軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151話 暇人?

あっ、やばいすっかり忘れていた。

周りを見るが、用意していないのだからある訳がない。

「どうしよう~」

料理もほぼ完成したので、お皿に盛って机に並べようと思ったのだが……机が無い。

通常は料理を作ってテントの中で食べる。

1人の冒険者はこれで済む。

なので机など持っていない。

そして、私も持っていない。

なので完全に失念していた。

「どうかしたのか?」

男性の声が聞こえたので視線を向けると、お隣の冒険者さん。

ドルイドさんより10歳ほど若い男の人だ。

その冒険者さんは、私の様子を見て気が付いたようだ。

「机か? 貸そうか?」

「良いんですか? えっと2人分なんですが」

「2人? えっと、いったい何人前作ったんだ?」

料理を作ったお鍋を見る。

そしてサラダやスープも……あっ、どう見ても2人前ではないな。

前の感覚で作ってしまった。

「えっと、お礼に料理なんていかがでしょう」

「くっくく、ありがとう。昨日からいい香りがしていたから気になっていたんだ。机はテントの前でいいか?」

「はい。ありがとうございます」

助かった。

男性はマジックバッグから折りたたみ式の机と椅子を出して、テントの前に並べてくれた。

「マジックアイテムのテーブルではないから、少しガタガタするが」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

テーブルに料理を並べる。

次に男性の分の料理をお皿に入れて渡す。

「ぅわ、まじで美味しそう。ありがとう」

「いえ、私も助かります」

男性は料理を持ってテントの中に入って行く。

ふ~、焦ったけど隣の人がいい人で本当によかった。

1人用のテントの中で、食べてもらう事になるところだった。

テーブルを見る。

料理も並べたし、ご飯は諦めてパンを買ってきた。

ちょっと奮発して白パン。

お礼なので、頑張った。

「ここに居たのか」

「えっ?」

近付いて来る気配は感じていたが、ドルイドさんの気配ではなかった。

その為、あまり気にしていなかったのだがどうやら私に用事がある人らしい。

後ろを向くと……ドルイドさんのお兄さんがいた。

ド……ド何とかさんだ。

実は今日の朝、門番さんに絡まれていないかと心配された。

その時に名前を聞いたのだが、また忘れてしまったようだ。

おかしいな、こんなに物覚えが悪かったかな?

「何も知らない子供を騙しているとは、あいつらしい」

「あいつと一緒にいると人生を無茶苦茶にされるからな、可哀想だから教えてやるよ」

「あいつは人の人生を潰すのが楽しいんだ」

とりあえず、騙されてはいないかな。

何か問題があるのは、この人の行動で予測している。

なので訊くことは出来る。

でも、訊かないと判断したのは私だ。

なので、けしてドルイドさんがだましているわけではない。

私が、必要ないと判断したのだ。

人生を無茶苦茶か。

それは大変だな。

でも、この人の人生を無茶苦茶にしているのは本人ではないだろうか?

ドルイドさんは確かに何かきっかけを作ったのかもしれない。

でも、その後どうするかは本人次第だ。

人の人生を潰す?

それって、そのままあなたの事では?

それにしても、この人暇なのかな?

「おい、聞いているのか!」

「いえ、聞いていません」

ずっと何か話していたが、重要な事はなさそうだったので流していた。

「ぶっ」

微かに隣のテントから、噴きだす音が聞こえた。

他にもテント周辺にいた人達が、口を押えて肩を震わせている。

そんなに笑えるような事を言った覚えはないのだけど。

「なっ、お前、俺が親切に!」

親切?

この人の中の親切と、私が知っている親切はきっと異なる意味を持っているはずだ。

それにしてもこの人、怒りっぽいな。

何だっけ、えっと……カルシウム!

そうだ、カルシウムが足りないんだろうか?

カルシウムと言えば魚?

……そういえば、この世界で魚を見かけたことがないな。

「貴様っ!」

あっ、しまった。

無視をしてしまった。

「いいか、よく聞けよ。俺は奴のせいで星を失った! お前も同じ目に遭うからな!」

星を失った?

