軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

170話 見抜かれた!

シエルの首に抱き着いてギュッと目を閉じる。

癒される~。

ソラの事ではもう驚く事なんてないと思っていたけど、甘かった。

本当にすごい子をテイムしてしまったな。

それとも崩れスライムって、みんなこんな感じなんだろうか?

……フレムもいずれ?

考えないようにしよう。

「アイビー、悪い。そろそろ行こうか?」

ドルイドさんの戸惑った声に、閉じていた目を開ける。

そうだった、今日からおにぎりに合うソース作りだ。

よしっ!

頑張ろう。

「シエル、ありがとう。ソラ、そろそろバッグへ戻ろうか。フレムは……ちょっと起きる時間を長くしようか」

「ぷっぷぷ~」

「てりゅてりゅ、りゅ~」

寝ぼけているフレムをそっと抱き上げてバッグに入れる。

この子はなかなか食べる量が増えない。

その為、ソラの時よりしっかりするのが遅い気がする。

その子、その子の成長があるからゆっくり見守ろうとは思うけど、ソラとは全く異なるから驚くな。

「用意終わりました。シエル、今日は早いけどごめんね。頑張って美味しいソースを作ってくるね」

「にゃうん」

一度ゆっくり、夜までいたいな。

グルバルの事があるから無理かな?

ドルイドさんは賛成してくれるだろうけど、門番さん達がな。

夜までに戻らなかったら大騒ぎしそうだ。

……なんとなく想像できてしまうもんな。

「どうしたんだ?」

「いえ、一度ゆっくりシエルと夜までいたいなって思うんですが」

「いいんじゃないか? グルバルはシエルがいるから問題にならないだろうし」

「門番さん達は大丈夫でしょうか?」

「あっ、あいつ等がいたか。シエルの事は話せないしな。帰って来ないって大騒ぎする姿が目に浮かぶよ」

ハハハ、同じ結果に行きついたみたいだ。

町へ戻りながら、門番さんを説得できる方法が無いか話し合う。

「駄目だ~。あいつらを説得する事がこれほど難しいとは」

「皆さん、心配性ですからね」

私が毎日森へ行くことも、かなり心配している。

ドルイドさんが一緒なので、少し遠慮をしてくれているけれど。

「シエル、ここでいいよ。ありがとう」

「にゃうん」

喉をグルグルと鳴らして、体に顔をすりすり。

そして、いつもの挨拶をソラにして走り去った。

「あれ? 今日はソラ、反応しないな」

ドルイドさんの頭の上にいるソラを見るが、少しプルプルする程度だ。

いつもだったらシエルに舐められた後は、ピョンピョン跳ねまわるのだが。

「そうみたいですね。そろそろ慣れたんでしょうか?」

ちょっと、あの反応が見られないのは寂しいな。

面白かったからな。

「ソラ、そろそろバッグにもどろうか」

「ぷ~」

ん?

もしかして眠い?

「ソラ、もしかして眠いの?」

「ぷ~」

一杯食べて、その後シエルとかなり遊んでいたからな。

疲れたのかもしれない。

ドルイドさんに屈んでもらって、ソラをそっと頭からおろしバッグに入れる。

「眠いから、跳ね回らなかっただけかな?」

「ありえますね」

町へ戻り、ドルイドさんのお父さんのお店へ向かう。

店主さんの準備は整っただろうか。

「おはよう」

「あら、ドルイド。久しぶりね~」

店に入ると、女の人が店番をしていた。

見た目年齢から考えて、ドルイドさんのお母さんだろうか?

「母さん。あ~、久しぶり」

ドルイドさんの緊張した声に、ちょっと噴きだしそうになってしまった。

慌てて口を押えたが、視線を感じたのでちょっと顔を横に向けておく。

「あら、あなたね。うちのバカ息子たちがお世話になっているのって。ごめんなさいね、ご迷惑かけてしまって」

バカ息子って、会った事があるのは2人。

その内の1人はいつも一方的に怒っているだけ。

迷惑と言えば迷惑だけど、酔っぱらい扱いなので気にならない。

ドルイドさんは、知らない事を教えてもらっているので私がお世話になっている。

「初めまして、アイビーです。ドルイドさんには、私がお世話になっています」

もう1人の事は無視でいいだろう。

「ふふふ、可愛らしいお嬢さんね」

えっ!

