軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

925話 師匠の孫

ジナルさんの仲間も一緒に宿に戻る。

「おかえりなさい。あら? やっだぁ。休暇は潰れちゃったわね」

フラフさんが、女性を見ると楽しそうに笑う。

そんな彼女の態度に苛立った様子を見せる女性。

「うるさい。はぁ、いつになったらゆっくり出来るのよ!」

「ははっ。悪いな」

ジナルさんが謝ると、女性が大きな溜め息を吐く。

「王都で休暇を満喫しようと思ったら、王都襲撃を防ぐために呼び出されるし。今度こそゆっくりしようと思ってカシメ町に来たら……来たら、今度は何! 何が起こっているの?」

休暇が二回も流れているんだ。

それは、なんだか凄く可哀想かも。

「「……」」

女性の質問にジナルさんもフラフさんも何も言わない。

そんな2人を見て、女性の表情が引きつった。

「まさか、何が起こっているのかもまだ分かっていないの?」

「ふふっ。そうなのよ」

フラフさんが笑って答えると女性が頭を抱えた。

「もう、やだ。なんでカシメ町ならゆっくり出来るなんて思ったのかしら。あぁ、そうだわ。仲間が大量に送り込まれたって聞いたから、私の出る出番はないって思って。あれ? 仲間は?」

「王都に戻ったぞ。逃げていた教会関係者と、下っ端だから見逃された奴等が接触したそうだ」

ジナルさんの言葉に、女性が溜め息を吐く。

「はぁ。しょうがない、ここで叫んでいても意味はない。分かっている事を教えて。私は独自に動くわ」

女性の言葉にフラフさんとジナルさんが笑う。

「そう言ってくれると思ったよ。ありがとう」

「貸しよ。王都に戻ったら返して貰うからね」

女性の言葉にジナルさんが頷く。

どうやら話がまとまった様だ。

「ラットルア達とドルイドも一緒に話を聞いてくれ」

「分かった。子供達を部屋に送ってから会議室に行くよ」

ラットルアさんと子供達が部屋に戻るのを見ていると、お父さんの声が聞こえた。

「ジナル、洗濯物を干してからでいいか?」

「お父さん、それは私がやるから良いよ」

話を聞く方が、洗濯物より大事だよね。

「でも――」

「大丈夫。干すだけだから」

お父さんは少し考えると、洗濯物が入っているマジックバッグを渡してくれた。

「ごめんな、頼む」

「任せて。フラフさん、裏庭に洗濯物を干してもいいですか?」

「もちろんよ。自由に使ってちょうだい」

「ありがとうございます。お父さん、あとで話の内容を教えてね」

「分かった」

お父さんとフラフさん達と別れて裏庭に行く。

「よし、干そう」

マジックバッグから洗濯物が入ったカゴを出す。

1枚1枚、服の状態を確かめながら干していく。

「あっ、生地が随分と薄くなっているな」

お父さんの服と私の服。

どちらにも、そろそろ限界の服が数枚ある。

「去年かった夏服はあるけど……」

成長しているから着れるかな?

暑くなる前に、確かめないと駄目だね。

「終わった~」

空になったカゴを見て、笑顔になる。

2人分、しかも旅の間に溜まった服。

干すだけとはいえ、少し大変だったな。

裏庭から部屋に戻る。

「皆、バッグから出て良いよ」

部屋に入り、マジックアイテムのボタンを押すとソラ達をバッグから出す。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

元気に飛び回るソラとフレム。

「ぺふっ」

ソルは窓辺に行き、外を見始めた。

「あれ?」

この光景は前にも見た事がある。

あっ、気になる魔力がある時にする行動だ。

「ソル。外に気になる魔力があるの?」

「ぺふっ」

ソルの気になる魔力は何処にあるんだろう?

「ソル」

「ぺふっ?」

「その魔力は近くにあるの? 遠くにあるの?」

「……ぺふっ?」

あれ?

ソルが困惑している。

「あっ、連続で質問したら答えられないよね? えっと、ここから魔力までは近い?」

「ぺふっ」

近いのか。

ソルの気になる魔力を探してあげたいけど、カシメ町の状況が悪いからな。

あとでお父さんに相談しよう。

コンコンコン。

「アイビー、俺だ。入るぞ」

お父さんだ。

話し合いは終わったのかな?

「おかえり。お疲れ様」

「ただいま」

疲れた表情をしているな。

「お茶を淹れるね。座ってて」

「ありがとう」

椅子に座ったお父さんを見る。

かなり疲れているみたい。

話し合いで何かあったのかな?

「話し合いはどうだった?」

「フラフさんとジナルは調査を継続。ジナルの仲間のアルーさんは、組織に潜入するのが上手いらしい」

彼女はアルーさんというのか。

「彼女はジナル達が調べて要注意と判断した組織に入り込むことが決まった」

危険な仕事だな。

「あと、町の住人が亡くなったという噂だけど本当の事だった。見つかったのは3人。最初の頃に行方不明になった者達だそうだ」

「そうなんだ」

3人で終わればいいけど。

「アイビー」

「うん。どうしたの?」

お父さんを見ると真剣な表情をしている。

「宿に戻る時に『知り合いに似ている者がいた』と言っただろう?」

「うん」

お父さんが困惑した人物の事だよね?

「師匠の孫だ」

「えっ? お父さんの師匠さんの孫?」

「そうだ。まさか、カシメ町で会うとは思わなかった」

孫がいるんだ。

どんな性格なんだろう?

師匠さんに似ているのかな?

「師匠には子供が3人。どの子も師匠に似ず真面目だ。ただ、孫の1人が師匠にそっくりだ」

もしかして?

「そのそっくりな孫がいた」

やっぱり。

「彼は……よく人と揉める。師匠並みに人をおちょくるのが好きだから」

「ははっ」

そこが似てしまったのか。

「冒険者なの?」

「あぁ。師匠やその仲間たちが認める実力を持っている」

それは強いって事だね。

「この町で何をしているのか気になる。彼は、裏の仕事が専門なんだ」

「裏の仕事?」

「あぁ。被害にあっている者を、救出するのが仕事だ。冒険者ギルドで扱っている裏の仕事だよ」

冒険者ギルドが扱う裏の仕事について初めて聞いたな。

「加害者を捕まえて、被害者を救出が出来ればいい。でも、出来ない場合がある。加害者が貴族だった場合や、邪魔が入って証拠が紛失したり、証人がいなくなったり」

妨害にあって救出が出来ない場合か。

「そういう時は、加害者を捕まえるより被害者の救出が優先されるんだ」

「そうなんだ」

「あぁ。堂々と助け出せないなら、こっそり助け出せってな」

その考え方は好きだな。

「師匠の孫の名前はバンガだ」

「うん」

バンガさんというのか。

「師匠やその仲間に様々な知識を叩き込まれているから、色々と上手いんだ。それに……」

「どうしたの?」

ちょっと迷ったお父さんは、私を見る。

「バンガは、人の心を操るのが上手い。それを使って加害者を蹴落とすのも」

「蹴落とす?」

「あぁ、救出のあとで加害者に起こる……まぁ、色々な不幸? 例えば組織の金が盗まれたり。上手くいっていた関係が急にこじれたり」

「それをバンガさんが起しているの?」

かなり難しそうだけど。

「バンガは、犯罪者やその協力者の心理状態を見て、言葉巧みに相手を信じられないと思わせたり、すぐに逃げた方がいいと思わせたりするのが上手いんだ」

「凄いね」

「あぁ、師匠より言葉を巧みに使うな。普段はそれを隠しているから、知らない者も多いけど」

気になるな。

会えるといいな。