作品タイトル不明
91.東の四天王VS最強勇者パーティ4
ギルドマスター、アクトによって再び輝きを取り戻した、極東勇者パーティ。
北壁に攻めてきた、東の四天王ジャキを、彼らは迎え撃とうとしていた。
極東の勇者は5人。
木火土光、そして水。
それぞれの得意な属性をそなえた、剣士たちだ。
木蓮(もくれん) 。 火賀美(ひがみ) 。 土門(どもん) 。 日光(ひかり) 。 水月(すいげつ) 。
「カス蝿どもめ! このぼくを邪魔するとは良い度胸だ。死ね!」
バッ……! とジャキが片手を上げる。
その瞬間、上空に4つの魔法陣が展開される。
「召喚魔法のようです、 火賀美(ひがみ) さま」
「ふん、お手並み拝見といこうじゃないの」
魔法陣が輝くと、そこから4つの、巨大な結晶体が出現する。
それは丸み帯びており、虫の卵に見えなくもない。
「目覚めよ、 四蟲王(しちゅうおう) よ!」
ジャキの命令に応じるように、巨大な蟲の卵が孵化する。
四匹の、見上げるほど巨大な蟲たちがあらわれた。
クワガタ。カマキリ。バッタ。そしてカブト。
「四天王の魔力をたっぷり吸い込んだ、蟲の王たちだ! 一匹が特級魔族に匹敵するほどの猛者だぞ! どうだぁ!」
だがこの異形なる蟲たちを前に、火賀美を始めとして、誰一人として動揺していなかった。
「な、なんだよその冷静な態度は!」
火賀美は不思議と、恐怖を抱いていなかった。
さもありなん、もっと強い 勇者(ばけもの) パーティが、そばにいたからだ。
「いくらデカくても、所詮は蟲。やるわよ、あんたたち」
「「「はい、火賀美さま!」」」
火賀美と水月は刀を抜く。
日光と木蓮は杖を。
土門は腕に手甲をはめる。
その瞳には、純粋な敵意が浮かんでいる。
「気に入らない……その憎たらしい目を、恐怖に染めてやれ! 四蟲王たちよ!」
最初に動いたののは、山と錯覚するほどの巨大なカブト。
大山金剛カブト。
文字通り、巨大な山のごとき大きさと、その巨体に見合わぬ機敏さを持つ。
勇者達に向かって、凄まじい速さで走ってくる。
猛牛なんて比ではないくらい、圧倒的なパワーを秘めた 突撃(チャージ) 。
「土門、受け止めなさい」
「心得た! ぬううん!」
土門は両手を広げ、腰を下ろす。
「まさか受け止める気かい? 無駄無駄ぁ……! 君は山を持ち上げられるとでもいうのかい?」
「そんなこと、おれには無理だ」
大山金剛カブトが、土門をひき殺そうとする。
地面が激しく揺れ、立っていられないほどの衝撃波が発生する。
地面や木々がめくり上がり、土埃で視界が不鮮明となる。
「はは! ばーか、全員まとめてぺしゃんこだ!」
「それはどうかしらね」
「なっ、なにぃいいいいいいいい!?」
ジャキは目をむいて、信じられない光景を見ていた。
非力な人間が、両手で、山のようなカブトムシを正面から受け止めているではないか。
「あ、あああ、ありえない! あの質量を受け止めるだと!?」
「ローレンス様のようにゃいかねーけどよ、おれだって……鍛えたんだ。火賀美さまを、仲間達を守る、壁となるために!」
「くっ……! お、おいカブト! 何してる! 踏み潰せそんなやつぅ!」
だがカブトは微動だにしない。
命令を無視しているわけではない。凄まじいパワーで、カブトが押さえつけられているのだ。
「土門。そんな蟲、踏み潰しなさい」
「承知!」
土門は腰を落とし、片足を天高く持ち上げる。
「【 属性武装(エンチャント・エレメント) 】!」
勢いをつけて、地面を強く踏みつける。
どごん! と大きな音を立て地面が沈む。
クレーターができあがり、衝撃で地面の土や岩が舞い上がる。
「ぬぅん!」
土門は飛び上がり、その体に、岩たちがくっついていく。
やがて彼は巨大な岩の巨人へと変貌した。
