軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

皆でむしり候へ

「あ、シーナ団長こっち来たよ!」

「本当だ。舟で……うわ、すごい積んでるね……」

「……マジかよあれ」

離れ小島の方から、シーナとナスターシャが舟でやってくるのが見えた。

のだが、そいつらの舟の上に明らかにこんもりと積み上がったものが見える……。

「すっご、あれ全部リードダックじゃない?」

「さ、さすがシーナさんですね……!」

「嘘だろあれ全部俺等で毟らなきゃいけねぇのか……乱獲にならねえの? あれ」

「あはは、今回の野営は食べ物に困ることはなさそうだね」

レオお前笑ってるけどな、あの量毟ってたら鼻の穴の中が羽毛だらけになっちまうぞ。

グツグツに煮えたタールに突っ込んで毟るやり方でも試すか……? いやそういうやり方があるって聞いただけで具体的にどんなものかは知らないからやめとこう……。

「いやぁ、サウナは素晴らしかったですね!」

「暑ぅい! けど気持ちよかったっス!」

……サウナテントからホクホクの蒸気を上げている水着姿のちびっ子連中もやってきた。モモとライナも加えて、全員で羽根を毟るしかないだろう。人海戦術だ。

俺達の拠点近くに接岸したシーナとナスターシャは、得意気という程もない淡々としたいつもの調子である。

「これは全てリードダックよ。フレッチダックは見つからなかったわね」

「シーナが十一羽仕留めた。……ふむ、ウルリカ達も仕留めたか。ならば、一緒に解体作業をやってもらうとしよう」

「大猟っス! やっぱシーナ先輩はすごいっスね……!」

「どんどん毟っていこ! 時間なくなっちゃうよ!」

やっと一匹分終わるかと思ったら大量のおかわりがやってきた。けどしょうがねえ、羽根毟り頑張るか……。

「確かに私達もフレッチダックは見なかったっスね。リードダックだけだったっス」

「前はフレッチダックもいたよねー?」

「まだ時期じゃないのかもしれないわね……」

弓使いの狩人トークを聞きながら、ただひたすらに羽根毟り。

ふわふわと舞う綿毛にくしゃみが出そうになるのを堪えながらも、手際重視で作業を進める。

そのまま周りの作業を見てみると、皆それぞれやり方に性格が出ていた。ゴリリアーナさんはゆっくりとした手つきながらも力強く一度にたくさん毟っているし、レオは少しずつ何度も毟っていくやり方だ。

ライナやウルリカは元々こういう作業が得意なのか俺よりもずっと手際が良い。シーナとナスターシャは……そこまで早くはない。モタついているわけではないが、ライナたちほど慣れてはいないんだろうな。

「この革を使って羽根を挟むようにすれば上手く一度にたくさん抜けそうな気がしま……うーん……」

モモは道具を使ってどうにかこうにか効率を上げようと工夫している。今はまだ上手くいっていないようだが、ああやって色々と工夫をしてやるタイプが後々一番の成果を挙げるんだよな……。

俺? 俺は素人なりに普通に毟ってるよ。効率も重視してるけどな、どっちかといえばあまり羽根が舞わないように気をつけてる感じだ……ぶぇっくしょい。

「あっ、今竿がピクッて動いたね」

作業を進めていると、ウルリカが釣り竿の異変を感じ取った。

餌釣りしている竿に何かが掛かったようだ。うおおお、忙しいな。

「……たくさん獲ってきた私が言うのもなんだけど、さすがに全員で一つの作業だけをやるのは良くないわね」

「つ、釣り竿は私がなんとかします……!」

「ゴリリアーナ先輩頑張って!」

「昼食の支度もしなければならん。……これだけのリードダックを全てすぐに食べきるわけでもあるまい。処理が終わったものから調理していくべきではないか」

「それもそうだな。じゃあちょっくら俺が飯係になるわ」

どうせ鳥撃ちもしばらくは猟場が荒れてるからお休みだろう。羽根毟りは弓使い達に任せて、俺は食事の支度をすることにした。

「魚も鳥もある……よし、じゃあ鍋にでもするかな」

リードダックの肉を使ったローストも並行して作るが、鍋をメインに進めていこうと思う。淡水魚とはいえ、アベイトだとかラストフィッシュだとかが手に入ったからな。こいつらと昆布でちょっとした出汁を取って、鴨鍋にしてやるのよ……。

「モングレルさん、僕も準備手伝うよ」

「おお、レオ。助かるぜ」

じゃあ始めますかねってところでレオが増援に来てくれた。

野外の調理はスペースも火の準備もわりと面倒だからありがたい。

「じゃあこっちの野菜を親指くらいの長さで切ってもらえるか?」

「了解、任せて。何を作るのかわからないけど……」

「ま、シンプルな料理だよ。けど味はまぁそこそこ良いから心配すんな。羽根毟りから解放された分、こっちの作業で役に立ってやるぜ」

「ふふ、味の心配はしてないよ。羽根毟りはウルリカ達の方が早いから、頑張らないとね」

各々得意な作業だとか不得意な作業があるわけで。それを上手いこと分担してやっていくのが集団行動の秘訣だ。……とはいえ、得意だからといって単純作業ばかりその人に押し付けるのは良くないけどな。時には効率が落ちようとも一緒に単調な作業を買って出るのも必要になる。その点で言うと料理は楽しい作業に入るだろう。……ライナの場合、料理はそれほど好きではないかもしれないが。

