軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

152話 大満足!

美味しい~。

自分で作った料理を自分で褒めるのはどうかと思うが、……美味しい。

「旨いな」

「ありがとうございます。自分でもそう思います」

グルバルの肉は煮込み料理にあう!

これ決定!

じっくり煮込んだので、弾力を残しながらも柔らかい。

何とも絶妙な歯応えだ。

時間をかけただけはある。

ドルイドさんは最初は私を窺うように見ていたが、まったく気にしていない私を見て体から力が抜けたようだ。

今は、少し情けない笑みを見せている。

それにしても……作り過ぎだ。

食べても食べてもお鍋の中のお肉が減らない。

いったい、私はどれだけ作ったんだ。

仕方ない、明日もドルイドさんに手伝ってもらおうかな。

「アイビー、ちょっと作り過ぎじゃないかな?」

「……ドルイドさん、明日も協力よろしくお願いします」

「えっ! やっぱり作り過ぎたのか?」

「へへ、ちょっとだけ作り過ぎちゃったみたいです」

「ちょっと?」

「えっと……」

「アハハハ、了解。頑張ってお手伝いしましょう。俺のための料理だもんな」

あっ、いつものドルイドさんだ。

やっぱり彼にはこの笑顔が似合う。

ゆっくり夕飯を食べて、食後の果物とお茶を出す。

「あっ、忘れるところだった。これ」

ドルイドさんがバッグから、箱を取り出す。

それを机に乗せて、私の方へ寄せる。

受け取って中を開けると焼き菓子が入っている。

「差し入れ」

「美味しそう、ありがとうございます。……今『無理、お腹いっぱいだから』ですよね」

食べ過ぎて、2人とも動きたくない状態だ。

さすがに作り過ぎた。

そして頑張って食べ過ぎた。

今度からちゃんと加減しよう。

「明日、頂きます」

「あぁ……アイビー、明日の予定は?」

「明日は森に仕掛けをしに行きます」

「仕掛け? って罠?」

「はい」

「珍しいな、罠で狩りをするなんて。あっ、でも今は」

「はい、見事にグルバルに踏みつぶされました。食べたら美味しいのに残念です」

「いや、それ関係ないからね」

「美味しいのは重要ですよ」

私が真剣に言うと、噴きだすドルイドさん。

そして後ろからも笑い声が。

「ん? あっ、今日はありがとうございました」

後ろにいたのは机を貸してくれた冒険者さん。

使用したお皿を返しに来てくれたみたいだ。

「いえいえ。楽しかったからいいよ」

楽しかった?

何の事でだろ?

「いや、そんな不思議そうな顔をされても困るんだが」

ドル……?

ド何とかさんとの事か!

「あっ、そういえば笑いすぎです!」

「……頑張って抑えたんだが、無理だった。お久しぶりです、ドルイドさん」

あれ?

知り合い?

「確か、マシューラだったかな?」

「はい。覚えてくれていたんですね。うれしいです」

「ハハハ、そんな大げさな。アイビーとは仲がいいのか?」

「いえ、今日親しくなりました」

「机を借りたんです。すっかり失念していて」

座っている椅子を指してドルイドさんに説明する。

「そうだったのか」

「はい、そのお蔭で旨い物にありつけましたから、かなり幸運です」

綺麗に洗ってあるお皿を、じっと見つめているマシューラさん。

「口にあいましたか?」

「あぁ、本気で旨かった。また、何か足りない時は言ってくれ。だいたいの物は揃っているから。お礼は料理で、お願いします!」

気に入ってくれたのか、料理という言葉に力がこもっている。

「あれ? そういえば」

ドルイドさんが、マシューラさんの周りを見て不思議そうに声を掛ける。

「確か4人チームを組んでいたよね? 今は1人?」

「はい、1人は結婚で、もう1人はやりたい事が出来たと言って抜けたんです。残りの1人は、今求婚しに行っています。結果次第では俺も冒険者を引退しようかと思っているんですよ」

「そうなのか?」

ドルイドさんが驚いた表情をしている。

それはそうだろう、マシューラさんはまだ若い。

冒険者を引退するには早いような気がする。

「はい。お金も貯まったので、生まれた村に戻ろうかと」

生まれた村にか。

帰りたいと思わせるいい村なんだろうな。

「そうか。どちらにしても後悔しないようにな」

「はい。一緒に仕事した時に、しっかりと未来を考えるようにって言ってくださったのが今に繋がっています。ありがとうございました」

やっぱりドルイドさんは面倒見がいいよね。

ちょっとした事なんだけど、重要な事はしっかりと伝えている。

マシューラさんからお皿を受け取って、机の返す場所を訊いてみる。

「テントの前に畳んでおいてくれたらいいから。お休み」

「はい。お休みなさい」

「お休み」

見送ってしばらくゆっくりと腹休憩。

「さてと、そろそろ帰るよ。今日はありがとう」

「いえ、ついでに明日もよろしくお願いします」

頭を下げると、笑われたが仕方がない。

どう見てもお鍋の中の残り具合から協力をしてもらわねば。

ついでにマシューラさんも巻き込もう。

きっと大丈夫のはず。

「分かった。……また明日」

何だろう、ちょっと何か言いたそうにしたけど。

まぁ、明日も会うし大丈夫かな?

「はい、また明日」

ドルイドさんを見送って、机を片付ける。

教えてもらった場所に机を置いて、お湯を持ってテントに戻る。

ソラとフレムは既に寝ているようだ。

ポーションは無くなっているので食べたのだろう。

お湯で体を拭いて新しい服を着る。

それにしても美味しかったな。

グルバルの煮込み料理は、違う味でもう1回挑戦したいかも。

そうだ、残りのお肉の味付けを少し変えようかな。

2日続けて同じ味は飽きるよね。

どうしようかな。

……駄目だ、何も思いつかない。

「よし、今日はもう寝よう。ソラ、フレムお休み」

あれ?

何か忘れているような………………あっ!

罠を作らなくちゃ!

シエルと約束したんだった。

材料はあるから、とりあえず3個!

…………

「おはようございます」

「おぉ、おはよう。今日はドルイドも一緒みたいだな」

「えっ?」

門番さんと、今日もバトルするぞっと思っていたらおかしな言葉を聞いた。

ドルイドさんと一緒?

「おはよう」

「……あっおはようございます。一緒?」

門番さんの休憩室として使われている部屋から、ドルイドさんが出て来る。

あれ?

昨日約束したかな?

「驚かせて悪い。俺も一緒に行っていいか?」

よかった。

昨日の約束を忘れてしまったのかと思った。

「もちろん、大丈夫です」

「なんだ、約束していたわけではないのか?」

門番さんが不思議そうな表情で見てくる。

「約束したなんて言っていないぞ。アイビーを待っていると言っただけだ」

「そうだが。あぁ、西に痕跡があったらしいから気を付けてくれ」

今日は町から西の辺りにグルバルの痕跡があったのか。

罠を仕掛けようと思っている場所からは少し離れているな。

今度こそ成功してほしいな。

「分かりました。行ってきます」

「おぅ、気を付けて」

門番さんと挨拶を交わして門を通る。

「悪いな、急に」

「問題ないです。ドルイドさんがいてくれると門を円滑に通れますから」

「ハハハ、そうか。役に立っているようでよかった」

ドルイドさんは笑顔を見せるが、少し元気がないような気がする。

またあの騒がしい人が何か言って来たのかな。

ややこしい話は苦手だけど、一度ドルイドさんと話し合った方が良いかもしれないな。

今日は丁度いい機会かも。