軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

北門より護衛開始

「ドライデン方面は治安が悪化しているらしいからな……それ相応の装備は整えたぜ」

「っス」

「まずはこの釣り竿だな。こいつがないと俺は湖を目の前にしてボート漕いでるだけのおじさんになっちまうからな。そしてこっちの各種天幕系アイテム。これはテント他サウナテントもあって、前回よりもたくさん用意した。ポールは現地調達すりゃいいから、まぁロールした布を持っていくだけなんだけどな。そして、各種調理器具。こいつらが馬鹿にならん重さだ。けどこれがないと旅に出る意味が無くなっちまう」

「っスっス」

「よし、以上!」

「やっぱり野営用の道具ばっかりじゃないスか!」

「あ、バスタードソードはちゃんとあるぞ」

「少しくらい投げナイフとかダートとか用意しないんスかね……」

「スペースがない……」

出発当日。北門側の馬車駅前に集合した俺は、ライナたちと一緒に最後の荷物確認を行っていた。とはいえこんな場所で荷物を広げるのもばっちいので、軽くだ。軽く。

「私は矢を多めにと、着替えと、水着と、あとえーっと……お酒も持ってきたっス!」

「でかしたライナ! おお、それウイスキーじゃねえか!」

「自分用っス!」

「なん……」

「……まあちょっとくらいなら飲んでも良いっスよ?」

「へへへ、いいんですかぁライナさん? ありがとうございやす……」

「笑い方キショいっス」

「二人ともほんとお酒好きだよねー……」

ウルリカは呆れ気味だが、まぁ今回のザヒア湖は旅行がメインだ。任務もついでに受けはするが、息抜きの側面が強い旅である。遊び道具を満載していくのは悪いことじゃないぜ。

「私はねー、拡散系の矢と薬瓶と、あと調味料とか。効き目は微妙だけどちょっとしたポーションも用意したから、怪我の対策も大丈夫だよ!」

「ポーション作れるのかよ、すげぇな」

「ウルリカ先輩の薬、切り傷とかがすぐ治るんスよ。原材料がちょっと高いらしいっスけど……」

「まあ、そこは薬だからねー……」

「うん、けど僕は普段から訓練でちょっとした怪我をしたりするから、助かってるよ。軽い怪我じゃヒーラーにかかるわけにもいかないしね」

「ザヒア湖周辺で薬の材料を見つけたら採集してみる予定なんだー」

ウルリカの持ってきた道具は純粋な後方支援って感じだな。

俺はそこまで詳しくないけど、調合も随分と板についてきたんじゃないのかね。

「僕は皆よりもそれなりに重いものを持ち運べるから、寝具とか調理器具とかをまとめて背負ってるよ。あとは……着替えとか、替えの靴とか……あ、道中の気晴らし用に小さな楽器も持ってきたよ」

「ほう、楽器か。リュートみてえなやつ?」

「ううん、カリンバっていうんだ。サングレールの方の楽器らしくてね、市場で見てみたら綺麗な音色だったから、買ってみたんだよ。ほら、こんなに小さいんだ」

「おー」

レオが取り出したのは、楽器というにはかなりコンパクトなものだった。

木の板に細長い金属の板を何本も並べて貼り付けてあるもので、板の長さは短いものや長いものがあり、その違いが音程となっているようだ。

手で弾いて鳴らすオルゴールと言えば原理はわかりやすいだろうか。

「レオ先輩のこれめっちゃ良い音っスよ。音楽も雰囲気あるんスよね」

「ふふ、ありがと。最近は荒野の旅人とかも練習してるんだ」

「いいよねーこの楽器。向こうのギルドマンは野営の時にもこういうので演奏してるんだっけ?」

「向こうの人はプレイヤーっていうんだよ。結構、歌を歌ったり楽器を奏でたりするらしいね。僕も市場の人の受け売りだから、実際は知らないけど……」

サングレールの人間はとにかく音楽が好きだ。歌も演奏も踊りも、ハルペリアとは比べようもないほど発展しているというか、生活に根付いている。

こういった荷物にサッと入れておける楽器類も、彼らにとっては重要なものなのかもしれない。実際、ちょっとは規律に厳しそうなサングレールの軍人でも野営中にポロンポロンと奏でていたりする。まあ、それはそれで音が目立つからどうなんだって感じだけどな……。

