軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

926話 捨て場へ

「あと……はぁ」

お父さんが溜め息を吐く。

どうしたんだろう?

なんだか、さっきからお父さんの様子が変だな。

バンガさんに何かあるんだろうか?

「大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。バンガなんだけど、厄介な仕事が多いんだ。というか、危険な仕事しか受けていなかった」

厄介な仕事?

「手を出す事が許されない貴族とか、護衛に相当な手慣れがいるとか。とにかく一筋縄ではいかない仕事を受けていたんだ」

「つまり、カシメ町にも仕事で来ている場合は、厄介な仕事を受けている可能性があるという事?」

「あぁ」

この町で厄介な仕事。

ジナルさん達が調べている事と関わってくるのかな?

「ジナルさん達には言ったの?」

「もちろん。ジナル達はバンガの事を知っていた。だからこの町にいると知って、嫌そうな表情をしていたよ」

「そうなんだ」

行方不明が多数いて、亡くなった人も出た。

冒険者を連れ去る事が出来るほど強い人が敵にいて、厄介な仕事を請け負うバンガさんがいた。

「どんな問題をこの町は抱えているんだ?」

いやそうな表情をするお父さん。

それを見て、少し笑ってしまう。

「どうした?」

「凄く嫌そうだから」

お父さんが肩を竦め、私の頭をポンと撫でた。

「それにしても、アイビーを狙っている教会の関係者が捕まって、これからは楽しい旅が出来ると思ったのに……まさかこんな事になるなんてな」

お父さんの言葉に、本当にと頷く。

「あっ、話し合いにはセイゼルクとシファルもいたんだけど」

「うん」

2人も戻って来ていたんだ。

「セイゼルク達も一緒に、捨て場へ行く事になったから」

「つまり4人の護衛? さすがに多くない?」

捨て場に行くだけなのに。

それとも捨て場に何かあるのかな?

「俺も多いと思ったんだけど、ジナルが『必ず一緒に行動してくれ』と言ったんだ。もしかしたらアイビーと同じ年齢の子供が、行方不明になっているのかもしれない」

それでジナルさんは私を心配してくれているのか。

「そっか。それなら皆で一緒に捨て場に行こう」

コンコンコン。

「ドルイド、アイビー。ラットルアだ」

お父さんが扉を開けると、ラットルアさんが部屋に入ってくる。

「フラフがお昼を用意してくれたんだけど、食べに行かないか」

あれ?

「ミルスさん達は?」

「ミルス達ならヌーガと一緒に、先に食堂へ行ったよ」

お腹が減っていたのかな?

「行こうか?」

「うん」

お父さんとラットルアさんと一緒に部屋を出る。

「お昼を食べ終わったら、捨て場に行く予定だよな?」

「うん。ミルスさん達はどうするの?」

一緒に捨て場に行くなら、ソラ達をバッグから出す事が出来ないんだけど。

「あの子達は昼寝」

「昼寝?」

「悪夢を見て、ゆっくり眠れていないんだよ。そのせいで少し元気がない」

えっ、そうなの?

私には元気に見えたんだけど。

「父親は生きていたが、母親は目の前で殺されているからな」

お父さんの言葉にラットルアさんが頷く。

「攫われて、脅され続けていたのも原因だろう。ミルスが一番酷いみたいだ」

大切な人が目の前で殺されて、その殺した者達に脅されて。

心がたくさん、たくさん傷ついてしまったんだね。

胸が痛いな。

「時間を掛けて、ゆっくり傷ついた心を癒すしかないな」

お父さんが私の肩にポンと手を置く。

視線を向けると、微笑まれた。

もしかして私、酷い表情をしているんだろうか?

両手で頬を包むと、ポンと頭を撫でられた。

食堂に入ると、ミルスさん達の笑っている姿が見えた。

元気に見えるけど、違うんだよね。

「先に食べてるぞ」

セイゼルクさん達を見ると、彼等の前には大量の料理。

朝もいつもより多かったのに、昼も?