「こっちの魚は身をスプーンでほじって香草と一緒に刻んで団子にする。骨類は海藻と一緒に水から煮出してスープを作っていく」

「へー。魚も挽き肉みたいにするんだね」

「魚らしい食感は失われるが、こっちの方が食う側にとっちゃ楽だしな」

淡水魚のつみれ団子は正直……美味いかどうかわからんとこはあるけど、まあ多分美味いはずだ。スープの出汁さえなんとかなってりゃ大丈夫のはずだ。一個作ってみて駄目そうなら塩足して混ぜ直せばいいや。多分塩味が解決してくれる……。

「あ、向こうに舟が見えるっス」

「……本当ね。あれは……私達のような狩りではないけれど、同じ湖に遊びに来た人かしらね」

「人を襲う格好にしては、浮かれすぎているな」

羽根毟りチームが盛り上がっているから何事かと湖の方に目を向けると、かなり離れた水面に小舟が見えた。

そこには幅の広い日除け帽を被った二人が乗っており、舟を漕いでいるようだった。遠くて顔の詳しい表情までは見えないが、背格好や姿勢からして老人っぽい気がする。おじいさんとおばあさん的な。

「人が少なくて静かな場所だと思っていましたが、ちゃんと他の人もいるのですね。少し安心しました!」

「いっそ我々以外に誰も居ない方が安心ではないか」

「難しいとこっスね」

「変なことに巻き込まれなければ私は誰でもいいかなー」

「……あ、あまり人がいるようだと、水着でサウナに入るのも、少し恥ずかしいかもしれないですね……」

「あら、水着くらい良いじゃないの。私も後で入らせてもらうわよ」

「では私も入ろう」

サウナ好きが多くて俺は嬉しいよ。……燃料も追加で拾ってこないと足りなくなりそうだな。後でやっておこう。

「よし、ひとまずスープとローストダックができたぜ」

「こ、こっちもなんとか羽根毟りできたっス! 手が痛いっス!」

「なんとか羽根毟りの上手なやり方を覚えましたけど……結局ライナのやり方に落ち着きました……!」

「ふふ、誰も知らない近道なんてそうすぐ側には転がっていないものよね」

「新たな方法を模索する姿勢は魔法使いにとって得難い気質だ。サリーは優秀な娘を育てたな」

「そ……そうですか!?」

「何故怒る……?」

「お、怒ってはないです、はい。……嬉しいです」

ちょっとした料理が完成し、同じタイミングでリードダックたちの下処理も完了した。これだけ人数がいると面倒な作業も早く終わるからいいよな。

そして下処理の終わったリードダックはどうなるかというと、はい。こいつらも調理していくわけですね。料理が終わらねえぜ……。

「さすがにこれ全部食うってのは大変すぎるから、いくつか向こうの爺さんたちにお裾分けしておくか。お礼に何かくれそうだしな」

「モングレル先輩が行くなら私も一緒に行くっス!」

「じゃあライナとモングレルで行ってきてもらえるかしら。私は少し休憩させてもらうわね」

「……うむ。このスープはなかなか美味い」

「あ、私も食べたーい。何かのお団子と……鴨肉のスープかな? いい匂いするー」

「このお団子は魚の肉で作ってるんだよ」

「ま、前にアーケルシアで似たものを食べましたね……こちらも美味しいです……」

よし、料理に食いついている間に俺とライナで肉の配達に行ってくるか。

「一緒にウーバーしてくっか、ライナ」

「なんなんスかねそれ……とりあえず舟に乗り込みましょ、先輩」

「弓も持っていくんだな」

「ひょっとしたら狙いやすいとこにいるかもしれないんで……」

獲りすぎてお裾分けしにいこうって時にまた新たな獲物をこさえに行くのかい? まぁ狩人ってのはそんなもんなのかもしれないが……。

ライナと一緒に舟に乗り込み、管理棟に向かって漕いでゆく。

さっき遠目に見えた老人らしき人らは湖の奥側へ向かっていったらしく、ざっと遠くを見渡してもどこにいるかはわからなかった。わりと視界の通りの悪い湖なんだよな、ここ。

「うーん……やっぱりもう近くには鳥がいないっスね……」

「あんだけ仕留めまくってりゃ、いくら脳天気な鳥でも危機感は覚えるだろ。……今回“ 貫通射(ペネトレイト) ”は使ってみたか?」

「いやいや、水鳥相手には使わないっス。威力が高くて、水鳥くらいの獲物が相手だとピッタリ頭に当てるくらいじゃないと歩留まり悪くなっちゃうんス」

「ああ、抉れるからな……大物専用技ってわけだ」

ライナが新しく覚えた二つ目のスキルは念願の攻撃スキルだったが、これはこれで使い所を選ぶらしい。

射程が長いのは良いのだが、どうしても運用方法としては狙撃に近くなってしまう。精密に狙えはするが、そうして狙いたいタイプの小柄な獲物相手だと扱い辛いようだ。悩ましいところだな。

「それこそ、マーマンが出てくれば今回でも出番はあるんスけどねぇ……」

「おいおい、不吉なこと言うなよ」

「不吉っスかね?」

「お約束だろ。そういう事言うと出てくるもんなんだよ。次の瞬間に水中からとかな」

「コワ」

ライナの立てたフラグに若干警戒心を刺激されたが、そんなベタな展開がちょうどよく起こるなんてこともなく、俺達は無事に管理棟前まで辿り着いたのだった。

マジでマーマンいねぇな……。