軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

竹串作りにトライ

へぇい。

突然だが、皆はこの玩具……“竹とんぼ”をご存知だろうか。

この竹とんぼ、上部に搭載されたプロペラが回転により下方向に押しつける負の揚力、ダウンフォースならぬアッパーフォースを発生させ、空に放つことでビューンと飛ばせるという玩具なのだが……。

「ソイヤッ! ……うわ墜落した」

「なにやっとるんだ、良い歳して」

この世界に存在する無駄に曲がりくねった竹で作るとなると、歪んだ薄型大径のプロペラの影響でバランスを崩しやすく、また中央の軸自体も曲がっているせいで重心がブレブレになり持久力にも乏しい。

似たような玩具はこの世界にもあるんだが、それには肝心の竹が使われていないという……つまり、“竹とんぼ”などというホビーは存在しないのであった。悲しいね。

「飛び風車か。竹で作るようなもんでもないだろう」

「ちっくしょー……やっぱ繊維の曲がった木じゃ駄目だな、飛ばねえや。トーマスさん、何の木だったらこの飛び風車、上手く作れるかな」

「うるさい奴だな。手を動かせ。ガキの玩具作りに来たわけじゃないだろ」

「おっとそうだった」

今日、俺は製材所に足を運んでいる。

製材所は主にバロアの森から切り出された木材を切ったり削ったりして、建材や家具などに使えるように加工する施設だ。

秋冬は薪の需要も跳ね上がるので稼働率が最高になるが、今年は春夏もずっと忙しそうにしていたな。レゴールの発展に伴い嬉しい悲鳴を上げている場所の一つだが、こう長期間繁忙期が続くと嬉しい悲鳴も普通の悲鳴に変わっていそうだ。

そんなドチャクソ忙しい製材所に来た訳は、竹串だ。竹串を調達しに来た。

正直考えが回らなくて痛恨の極みなんだが、どうやら祭りの影響で市場から竹串がごっそりと消えているらしい。みんな屋台を出すもんだから、それに伴って使い捨ての串を買い求める。すると串が消える。マジで消える。どこを探しても置いてない。置いてあっても消費者庁がブチ切れそうな値段で売られている。竹串くらい祭りの直前に買えばいいだろと考えてた俺がバカだった。この世界にそんな優秀な大量生産設備はないのだ。

だから、竹串を自分で用意することにしたわけ。

製材所でちょっとした重い荷物運びを手伝う代わりに、端材の竹を使わせてもらいコツコツと串を量産している。

「くっそー……もっと前に串を買い占めておきゃよかったぜ……」

「はは。目端の利く商人はやってただろうな。屋台で使う串を売る商売だ。案外、そっちの方が儲かるかもしれん」

「デカい採掘場の前でツルハシを売るような話だな……」

「おお、それは美味そうな商売だな。ククク」

製材所で働いているトーマスさんは、今は休憩中だ。

火気厳禁でもおかしくない製材所だが、気にせずコーンパイプをぷかぷかとふかしている。俺が労働してる姿を眺めて悠々とふかす煙草はうめぇかい……?

「しっかしなぁ……この竹ももう少しまっすぐに生えてきてくれなかったのかね……こう束にしたって、随分とまとまりが悪いっていうか……」

「自然の物に文句言っても仕方ないだろ。そういう木材だ。まっすぐだらけの竹なんざ、この製材所でもそうそうお目にかかれんよ」

「高級木材ってわけか。……全ての竹がまっすぐ生えて来て、成長も早かったら言うことなしなんだけどな」

「んな都合のいい木があるかよ」

フフフとトーマスさんは笑っているが、俺の前世ではあったんだよそういう木材が。まぁ成長が早すぎるのも一長一短だったけどな。

俺から言わせりゃバロアの木だって随分なチート植物だぜ。

「モングレル、お前はこの竹に不満があるかもしれんが、そいつほど串を作るのに向いた木材はねぇぞ。多少の曲がりは仕方ないが、そうやって鉈を使ってちょいと叩いてやれば簡単に割れるからな」

「そりゃわかってるけどさ……」

竹から竹串を作る作業。これは結構簡単だ。やり方自体は多分、前世の竹と変わらない。

ほどよい長さ、つまり串の長さにカットした竹筒を用意したら、そいつを割りまくって竹串の細さにしていくだけ。上からコンコンと鉈で叩いてやれば、あとは簡単にパカンと割れてくれる。まぁ細いのを作ろうとすると偶に折れたりもするけどな。大体は素直にぱかっと、比較的真っ直ぐな串が出来上がる。こうやって簡単に一定の長さの棒を作れるって点においては、この世界の竹も優秀だな。

