軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

182話 最強の魔物

ドルイドさんに何を話せばいいか訊くと、代わりに話してくれることになった。

隣で聞いていると、結構話し忘れていることが多いことに気付く。

ドルイドさんを助けたソラの力や、食べる物については覚えていたけど私の中では重要度が低かった。

そういえば、 真剣(しんけん) を食べたことを忘れていたな。

「喜怒哀楽がはっきりしていて、アイビーに鳴き声でいろいろな事を伝えてきます」

それは他のスライムでも同じでは?

師匠さんを見ると、唖然とした表情。

……どうやら違うらしい。

でも、テイムした魔物や動物とは意思の疎通が出来るんだよね?

魔物でも動物でも喜怒哀楽はあるだろうし……伝える手段は鳴き声ぐらいだと思うのだけど。

「フレムの能力は今のところ不明です。確実ではありませんが、アイビーの話を聞いてソラはアイビーにとって、善人なのか悪人なのかを判断しているのではと思うところがあります」

私にとって善人か悪人か?

……あっ、組織の人を判断した事を言っているのか。

えっ、あれって私が基準だとドルイドさんは思ったの?

……そうなのかな?

「師匠、大丈夫ですか?」

考え込んでいるとドルイドさんの声が耳に届く。

見ると、師匠さんが頭を抱えてる。

えっ、何があったの?

「ドルイドさん、師匠さん大丈夫ですか? 何か――」

「アイビー!」

「はいっ」

声を低くした師匠さんに、話を遮られる。

何だろう怒ってる!

「駄目だ!」

「えっ?」

「いいか、こんな重要なことをまだ会って数日の俺なんかに話すのは駄目だ! 人というのはもっと疑ってかかれ、話をしていく中で大丈夫かどうか判断するんだ! いい奴そうに見えたってそうじゃない奴なんて腐るほどいる。そんな奴らにこんな金になる話をしたら、アイビーが大変な目に遭うことになる。いいな、人は見かけで判断しない、数日前に初めて会ったような人物を信用しない。分かったか?」

えっと、早口だったため途中がちょっと分からなかったけど。

たぶん人をちゃんと見て判断しろって事だよね。

「分かりました。でも、大丈夫です」

「大丈夫じゃない! 俺と出会ってまだ数日だ、それなのにこんな重要なことを話しちまって。俺がこの情報を金に換えようとしたらどうする? アイビーからソラやフレムを奪う事は出来るんだぞ」

たぶんそういう事をする人は、自分を信用するなとは言わないと思う。

「あの、ドルイドさんが師匠さんを保証してくれましたし、ソラも大丈夫と判断しましたから」

師匠さんの話をした時、ソラもフレムも楽しそうに跳ね回っていた。

正確には、フレムはソラに転がされていただけだが。

バッグから出ている時、問題ありの場合は止まってじっと私をみつめてくる。

楽しそうに何かしている時は、問題ないときだ。

「ソラ? あぁ、そういう事か。いや、そうかもしれないが……はぁ、とりあえずすぐに人を信用しない、いいな」

「はい。分かりました」

「ドルイドも、数年間会っていなかった人間をすぐに信用するな。俺が変わっていたらどうするつもりだ? アイビーが被害に遭うんだぞ。ドルイドを利用して何か事を起こすことも出来るんだ。人間はたった1年で変わることもある、それが数年間の空白があるんだ。もう一度しっかり見直してから判断しろ」

「はい。ですが師匠は昔のまま変わっていませんけどね」

師匠さんの怒りは、ドルイドさんに向かってしまったようだ。

それにしても、『自分の事を信用するな』と言うとは。

さすがドルイドさんが信頼する師匠さんだ。

「は~、しかしアイビーはすごい子供だったんだな」

少し怒りが収まったようだ。

「私ですか?」

「そうだ。これだけの存在を仲間に出来る力があるんだから」

仲間に出来る力?