凄いな。

お昼を食べ終えると、果実水を飲みながら休憩する。

「あっ、寝てしまったな」

セイゼルクさんの声に視線を向けると、椅子に座った状態で眠っているミルスさん達が見えた。

どうやらお腹がいっぱいになって、睡魔に襲われた様だ。

「部屋に連れて行くよ」

「あっ、待って。私が様子を見る事になっているから、食堂の奥にある部屋にお願い」

立ち上がったラットルアさんに、フラフさんが声を掛ける。

どうやらフラフさんが、子供達の様子を見ていてくれる様だ。

「分かった」

ラットルアさんとヌーガさんが、子供達を奥の部屋に連れて行く。

すぐに2人は戻って来たが、なんとも言えない表情をしている。

「何? どうしたの?」

「あれは仕事の書類か? 凄い量が積みあがっていたけど」

ヌーガさんの言葉にフラフさんが笑う。

「そうよ。私も調査する事になったから、書類の処理が出来ていないのよ。いつもだったら、あれの半分以下なんだけどね」

「半分以下でもかなりの量だな」

「カシメ町は大きくて人が多いからね。書類が多くなるのも仕方ないのよ」

確かに王都の隣町だけあって、他の町より大きくて人が多いよね。

「書類仕事は好きなんだけど、大量に溜まると燃やしたくなる時もあるわ」

書類仕事が好きな人は始めてだ。

「早く書類仕事が出来る様になればいいな」

ラットルアさんが書類のあった部屋に視線を向けると、フラフさんが笑う。

「大丈夫よ。冒険者ギルドの問題に回っていた人員が、こっちに来るから。といっても、彼等にも休憩が必要だから、2日後からなんだけどね」

そうなんだ、良かった。

「そろそろ行こうか」

立ち上がったお父さんに視線を向ける。

「うん。フラフさん、ごちそうさまでした。おいしかったです」

「それは良かったわ。夜も期待してね」

夕飯も楽しみだけど、食べる量だけは気を付けよう。

ソラ達を部屋に迎えに行き、皆で宿を出る

捨て場は門を出て左に進むとあるらしい。

フラフさんは、左に行ったらすぐに分かると言っていた。

門から捨て場が近いんだろうか?

その場合は、ソラ達の姿が見られない様に気を付けないといけないな。

大通りは人が多いため、横道を使って門に向かう。

門が見えてくると、人だかりが出来ていた。

「どうしたんだろう?」

町に入ってくる者を調べるため、人が集まってしまう事はある。

でも雰囲気から、違うと分かる。

「問題が起こっているみたいだな。近くに行って様子を見てくるよ」

シファルさんが、集まっている人に向かって行く。

しばらくすると、呆れた表情で戻って来た。

「どうしたんだ?」

「あぁ……」

チラッと私を見るシファルさん。

私は聞かない方がいいんだろうか?

「浮気だ」

んっ? 浮気?

「何だって?」

セイゼルクさんの眉間に皺が寄る。

「浮気で揉めているんだ。『これで何回目の浮気なの! このくそ野郎』と女性が男性に言ってたよ」

「「「「「……」」」」」

シファルさんの言った言葉に全員が無言なり、溜め息を吐く。

「浮気の問題は分かった。どうしてこんなに人が集まっているんだ?」

「男性が自警団の服を着ていたから、門番なのかもな」

あぁ、それで門のところで揉めて……いや、ここで揉めずに場所を移動して欲しかった。

ガッシャーン。

何かが割れる音と男性の悲鳴が聞こえた。

女性が暴れているんだろうか?

それにしても、いつになったら町から出られるんだろう?

急いではいないけど、浮気の問題で出られないのは嫌だな。

「あっ。通れるみたいだぞ」

セイゼルクさんが指す方を見ると、冒険者達が町に入ってくるのが見えた。

町からも人が出て行っている。

「行こう」

セイゼルクさんを先頭に門に近付く。

「迷惑を掛けてすみません。順番に通って下さい」

若い門番さんが2人、町に来る人と出て行く人を確認しながら通している。

「問題ないですね。どうぞ」

門番さんの横を通る時、彼等の待合室だろうか?

奥の部屋から女性が出て来る。

その女性の顔を見た瞬間、少し体が揺れた。

「どうした?」

お父さんを見て首を横に振る。

さすがに、凄く恐ろしい表情の女性に驚いたとは言えない。

まだ近くに女性がいるからね。