない場合は、後で個別に説明いたします。そのアイテムを各部屋で使い、宿全体を暖める手助けをしていただきたいのです」

宿全体を暖めるお手伝い?

「ただ申し訳ないのですが、皆様の暖房アイテムを動かすだけの魔石は用意できておりません」

サリファさんの言葉に、一気にざわつきが大きくなる。

「魔石が採れていた洞窟が崩れ落ちてしまい、確保できなかったんです。すみません」

そういえば、初めてこの宿にきた時に聞いた。

魔石が大量に採れていた洞窟が崩れて、価格が高騰しているって。

「あの~、魔石はどれくらい必要になるんですか?」

1人の男性が手をあげる。

「レベル6の魔石の場合は最低5個。寒さによって変わりますが、文献に残されている最低の寒さが来た場合は、20個ほど必要になる可能性があります」

サリファさんの言葉に、食堂にいた冒険者たちが息を飲む。

そしてそれぞれがひそひそと話を始めた。

彼女は小さくため息をついて、何ともやるせない表情をしている。

「レベル6の赤い魔石が20個か」

レベル6の魔石は、持っていなかった気がするな。

ドルイドさん宅で見つかったレベル5より低いレベルの魔石は全て売ってきたから。

フレムがくれた魔石は、詳しいレベルは分からないけど透明感から比較するとレベル5以上だと思う。

おそらくレベル5か4辺りが一番多いとドルイドさんと予想している。

「レベル5以上だと問題あるの?」

「いや、問題なく動くし魔石の数は20個も要らなくなる」

使えるのなら問題ないな。

残った魔石を宿に提供することも出来る。

これは部屋に戻ってから相談しよう。

「何か質問があれば、どうぞ」

「魔石が足りない場合はどうしたらいい?」

「それは……購入をお願いしたいのですが、この問題が出る前から魔石は高騰しています。なので無理にお願いは出来ません」

サリファさんが黙り込んでしまう。

「そうか。何とか安く手に入れられる方法を探してみるよ」

「すみません」

それから少し質問などが飛び交ったが、やはりどの冒険者も20個も魔石を持っていないようで、一番の問題は魔石の確保にあるようだった。

「部屋に戻ろうか」

「うん」

席を立ち、食堂を出ようとするとドラさんに止められた。

「暖房アイテムの使い方は大丈夫ですか?」

「えぇ、使った事があるので問題ないですよ」

「そうですか。申し訳ありませんが協力をお願いします」

ドラさんが深く頭を下げる。

彼はサリファさん同様、やり場のない気持ちを抑えこんでいるような、苦しそうな表情をしている。

「俺たちは大丈夫です。魔石にも余裕がありますから」

「そうなんですか?」

「はい」

「よかった。では、失礼します」

ドルイドさんの言葉に、ドラさんはホッとした表情を見せる。

部屋に戻ってとりあえず魔石を確かめてみることにした。

魔石を入れているマジックバッグから、赤の魔石が入っている袋を数個取り出す。

「レベル5だと分かっているのはこの袋だな」

袋を開けて机に出すと、数は全部で18個。

「この数があれば、問題ないだろう」

「あの、魔石に余裕があれば宿に提供しませんか?」

「俺も同じこと考えてたよ」

良かった。

「ただし、レベルが高すぎる物は止めておこうな」

ボックスの方にいれた、魔石のことかな?

確かにあれは、目立ちすぎるだろうな。

「で、こっちがフレムが生みだした魔石なんだが、レベルは不明だ」

フレムが捨て場で生みだした魔石。

鑑定してくれる人がいないので、レベルは不明。

だが、ドルイドさん宅で見つかったレベル5の魔石より透明感がある様に見える。

「レベルが分かっている方を宿に提供して、俺たちはこちらを使うか」

「数はどれだけあるの?」

「えっと、全部で33個だ」

透明感から見てレベル5より上の魔石。

これだと、もっと少ない数で大丈夫なのかな。

「こっちは提供しないの?」

「レベルが分からないからな」

レベルが分からない物を提供するのは駄目なのだろうか?

「自分の持っている魔石のレベルを調べないのは、ちょっと違和感を持たれるだろうな。かと言って、こんな高レベルの魔石を33個も鑑定してもらうのも目立つし。だからといってここで提供しないと後味が悪くなるし」

ドルイドさんが頭を抱える。

なるほど、確かにお金になる魔石のレベルを調べない冒険者なんていないか。

魔石を1つ持ち光に翳す。

しかも、少し濁ってはいるが、透明度の高い魔石。

これ、1つでも確実に目立つよね。

「誰かをこちら側に引き込むか?」

えっ?

何だろう、ドルイドさんから何か恐ろしい言葉が聞こえたような気がするのだけど。

「ドルイドさん?」

「といっても、この村には知り合いはいないし。誰でもいいというわけではないし」

えっと……ドルイドさんの目が本気だ。

でも、確かに協力してくれる人が必要だとは思う。

そうなれば、フレムにお願いして魔石をもっと生みだしてもらう事も出来るかもしれない。

「てりゅ~」

悩んでいると、フレムの鳴き声が耳に届く。

見ると、珍しい事に他の2匹は寝ているのにフレムは起きてこちらを見ている。

「フレム、赤い魔石をもう少し頂戴って言ったら、生みだしてくれる?」

「てっりゅりゅ~」

フレムはプルプルと震えて、嬉しそうだ。

どうやら協力してくれるみたい。

私の仲間たちは皆、優しいな~っとちょっとほっこりしてしまう。

「よしっ、団長にしよう」

いろいろ考えている間に、ドルイドさんが恐ろしい決定をしてしまった。

「あの、ドルイドさん」

「ん?」

「えっと、あの……あっ! ローズさんのところで魔石のレベルを調べられるアイテムがないか探しましょう」

そうだ、そういうアイテムがあるかもしれない。

「なるほど、その手があったか」

なんとか物騒な発想を止めることが出来たみたいだ。

ローズさんのところにアイテムがなかったらどうしようかな。