「みんな集まっているみたいね。馬車は今来たところだから、出発するわよ」

「皆さんおはようございます! 今回は“アルテミス”の方々から色々学ばせていただきますね! よろしくお願いします!」

何か手続きをしていたらしいシーナやモモも集まって、いろいろ出発の準備は整った。

しかしモモもこうしてみるとなかなか礼儀のちゃんとした奴である。育てた親の顔が見てみてえもんだ。

「護衛対象の馬車はドライデン行きの隊商だそうだ。私とモモは水の供給役、他のメンバーは護衛となるだろう」

「お任せください! ……け、けどナスターシャさん、私そんなに多くの水は出せないので、あの……」

「当然、できる範囲で構わない。防衛で魔力を使う必要もないだろう」

「は、はい!」

隊商かー、タラタラとした移動になりそうだが、まぁ良いか。馬車の数も多ければ俺達の荷物も持ってくれるだろう。そういう意味じゃ結構楽だしな。

「モングレル先輩、一緒に話しながら歩かないっスか」

「そうすっかぁ。道中は結構長くなりそうだな」

「っスねぇ」

そんな感じで、俺らの旅行兼護衛任務が始まった。

馬車の移動に合わせて護衛が散らばり、ほどほどに警戒しながら進んでゆく。

とはいえレゴール近辺で強盗をやらかす馬鹿はいないので、本格的に警戒するのはもっと進んでからになるだろう。それまでは気を抜きつつだ。

「私マーマンは見たことないんスよねぇ。よくゴブリンみたいとは聞くんスけど」

「おう、実際にマーマンはゴブリンみたいな奴だよ。もうちょい賢そうな顔してるけどな。いや、逆に何も考えてなさそうな顔なんだけどな、アホ面のゴブリンよりは賢そうに見える」

「うーん、ゴブリンより賢い……かぁー……」

「まぁ実際に見ればわかるさ。ギルドに置いてある図鑑の絵はそこまで似てないから、直接見たほうが良い」

「……できれば今回の旅では見たくないんスけど」

「それはまあそうな」

マーマンはできれば遭遇したくない魔物だ。しかし、遭遇したときのための対策を考えておくのは重要である。魔物との戦いは相手を知るところから既に始まっているからな。

「マーマンは実際にゴブリンよりも賢くてな。連中よりも比較的大人数で動けるし、武器を持っていることも多い」

「槍を持ってる絵はよく見るんスけど、あれ本当に持ってるんスか」

「いやー、そうでもないな。持ってる奴もいるにはいるが、たまーにだな。けどゴブリンよりは気持ち装備品っていうか、得物を持ってることが多いかもしれん。何より、結構物とかを投げてきたりする」

「はえー」

人間ほどではないが、水かきを上手いこと利用した投擲能力も持っているのがマーマンのめんどくせぇところだ。投擲精度や力は微妙なので石ころなんかは数メートルも飛ばせないくらいなのだが、それでもちょっとした高所から集団で投げつけてくると厄介である。

また、近接用の武器も海の生き物から拝借した細長い巻き貝の槍だとか、エイの棘の鞭だとか、そういったものを利用してくることが多い。その辺りも、ゴブリンより賢いと言われる所以だろう。とはいえ、雑魚は雑魚なんだが。

「アーケルシアの時に出会わなくて良かったっスね」

「だな。向こうにも当然いるんだろうが、あの島では全然見なかったなぁ。……最悪の場合、俺がマーマンを釣ってた可能性もあったわけだ」

「ぷぷっ……マーマン釣り上げたら、竿が壊されちゃいそうっスね」

「最悪すぎるな……だが今回もありえなくはないからなぁ」

「ザヒア湖にいないと良いっスね、マーマン」

まぁそうそうかかるもんでもないと思いたいが……なんとなくこいつらと旅行してるとその出先で変わったものを釣ってる記憶が強いというか……。

いやお約束ってほどのお約束にもなってはいないと信じたいんだが……今回もかかったりしないよな? やめてくれよ、糸も竿もリールも高いんだから……。