それってスキルの星の事かな?

「分かったか、俺が親切だと」

「いえ、まったく」

「ぶっ」

隣の男性はきっと笑い上戸だ。

さっきから噴き出してばかりだ。

あれ?

周りの人達も、何だか肩の震えが大きくなっているような……。

「なっ、人生を潰されても「兄さん」……お前に呼ばれる筋合いはない!」

ドルイドさんの声が聞こえたので、慌てて視線を向けると唖然とした表情のドルイドさんがいた。

顔色が悪い。

「今度はこの子供の人生を潰しに来たのか? 最悪だな」

…………。

周りを異様な空気が流れる。

ドルイドさんも顔を伏せてしまった。

「こんばんは、ドルイドさん。天気が良くてよかったですよね?」

「「「「えっ!」」」」

ん?

なんだか随分と声が重なっていた気がするけど……。

まぁいいか。

「今日は来てくれてありがとうございます。ちょうど並べ終えたところだったので、よかったです」

「アイビー、やっぱり『ドルイドさん』……はい」

ドルイドさんの表情が強張っている。

彼に、そんな顔は似合わない。

「料理が腐ります」

「「「「……はっ?」」」」

いや、だから声が……。

「えっと、アイビー?」

「ドルイドさんがお腹を空かせて来てくれるって言ったので、沢山作りました。ドルイドさんが食べてくれないと料理が腐ります。私の頑張りも無駄になります。もったいないと思いませんか?」

「え~、ん? 何か違うような」

「違いません! これはドルイドさんのために作った料理ですから。ドルイドさんが食べないと無駄になります」

他の人に食べてもらう事も出来るが、それは私が嫌だ。

だって、本当にこの料理はドルイドさんを思って心を込めて作ったのだ。

彼が食べないのなら、全てが無駄だ。

「おいっ!」

「さっきからずっと1人で叫んでいますが、大丈夫ですか?」

「何?」

「だから大丈夫ですか?」

主に頭が、とは言いませんが。

「人が親切に教えてやっているのに、人生を『赤の他人の人生を、わざわざ心配してくださりありがとうございます』っ」

「でも、余計なお世話です。私の人生。私が自分で選びとります」

「それが出来なくなるって言っているんだよ! 星を奪われるんだぞ」

奪われる星が無いから問題なし!

まぁ、これは言えないけど。

それを別にしても、あなたのしている事は。

「大きなお世話です」

あっ、言っちゃった。

「貴様っ」

ド何とかさんが、ぐっと前に来ようとした時。

「何をしている! ってまた、ドルガスか」

おぉ~そうだ!

ドルガスさんだ。

ドルガスさんは止めに入った男性を見て、渋い表情をした。

「いい加減にしろ!」

「ちっ、いい気になるなよ」

ドルイドさんに言葉をぶつけて、広場から出ていくド………ドルドル? さん。

周りに静寂が広がる。

「えっと、ありがとうございました。料理が冷めてしまうから心配していたんです」

「ククク」

隣のテントから聞こえるくぐもった笑い声。

絶対隣の人は笑い上戸だ。

「いや、大丈夫か? ドルイドも気にするな」

「えっと、あぁ」

なんだかドルイドさんが唖然とした表情で私を見ている。

「大丈夫ですか?」

私の言葉に、微かに頷くドルイドさん。

大丈夫に見えないが。

とりあえず。

「ご飯にしましょうか?」

「…………そうだな」

「はい。お腹が空きました」

私の言葉に戸惑った笑みを浮かべるドルイドさん。

よかった。

食べていってくれるみたいだ。

周りの人達は、自警団の人が来たことで離れて行った。

「ありがとうございます」

自警団の人に頭を下げる。

ドルイドさんも慌てて頭を下げている。

さっきから少し呆然としているけど、本当に大丈夫なのかな?

「いや、何かあったら言ってくれ」

「はい」

自警団の人を見送ってから、ドルイドさんに椅子を勧める。

美味しいと笑ってくれたら、うれしいな。