「属性武装【大地の巨人】!」
カブトを凌駕するほどの巨人の出現に、ジャキも、そしてカブト自身も驚愕していた。
巨人はそのままカブトを踏みつける。
と、同時に岩でできた巨人の体が紅く染まる。
岩の中で、大地の凄まじいエネルギーが爆発する。
それは火山の噴火を彷彿とさせるような、激しい大爆発を起こした。
あとには無傷の土門だけ。
跡形もなく、カブトは消し飛んでいた。
「属性武装……なんだ、それは……?」
「バカなあんたに教えて上げるわ」
火賀美は勝ち誇った笑みを浮かべていう。
「アタシたち極東の剣士は、自然からエネルギーを借りて戦っている。属性武装は自然と剣士とが一体化することで、より強大な力を得る奥義よ。知らないの?」
「まあそれも、アクト様に教えてもらうまで、火賀美殿も知らなかったでござるがな」
苦笑する水月に、顔を真っ赤にして火賀美が叫ぶ。
「う、うっさいわよ……!」
アクトは極東の伝承を読み解き、【属性武装】の存在を見つけ出したのだ。
「アクト殿はやはり凄い。部下のために、最適な強くなる方法を、どんな手段を用いてでも見つけてきてくれるのだから」
「ま、まあ……あの人が凄いのはわかってるけど」
ぎりっ、とジャキは悔しそうに歯がみする。
「アクト……エイジ。やはり魔王様の覇道を邪魔するのは、貴様かぁ……!」
北の四天王、イリーガルをたおした超勇者ローレンス。
彼を見いだし、人外の化け物に育てた人物こそがアクトだ。
「くそ! おいお前ら! なにぼさっとしてる! 全員でかかれぇええ!」
残る蟲の王は、クワガタ、カマキリ、バッタの三匹。
「 日光(ひかり) 、 木蓮(もくれん) 、 水月(すいげつ) 。終わらせなさい」
「「「 属性武装(エンチャント・エレメント) !」」」
3人の剣士に変化が訪れる。
日光は光の翼を得る。
木蓮は樹でできた竜へ。
そして水月は、水の鎧を身に纏う。
「【日輪の天翼】」
日光(ひかり) が命じると、彼の背中から生えていた翼が広がる。
無数の羽が空中に展開され、クワガタの周囲を取り囲む。
光の羽は鏡のような働きをし、太陽の光を反射させる。
圧縮した太陽光線は、容易くクワガタの体を貫く。
それが羽の数分、つまりは無数のレーザーとなってクワガタを蜂の巣にした。
「【樹海の竜神】」
今の木蓮は木でできた巨大な竜。
彼から根っこが生えて、地面に突き刺させる。
その瞬間、周囲に生えていた木々が生き物のようにうごめき出す。
根っこが高速で、まるで触手のように動き、カマキリの体を捕縛。
そのまま栄養を凄い勢いで吸い取り、カマキリを塵にかえた。
「【氷紋の剣聖】」
水月は水の剣士。
だが進化した彼女は、氷の力を身に付けていた。
ほかの剣士達と違って、彼女にあまり変化は見られない。
彼女は剣を抜いて、そして、鞘に収めた。
その場にいる誰もが、何が起きたのか理解できなかっただろう。
……水月の背後に、氷付けになったバッタが立っていた。
そして次の瞬間には、粉々になって砕け散った。
「水月、なにいまの?」
「なに、時を少々凍らせただけでござる」
「時を凍らせるって……はぁ。そーいえば、あんたも 化物(ローレンス) の仲間だったわね」
「化け物と書いてローレンス殿と読むのはやめるでござるよー」
極東の勇者達は、実に平然と、ジャキの秘蔵っ子達をたおした。
ぺたん……とジャキがその場にしゃがみ込む。
「何だよ……やばいのは、ローレンスだけじゃなかったのかよ……」
火賀美は哀れむように、しゃがみ込むジャキを見下ろす。
「ちょっと前なら楽勝だったでしょうね。まあその……運が悪かったわね」
ジャキの敗因はただ一つ
極東勇者が、アクト・エイジと接触してしまったこと。
ただ、それだけだった。