「私に力はないですよ? 星なしですし」

そういえば、師匠さんは星なしに対して反応が薄かった。

昔、星なしについて聞いたことがあったりして。

「そういえば、そうだったな。色々聞きすぎて衝撃が薄れたが、それもすごい事実だったな」

忘れていただけか。

残念。

「なので力はないです」

「いや、そういう力ではなくてだな。なんて言えばいいのか、人や魔物を引き寄せる力というか、引き寄せられた者たちを繋ぐ力があると言うか」

どういう意味だろう?

「悪い、説明が上手くできん」

「いえ」

「アイビーの人柄に引き寄せられるんだよ」

ドルイドさんの言葉に驚く。

私の人柄?

えっ……どこに?

「それはあるな」

師匠さんまで!

ん~、分からない。

首を傾げていると、バッグの中でソラとフレムも体が横に傾く。

どうやら一緒に首を傾げているようだ……首は無いけど。

「そういえば、師匠。冒険者たちの話に魔物の死骸や魔力について何かありましたか?」

あっ、そうだ。

寿命で死んだ魔物か、もしくは魔力の塊の情報があれば解決できる可能性があるのだった。

「あぁ、リュウの死骸があったらしい」

リュウ、確か魔物の中で最強と言われるほど強い存在だよね。

森の最奥へ行かない限り出会う事はないから、まったく馴染みがないな。

「リュウ、確かに寿命を迎えられる可能性の高い魔物ですね」

「あぁ、死骸を見た時はかなり驚いたそうだ。しかも、アイビーが想像した通り魔力が溢れていたそうだ」

「本当ですか?」

文献を読み間違っていたらどうしようかと不安だった。

「あぁ、ゴトスが奴らに何度も確かめたから間違いない」

そうか、良かった。

それにそのリュウを燃やしたら、この凶暴化する問題も解決できるかもしれない。

「森の、どの辺りにあるのか話しましたか?」

ドルイドさんの質問に、なぜか師匠さんがニヤリと笑う。

「場所は、森の奥にある一番でかい崖の下だそうだ。いい場所だろ?」

「あそこですか? 確かにいい場所ですね」

「あぁ、あそこなら飛び火の心配をしなくていいから容赦なく燃やせる」

リュウの死骸は、燃やすのにとてもいい場所にあるようだ。

森の奥へ行くことは心配だが、何とか解決できそうかな?

ドルイドさんと師匠さんが、これからの行動のことについて話を進めている。

正直、何を言っているのか少し不明だ。

ただ、森へ行くのは危険度が高いことと、ある程度の日数は掛かるという事は分かった。

ドルイドさんも行くのかな?

片腕でも、やはり冒険者だけあって知識は豊富だし機転も 利(き) く。

ん~、どうするんだろう?

「さて、アイビー。そろそろ店へ行かないか? きっと父さんが待ち構えていると思う」

あっ、話は終わったのかな?

「はい。師匠さん、話を聞いてくれてありがとうございます」

「いや、話してくれて感謝する。あ~……アイビー、お願いがあるんだが」

「なんでしょうか?」

随分と言いにくそうだけど、何だろう?

あれ?

ドルイドさんが笑いを堪えている。

師匠さんが何を言うのか、予測できているのかな?

「アダンダラ、ええっとシエルだったよな。頼む、会わせてくれ。この通り」

そう言うと、師匠さんは椅子から立ち上がって深く頭を下げる。

「うわっ!」

ドルイドさんが、師匠さんの態度に驚きの声を上げた。

「師匠さん、頭をあげてください。シエルなら会えますから」

「本当か? 昔から一度でいいから会ってみたかったんだ。本当に良いんだな?」

「はい」

「ありがとう、アイビー。いや~生きててよかった」

そこまで!

ときどきシエルが遠い存在に感じるな。

森であったら、そんな印象は持たないんだけど。

……アダンダラとは違う種類って事はないよね?

「あの、アダンダラに似た魔物っていたりします?」

「「はっ?」」

いや、そんな不思議なモノを見るような目で見ないでほしいです。

「アイビー、シエルは間違いなくアダンダラだぞ」

ドルイドさんに考えが読まれたようで、苦笑いされてしまった。

でも、皆の話すアダンダラとシエルが一致しないんだもん!