もちろん細くしただけの竹の棒はそのままでは使えない。そのままだと単なる四角い竹ひごだ。

その後で細く切り出した竹の先端を尖らせ、鋭いカドをヤスリで削って滑らかにするという作業がある。ヤスリがけはなかなか面倒だ。しかしこの工程をサボると串で物を食おうとした時に怪我をしやすくなってしまう。割った後の竹の角ってのは馬鹿にできないくらい鋭いからな。面倒でもやらなきゃいけない。

何が言いたいかって言うと、時間が掛かるのだ。

「トーマスさん、何かいい道具ねえかな……」

「ん?」

「いやーこの鉈で割る作業とかもさ、もうちっと効率的にできないかって思ってさ。製材所にそういう道具とかってない……?」

「……どうだかな。俺はこういう小物の加工を担当してるわけでもないから詳しくないが……ふん、まあ良いだろ。ちと仲間に聞いてくる」

トーマスさんが同僚のいるらしい作業小屋に向かい、しばらくして戻ってきた。どうやら何かを持ってきたらしい。

「聞いてみるもんだな。竹筒を割るのに使う道具があったぞ」

「マジかよ! ……それが?」

「結構重いぞ。持ちにくいから気をつけろ」

トーマスさんが持ってきたのは、手のひらには少し余るサイズの……小さめのお盆くらいはありそうな鉄製の道具だった。

お盆の上にはこう、アレ……レモンを絞る時に使うあのギザギザしたやつの攻撃力を百倍にしたような、金属製の山型刃物が据え付けられている。この上にレモンを押し付けたら絞れる前にザックリと薄くスライスされてしまうだろう。放射状に並ぶ刃物は鋭く、その数も多い。

……ああ、なるほど。ここに竹筒を叩きつけて、一気に割るってことね。はーなるほどなるほど。この道具は地面に置いて使うわけか。

「便利そうな道具があるじゃないかトーマスさん。ありがたく使わせてもらうぜ。……けどやけに埃被ってるなこれ」

「長いこと使われていなかったんだろう。使い方も仲間に聞いたが、そうだな。そうやって下に置いて、竹筒をセットしたら木槌で叩いてやるそうだ」

「オーケーオーケー。叩くと綺麗にパカンってわけだな。最高のアイデア商品だぜ。ケイオス卿の称号をプレゼントしてやりてえよ」

「どうだかな。使ってみな。ほれ、木槌」

「はいよ、ありがとう。どれどれ……」

竹筒をセットに、はい木槌でドーン。……あれ?

「……トーマスさん、割れないぞこれ」

「……刺さってはいるな。もう一度やってみな」

「ドーン」

追加で叩くが、割れない。刃物自体が細くて短いせいか、割れが途中で止まってしまうのだ。

あ、でも中途半端に深く割れそうなところはある……ムラがあるな。……これは……。

それから何度かコンコンと叩き、一旦外してもう一度叩いたりして……どうにか六分割くらいにはできた。が……。

「使いづらッ……!」

「フッ、埃被ってた理由はこれか。まあ、一度でそう簡単に割れてくれるほど甘くはねえか」

「なんだよぉこのくらいなら鉈でやった方が早いぜ……」

「まぁしかし使えないこともないだろ。角度を変えて何度か叩きつければ、全体のハナ入れにはなってくれるしな」

「確かに……」

トーマスさんの助言もあり、何度か使っていくことに。確かにイメージしていたような爽快さはないが、認識を変えれば結構便利な補助道具としては活躍してくれた。トーマスさんのアドバイスはためになるぜ……。

必要な竹串は……かなり多い。欲を言えば千本は欲しいが、そんなに多くは作れないだろう。

いやそもそも使い捨てとはいえそんなに必要ないか。屋台の近くに串入れを用意してやって、ある程度溜まってきたら串を回収し、洗って再利用すれば良い。そういう屋台も多いからな。俺のところもそうしよう。

……となると……やっぱり裏方の人数も重要だなぁ……ワンマンじゃ無理なのは当然だが、大量に捌こうと思ったら二、三人でもてんてこ舞いだぞ。

揚げ係、串打ち係、会計係、洗い物係……俺が既にツバつけてるメンバー全てに専門を持たせても役割がバラける。そして多分というか絶対だが、串打ち係は一人じゃ間に合わない気がする……。

もう少し人数増やした方が良いか? うーん……。

「だが、モングレルの屋台ってのも面白そうだな。祭りの時はうちの仲間も連れて食いに行ってやるよ」

「ははは……美味いもん用意してるから、絶対に来てくれよ?」

「不味かったら承知しねえからな」

味には絶対の自信があるけど、提供時間に不安が出てきた。色々考えておこう……。

「……あっ、この竹すげぇまっすぐだ。すげー良い飛び風車作れそう」

「だから遊んでる暇はねえだろって」

「おっと、いっけね」

すまんかった。