初対面の人に性別がばれたのは初めてだ!

私が驚いた表情をしたので、女性が少し慌てる。

「あっ、ごめんなさい。えっと」

「いえ、大丈夫です。初めて会った人に性別を見抜かれたのが初めてだったので、驚きました」

「あら、そうなの? 確かにパッと見た時は男の子かなって思ったのよ。旦那からも聞いていたし。でもちゃんと見ると、可愛らしい女の子なんだもの。間違わないわよ。ね。ドルイド?」

あっ、そういえばドルイドさんっていつわかったんだろう。

「あ~。そうだね」

ものすごい棒読みの返事だ。

「ドルイド? あなたまさか知らなかったの?」

「いや、今は知ってるから」

女性がため息をつくと、慌てて言い訳をするドルイドさん。

こんなドルイドさんは初めて見るな。

何処か新鮮だ。

「まったく、これだから男どもは」

「いや、だから知ってるって」

グッと唇に力を入れる。

やばい、噴きだしそうだ。

「アイビー、思いっきり肩が揺れているからな」

「あっははっはは。ドルイドさん、頑張っているのに声をかけないで下さいよ」

駄目だ。

笑ってしまった。

「なんだ? 何かあったのか?」

店主さんが来たみたいだ。

なんとか笑いを抑える。

「おはようございます」

「おぉ~、今日はよろしく頼むな」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「父さん、アイビーにあんまり無茶なことは言うなよ」

ドルイドさんも今日は緊張をしていないようだ。

というか、先ほどの会話で上手く緊張がほぐれたみたいだ。

良かった。

「分かっている。で、悪いんだが『こめ』を炊いてもらえないだろうか?」

そうか。

炊き方を言っておくのを忘れていたな。

「はい。えっとどこで炊きましょうか?」

ここは店なので駄目だろう。

「場所は店の奥にある調理場で頼むよ。あと、炊き方を教えてもらいたいんだがいいか?」

「はい、問題ありません」

店主さんに案内されながらドルイドさんと一緒に調理場へ向かう。

店の奥に行くと、かなり広めの調理場があった。

すごいな。

「火はあそこだ」

店主が指す方向を見ると、大きいお鍋も置けそうなコンロ。

良いな。

「早速準備しますね」

「あぁ、頼む」

作業を始めると、店主さんが隣に立ってメモを取りだした。

ときどき質問されるので、頑張って記憶を思い出しながら答えるが本当に合ってるのか分からない。

「私も、まだまだ分からない事が多いので」

「いや、これだけ答えてくれれば問題ない」

良かった。

ご飯の炊きあがりを3人で待つが、時間は感覚なので不安だ。

「もう大丈夫だと思いますが、いつもより多めに炊いたので不安です」

「ハハハ、失敗したらまた炊いたらいい。『こめ』だけはいっぱいあるぞ」

店主さんは豪快に笑って、鍋の蓋を開けてしまう。

う~、ドキドキする。

大き目のスプーンを借りて、ご飯を軽くかき混ぜる。

「あっ、いい感じです」

良かった。

炊いた量が昨日までとかなり違ったし、お鍋も大きくなったのでかなり不安だったのだ。

でも、ちゃんと炊けた!

これは、かなりうれしい。

「昨日言っていた『焼きおにぎり』を作ってくれるか? 調味料はここにあるのを自由に使ってくれて構わない」

そう言って出してきたのは、大量のビン。

「すごいですね。全て調味料ですか?」

「あぁ、各地の村や町から取り寄せたソースと調味料だ」

お店並みの品ぞろえだな。

ドルイドさんが『努力の人』だと言った通り、色々努力を積み重ねてきた人なんだろうな。

だって、各ビンに味の感想が書き込まれている。

ドルイドさんが、尊敬する人か。

そんな人と一緒にソースを作れるなんて、うれしいな。